44年間生きてきたけれども、何が一番楽しかったかというと、友だちと悪口を言い合ったことだ。これは昔からそうで、ぼくは親しくなった友人とは、必ず悪口を言い合うようにしていた。悪口を言い合うことで、ぼくは他人と仲良くなれた。だから、悪口を好まない人とは友だちになれなかった。ぼくにとって悪口は、人とのコミュニケーションをはかるうえで欠かせないものだった。

その一方、ぼくはごく幼い頃からエンターテインメントが好きで、エンターテインメントにかかわった仕事をしながら生きていきたいと、ずっと考えてきた。だから、エンターテインメントの核である「面白いとは何か?」という問いについて、ずっとその答えを探し続けてきたのだけれど、そこで見つかったものの一つが「悪口」だった。

悪口は、とても面白いのだ。だから悪口には、すぐれたエンターテインメント性が宿っているのではないかと考えるようになった。
そこで今回は、「悪口とは何か?」ということを考えながら、そのエンターテインメント性について掘り下げてみたい。