自分の好きなことを貫くということ
最近のぼくのブームは、「世間では誤って認識されていること」をえぐり出し、それに別の価値観を与え、一つのコンセプトとして確立することだ。
去年から、ワタナベコメディスクールというお笑いタレントを養成する専門学校で講師をしているのだけれど、そこで教える中で徐々に明確になってきたのは、「結局は自分の好きなことを貫き通したやつが負ける」ということだ。
これはお笑い芸人を目指す生徒たちを見ていて気づいたことで、なおかつ授業の中でも何度となくくり返し述べてきた。何度となくくり返し述べ、ほとんど全ての生徒がそれを理解してくれたのにもかかわらず、しかしなかなか実践することはできないという、少々困難なコンセプトなのだ。
「結局は自分の好きなことを貫き通したやつが勝つ」というのはよく言われることだ。そしてお笑い芸人を目指している生徒たちも、たいていはそういうもんだと信じていて、自分の好きなお笑いを貫こうとする。自分が面白いと思うネタを作ってくる。自分がやりたいお笑いをやる。
しかし、そういう生徒はことごとくウケないのだ。学校では月に一度、生徒たちによるライブを開催していて、そこでは見に来てくれたお客さんによる人気投票も行われているのだけれど、自分の好きなことを貫き通した生徒から順に、人気投票の下位から並んでいくのである。
それは一度や二度ではない。毎度そうなのだ。それで、さすがのぼくもそのことに気づき、「ははあ、自分の好きなことを貫き通したやつが結局負けていくのだな」というのを知るに至った。また、自分で理解しただけではなく、生徒たちにもくり返しそれを教え、伝えてきた。
すると生徒たちも、初めは「何をわけの分からないことを言っているのだろう」と訝しげな顔をしていたものの、やがてライブを重ねるうちに、自分自身に残酷な結果が降り続くようになると、「どうやらあれは正しいらしい」と納得せざるを得なくなってくる。
但し、それが納得できたからといって、人間、なかなか自分のやりたいことを捨てきれないのもまた道理。授業の中で、あるいはそれ以外の場所でも、くり返し自分の好きなことを貫かないよう指導しているにもかかわらず(また彼らも頭ではそれを理解しているにもかかわらず)、長年違うふうに教わってきたため身体が反応してしまうのか、あるいは自分の好きなことへの執着が強すぎるせいなのか、なかなかその状態から抜け出せないのだ。
自分の好きなことを貫くのがダメな理由
ではなぜ自分の好きなことを貫き通すと負けてしまうのか?
ぼくの分析したところでは、その理由は大きく分けて三つある。
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