生きるとは何か?:その13(1,713字)
そもそも芸術には不思議な力がある。それは未来を予見する力だ。未来を幻視する力である。その時代にはとうてい判明しているはずはなく、また誰も理解できないであろう真理や概念、あるいは価値観を鮮やかにえぐり出す。そういう力が芸術にはある。
例えば『オイディプス王』という戯曲は2400年前くらいに作られたが、それから2300年後の今から100年ほど前に、フロイトが「男の子は母親に、女の子は父親に、奇妙な性的幻想を抱く」という心理状況を発見した。これが『オイディプス王』の内容そのままだったので、この概念の名前を「オイディプス・コンプレックス」と名づけた。いわゆるエディプス・コンプレックスのことだ。今の言葉でマザコンのことである。
今から140年前くらいに書かれた『ハックルベリー・フィンの冒険』という小説の中にも、まだ白人が黒人を差別することが当たり前だった時代に、白人と黒人の「同質性」が描かれている。
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