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 ぼくらは、慌てて丸太小屋の外に出た。すると、辺りはすでに仄白い朝の光に満ちていたが、しかしまだ太陽は昇っていなかった。ちょうど夜明けの時刻なのだ。
 しかしそれより、周囲には強く生暖かい風が俟っていた。もちろん、立っていられないほど強いというわけではなかったが、しかしぼくらが着ていたクリヤビトから借りた民族衣装がバタバタとはためいて、音が鳴るくらいには強かった。
 ぼくとエミ子は、急ぎ小屋から離れると林を抜け、昨日来た高原のところまで戻った。そこまで来ると、景色が開け、東の空から顔を出したばかりの朝日も確認することができた。
 それと同時に、南の方角に明らかに不穏な空気が漂っているのが分かった。南の森の遙か向こうに、黒い雲のようなものがもくもくと立ち上がって渦を巻いているのだ。それは、朝日に照らされている森の他のところとは明らかに異なっていて、ただならぬ雰囲気を醸し出していた。