死を考えるのは難しい。
死を考えるときに、ぼくが参考にしているのは「葉隠れ」である。
「葉隠れ」とは、江戸時代に佐賀の鍋島藩の武士・山本常朝が、鍋島藩に伝わる武士道を若い弟子に伝えたのを書き起こした書とされ、その中の重要な文言に「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」というものがある。
この文言はきわめて重要な概念だが、理解している人は少ない。なぜなら、第二次大戦中に神風特攻隊において「特攻隊員が死にやすくするため」に便利に使われてしまったからだ。
この言葉を聞いた特攻隊員は、「死ぬことこそが男らしいのだ」と解釈し、死んでいった。しかしそれは、この言葉の意味するところとは全くといっていいほど違う。むしろ逆といっていい。
鍋島藩の武士は、朝起きたときに必ず「死ぬ」ことをシミュレーションした。例えば、城へと向かう道を歩いていたら、隠れていた刺客に背後から襲われ、袈裟懸けに斬られてしまったために血し
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