現代は、曖昧さが忌避される傾向にある。特に若い人ほど曖昧さを嫌う。例えば上司の指示が曖昧だと、蛇蝎のごとく嫌う。

しかしながら、曖昧さを受け入れることができないと、人生がきつくなる。逆に、曖昧さを受け入れることができると、生きやすくなる。その意味で、曖昧さの受容は今や能力なのだ。

「コロンブスの卵」という諺がある。「卵を立ててみろ」と言われたコロンブスが、底を潰して立てた――という故事に基づく。それを、周囲の人はズルと咎めたが、コロンブスは「底を潰すなとは言われていない」と言って、煙に巻いた。

ここから、「曖昧さの盲点を突くこと」を「コロンブスの卵」というようになった。これは、たいてい肯定的な意味で使われるのだが、現代にコロンブスのような上司がいて、曖昧さの盲点を突いて卵を立てたら、部下からは蛇蝎のごとく嫌われるだろう。それだけでコロンブスのいる会社が嫌いになり、退社してしまう人も多いので