世の中から仕事がなくなっている現在、重要なのは「仕事がなくなった後に何をするか」ということである。生活の確保はおそらくそこまで重要ではない。なぜなら、そういう「目に見える危機」は、多くの人が対処しようとし、また実際に対処できるからだ。対処の難しいのは、「目に見えない危機」の方である。

東日本大震災が起きたとき、多くの人が津波で亡くなったが、それ以上に多くの人が住む家を失って、避難施設に暮らすことを余儀なくされた。そこで驚かされたのは、たった数年で避難所での死者数が津波の死者数を超えたことである。人は、環境が激変することに弱い。ストレスを溜め込んで、すぐ死につながってしまうのだ。

仕事がなくなることで起こる混乱も、衣食住をどうするかより、心の喪失をどう埋めるかの方が重要になるだろう。そちらの方が対処が難しい上に、外からは見えにくい。だから、人々を内側から蝕んでいき、東日本大震災の後に避難所で