近藤の漫画家人生は、皮肉なことに戦争中がピークであった。しかも彼は、戦時中だからこそ、その生来の能力を十全に発揮することもできた。彼は戦時下に向いていたのだ。困難な時代をたくましく生きることに長けていたのである。その点、他の漫画家とは大きく違った。
ただ、戦争は日本そのものを沈潜させた。そのため、当然のように近藤もそれに足を引っ張られた。戦争中は、とてもではないが国民にマンガを読む余裕がなかった。マンガを読んでいるのはよっぽどの変わり者かモノ好きだけだった。
それでも近藤はめげずに漫画を描き続けた。そしてこの時期の近藤は乗っていた。まず作品の評価が高かった。また人間としても信頼が厚かった。新漫画派集団のリーダーとして、八面六臂の活躍をした。多くの仲間を助け、難局を逞しく生き抜いた。
開戦してからしばらくは、「漫画」誌が好調だった。ただし「好調」といっても戦時下のことなのでたかが知れていた。
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