それゆえ、多くの人にとって勝利とは、そういう感動的なシーンだととらえられている。
しかしそれは、本物の勝利の実態とは違う。そういうふうに喜びを爆発させるのは、勝つか負けるか不確かだったときなので、「本物の勝利」とはいえないのである。それは、サイコロを振って自分の賭けた目に出たような、心許ない勝利なのだ。次はどんな目が出るか分からない。
そういう勝利を、ここでは扱わない。ここで扱うのは、本物の勝利――全てを兼ね備えた勝利だ。
では、本物の勝利というのはどういうものなのか?
――それは、もっと静かなものなのである。もっと呆気ないものだ。もっと穏やかなものなのだ。
「本物の勝利」
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