例えば、昔は銀行に計算係というものがいた。そろばんを片手に、朝から晩までお金の計算ばかりしていた。

そういう人は、計算以外のことをする必要がなかった。もちろん、計算のスピードや正確性の向上こそ求められ、その部分には改善の余地があったかも知れないが、しかしそれ以外のことはむしろしない方が良かった。なぜなら、その方が計算のスピードや正確性が増すからだ。それ以外のことは、他の人――経営者に任せれば良かった。計算係は、組織の「歯車」として機能することが重要だった。

そのため、昔の会社員には「経営性」は必要なかった。むしろない方が良かった。経営性があると余計なことを考えるようになり、「歯車」の仕事に支障が出るからだ。それで、昔の会社員は経営について考えないようにしてきたのだ。

そのやり方が、いまだに継続しているところもある。いまだに、会社員は経営のことを考える必要がないという考えを持っている経営者や