現行法では裁けないブロマガ

『仮面ライダー鎧武』を振り返る(1~2話)

2018/07/16 21:06 投稿

  • タグ:
  • 特撮レビュー
  • 仮面ライダー鎧武
  • 仮面ライダー
  • 特撮
  • 東映
  • テレビ朝日
  • ニトロプラス
  • 虚淵玄

 御存知のとおり本ブログでは映画レビューをやっていますが、中でもアニメ版ゴジラ3部作に注目し、特に設定・ストーリー面に着目しつつ2までレビューしております。
 同シリーズとおなじく虚淵玄氏が脚本を担当したのが『仮面ライダー鎧武』。今回は、本作についてざっと振り返ってみたいと思います。
 アニメの世界では有名人であるという虚淵さんですが、筆者はアニメについてはとんと情弱なものでして(それでも彼の名前くらいは事前に流れ聞いたくらいなので、相当なのでしょう)、彼が脚本を担当した作品で筆者が見たのは『鎧武』とアニゴジだけなんですよね。代表作といわれる『魔法少女まどか×マギカ』すらまだ観ておりません。
 まあ、そもそも仮面ライダーというのは幼稚園から小学校の男の子を想定した作品。事前に何かを見て作風に慣れとかないととか要求する方がおかしいジャンルですので、問題ないでしょう。

 ひとくちに『鎧武』といっても、近年の仮面ライダーは映画も年に何本も公開され、色々な関連作があります。たとえば次作『仮面ライダードライブ』と鎧武の共演映画『仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル』はなかなかの佳作でした。

 一方、関連作品がいくつもあればそのぶん異色作・珍作もあるわけです。筆者はこういうものをネタにするのが大好きでして『ネバーエンディング・ストーリー』映画3部作ではわざわざ最駄作の3を紹介したほどでした。そして今回のレビューでも、そのような珍作(特にシナリオ面で)のひとつに目を着けさせて頂きました。
 それでは見ていきましょう。

『鎧武』関連で随一の珍シナリオ作品――TV本編を


第一話『変身!空からオレンジ!?』

 サムライのような恰好をした仮面ライダーが怪人たちを引き連れて合戦するイメージシーン→主題歌→主人公が迷子の男児を助ける場面と続き、いよいよ本作の世界観が説明されます。
 
 説明してくれるのは、ぐっさんこと山口智光氏が演じる「DJサガラ」という人物。ルー語のDJでネットアイドルらしいです。
 舞台は巨大企業ユグドラシルとやらの怪しいタワーがそびえる町、沢芽市です。ここでは「インベスゲーム」と呼ばれるものが流行っているとのこと。果物型のアイテム「ロックシード」でどこからか怪人を召喚でき、その怪人を戦わせるというのがインベスゲームです。特に「ビートライダーズ」というストリートダンサーが、ダンスの場所で揉めた時には、このインベスゲームで勝った方が場所を取るというルールです。で、それをネットで実況しているのがサガラというわけです。

 いきなりネタバレしますが、このDJサガラが黒幕です。
 ざっくり説明しますとこのサガラという男は、ヘルヘイムという宇宙植物の精のようなもので、人類に進化をもたらす「禁断の果実」なるアイテムを地球人の誰かに渡そうとしているのです。そして、その「種族の神話」にならって果実は渡されるべきであり、その神話とは旧約聖書の創世記にあるエデンの知恵の実のことらしいです。
 で、その渡す相手を決めるため、この後始まる「仮面ライダー同士の戦い」を画策しており、ユグドラシル(こちら側の事情は後で紹介します)と結託してインベスゲームを流行らせたのもそのため……こういった真相がのちのち彼自身によって明かされます。
 
 かつて『仮面ライダーBLACK』第9話「ビシュムの紅い唇」でも、場所取りで揉めてケンカをしているストリートダンサーが出て来ました。そしてゴルゴムのハチ怪人がそこに漬け込んでアイテムに偽装した卵をばらまき、ライダーがハチ怪人をやっつけた後、雨降って地固まる的に和解する――そんな話でしたが、それをグダグダを挟みながら1年かけてやっているような物語です。

 そして申し上げにくいのですが、DJサガラが後に明かしていく「物語の真相」は、作中で実際に起こったこととこれでもかというほど辻褄が合いません。そもそも創世記の知恵の実に「バトルの優勝者がもらう」なんて要素はどこにもありませんし、サガラ本人の目的に照らしても本編をどうひっくり返しても強い人を選ぶ必要なんてなく、勝手に適当な相手にくれれば済むことなのです。
 この番組では他にサガラにしてもユグドラシル関係者にしても、暗躍者ポジションの人がネタばらしをするとき「これぞ衝撃の真実!」という感じでドヤ顔で真相を披露するのですが、その「真相」はほとんど常に本編との整合性がありません
 そこを楽しむことこそが『鎧武』を笑って観るコツなのです。

 さて、ダンスをしている青い服の若者たち――こいつらが主人公の友達なのですが――に、赤い服の若者たちがインベスゲームを挑んできます……って、ダンスの最中に?
 どうも場所取りで揉めた時というより、今現在使用中でも割り込んでいいらしいです。だったら勝ち負けに関係なく邪魔できるんじゃないでしょうか。赤のひとりが、青の女の子の持つロックシードをパチンコで狙うという(ルールはふわっとしてますが多分)卑怯な行為で、赤の勝ちとなりました。
 さて青チーム(チーム鎧武といいます)で名前を覚えるべきは

 ・リーダーの裕也という青年。すぐ死ぬ。
 ・元メンバーでインベスゲームの助っ人にだけくる主人公・葛葉紘汰(カズラバコウタと読みます)。仮面ライダー鎧武。元がつくのは姉と二人暮らしで姉にばかり苦労をかけられないとバイトに集中するためとのこと。
 ・舞という女の子。
 ・ミッチという愛称の美少年。設定上頭がいい。ちょっと後に仮面ライダー龍玄になる。

 以上の4名。
 主人公が「元メンバー」なのは、姉と二人暮らしのため姉にばかり苦労を掛けておけないとバイトに集中するためだそうです。
 残りはメンバーだということだけ知っておけば……いやずっと青服を着てるからメンバーだということはその都度分かります。完全に忘れて良し。

 さて、裕也と紘汰が留守にしがちな青チーム。ヒロインが暫定バトル担当らしいのですが、赤チームに勝てず困っているようです。
 このへん、どの程度勝てないとダンスの場所が確保できないのか、ていうかどんなルールで配分してるのか、裕也や紘汰はそんなにあの怪人たちの扱いが上手いのか、そもそも人によって上手下手があるのかなど、具体的な事柄は概ねフンワリしています。が、とにかく困ってることだけは分かります。
 そこでロックシードのディーラー「シド」が、裕也リーダーを呼び出しました。彼がユウヤに渡したのは仮面ライダーのベルト。
 いいもん手に入れたぞ見せるから来いと舞と紘汰にメールするリーダー。

 2人が来ると……そこには裕也の姿はありませんでした。
 代わりに空中に変なチャックが開いており、中に入ってみると見たことのない紫色の果実が沢山なっている森。そこにはインベスたちがいて、果実を勝手にもいで食べています。
 森の中にも裕也の姿はなく、彼が写メしてきた変身ベルトがぽつんと落ちていたのみ。そこにいきなり怪人が襲ってきて、主人公はとっさにベルトを使って仮面ライダーに変身しました。

 初期装備ギミックの使い方を試行錯誤しながらも戦いをすすめる紘汰。ちなみに演じる佐野岳氏は歴代ライダー俳優でもかなり動ける人で、変身前から冴えるアクションを見せます。
 それなりに優位に戦いを進められてはいるのですが、いまいち決め手がありません。使い方を知らないので無理もありません。
 ところが、そこにアドバイザーが!
 舞とそっくりで白装束オッドアイの怪しい風体の女が、どこからともなく現れてこう告げるのです。
気をつけて あなたは運命を選ぼうとしている
この先に踏み込めば もう二度と後戻りはできない
最後まで戦い続けることになる 世界を己の色に染め上げるまで
 そして彼女がベルトからロックシードを外し、剣にはめてみせると……剣が光って必殺技が使えました。敵を倒してめでたしめでたし。第一話完。

 ……で、一体この女は何者なのか? 彼女の謎めいた台詞は一体どういう意味なのか?
 これについても、本稿ではこの段階でネタバレしてしまうことにします。舞と同じ女優さんが演じるこの女は、未来からきた舞です。このあと、主人公や他のダンサー仲間たちはそれぞれ仮面ライダーに変身し、なんやかんや仲間割れしたりサラリーマンが変身するライダーと戦ったり宇宙人と戦ったりするのですが。
 その不幸を止めるため、彼女はタイムトラベルして、紘汰たちが戦いに身を投じるのを防ぎに来たのです。

 え? 止める台詞じゃないだろって? 
 よく時間SFで、過去改変を妨害する力が働くことがあるじゃないですか。つまり、ある過去を変えようとしてタイムトラベルをするとき、本当に過去が変わってしまうとタイムトラベルしようとする動機自体が消滅してしまいます。そうすると矛盾が生じるので、何か不都合が起こって過去改変が妨害されます。こういう設定のSFは色々あります。
 が、本作では独特な解釈をしておりまして、過去で話す言葉は意味不明なポエムになる、終盤のサガラの説明によるとこれが本作の「時間の強制力」なるものです。
 のちに仮面ライダーバロン(駆紋戒斗という赤チームのリーダー)、仮面ライダー龍玄(上述ミッチ君)といった、舞が親しい登場人物たちの初変身後にも彼女は現れます。そのたび舞は本当は、このままでは君達は死んでしまう、ライダーバトルなんかするなと必死に訴えているのですが、その言葉が時間の強制力とやらによって歪められてポエムになっているらしいです。
 
 作劇には「伏線」という用語があります。
 あのときのあの描写に、あの台詞に、実はこんな意味があったなんて!と受け手が後から気付かされるような、隠された意図をもった描写・台詞のことです。
 しかし『仮面ライダー鎧武』のシナリオはそれにとどまらず、あのときのあの描写に、あの台詞に、こんなにも意味が無かったなんて!と受け手を驚かせるものになっているのです。
 これが仮面ライダー鎧武の斬新さなのです。

 しかも、上記の黒幕の語りは、戦いを防ぎにきた舞の言葉が意味不明であることしか説明できていません。
 なぜ武器の使い方を(言葉でなく動作で)しっかり教えてるのか。話の途中では舞自身やサガラのところにも来て会話しているのですがそれには何の意味があったのか。サガラに至ってはちゃんと会話が成立しているのですがどういうことなのか。そもそもなんでライダー達の変身『後』を選んでタイムトラベルしてきたのか。

 さらに言えばサガラは「彼女がタイムトラベルして危険を告げにきたから、バトルに勝ち残るのは彼ら(鎧武・バロン・龍玄ら)だと分かった」とも述べるのですが、それとこれと何の関係があるのでしょうか。舞は友達に殺し合いをして欲しくなかったから来たのです。終盤まで勝ち残ったからではありません。そもそも未来人が「お前死ぬから参戦するな」と忠告に来るなら、普通に考えればその人は負けると思うんじゃないでしょうか。
 しかもサガラが「優勝者を事前に知る」という必要そのものが本編に照らして存在しません。サガラは誰が勝つかに賭けているわけではなく、バトルを主宰し、優勝賞品を提供するスポンサーです。結果を先に知ってもつまんなくなるだけです。

第二話『必殺!パインキック!』

 二話冒頭では紘汰はライダーの能力を、パーやんやスパイダーマンのようにアルバイトに活用しようとします。それでドジを踏んで失敗するギャグシーンを挟んだあと……ようやく裕也があのまま行方不明であることに気付く紘汰と舞。
 リアルタイムでも多くの視聴者が予想していた展開なのですが、さっき倒した怪人がユウヤのなれの果てでした。あの森の果実を食べると怪人になってしまうのです。このことはもっと後で明らかになります(舞はしかし彼のところにはタイムトラベルで忠告しに来なかったようです)。
 そして舞は、裕也がこのベルトを「チームの切り札」と呼んでいたことを思い出しますが、自分で着けても反応しません。錠前ディーラー・シドに聞いてみると
(シド)ああ 戦極ドライバーか
    あれは最初に装着した人間にしか使えないよ
 とのことでした。
 ちなみにシドがユグドラシル社の手先であり、ドライバーやロックシードがその怪しい陰謀の道具であることは、視聴者的には見え見えですが、作中では一応ユグドラシル社はそれをひた隠しにしていることになっています。
 だったら作った博士の名前を付けるんじゃねえ。そして人前で呼ぶんじゃねえコンバット越前リスペクトか。
 (開発者の戦極凌馬博士)

 この鎧武という作品、「秘密」が頻出フレーズの1つとなっており、色んなキャラがそれぞれの秘密を守ることにこだわり、そのためにいかに犠牲を払っていいかの哲学を得意げに語りまくります。
 しかしながら情報漏えいに対する彼らの意識は、2010年代の作品とは思えないほどのザルです。マジで昭和の怪人たちと大差ありません。秘密作戦を説明するや否や「知られたからには生かしておけぬ!」と襲ってくるあの愛すべき着ぐるみたちと。いやむしろ襲ってくるだけ奴らがマシに思えてきます。
 これについては今後、いやというほど実例を見ることになります。秘密な状況は変わってないのに、新入社員がお菓子屋さんに平然と当社製と喋ってベルトあげたりしますからね。そしてお咎めないですからね。まじで。
(シド)裕也のヤツもバカだな
    せっかくの掘り出しもんなのに 先に他の奴に着けさせちまうなんて
 ちなみにシドやユグドラシルにとってドライバーを渡す相手は誰でも良いわけではないようで、彼なりに狙って渡してるらしいです。ですがこの後もシドは本件から何も学習せず、今回のように予想外の人物にベルトが渡るという例は繰り返されます。そしてユグドラシルの上司に怒られます
 最初に着けた奴にしか使えないなら、渡すとき着けさせて使い方教えれば済む話ですが。
 っていうか裕也は、この道具で何が起こるのか1回も試してみたことなく「すごいもの手に入れた!チームの切り札だ!」ってなって紘汰たち呼んだんですかね?

 一方そのころ、赤チーム。あ、チーム名はバロンです。
 このチームのリーダー駆紋戒斗もシドからベルトを渡され、次回で仮面ライダーバロンに変身します。とにかく武闘派アピールがしつこく、台詞に「強さ」という言葉を入れないと死ぬ人です。
・いつだって最後に頼れるのはお前自身の強さだ
・でかい口を叩くならそれに見合った強さがいる 貴様らが俺達より強いとでも?
・大口を叩いて良いのは俺達の方らしいな 失せろ負け犬
・強い奴ならいい 勝つか負けるかで話が決まる むしろ弱い奴ほど目障りだ 叩きのめしても泣き声だけは小うるさい
・弱い奴に居場所なんてない 負け犬どもがただつるんでチームを名乗るなんざお笑い草だ
 これ、この第二話だけの発言です。
 ほぼ顔見せ回ということでキャラ強調されてるのかと思いきや、本当に最終回までずっとこの調子なんです。一方で格闘技などの強さにこだわる人がやりそうな事は何もしておらず、なんでダンサーなのかは最後まで分かりません。
(余談ですが役者の小林豊氏は、このキャラクターとはかけ離れたほのぼの系の性格で、お菓子作りが得意らしいです。)
 
 ともかく紘汰と戒斗はインベスゲームを戦い、紘汰が出したインベスが勝ちました。
 ところがその最中、赤チームのパチンコ男が1話冒頭でもやったように紘汰を撃ったため、紘汰のインベスが暴れ出してしまいます。なおかつロックシードを食べて巨大化してしまいました。
 このままでは周囲に被害が出てしまう……それを見て紘汰は決意します。
そうだ こいつを使いこなせなかったのは自分だけの為に使おうとしたからだ
でも皆を守るために使うなら きっと……!
 かっこいい台詞。
 でも、バイトの雇用者はそのバイトが役に立つからお金を出すのであって、少なくとも自分「だけ」ではなく、ちゃんと人の役に立つ目的だったと思います。使いこなせなかったのはアンタの使い方がアホだっただけで……まあいいや。
 さっきの試合で賭けていたロックシードをもらい、変身した新フォーム「パインアームズ」でインベスを撃破。セカンドめでたし。


 えー……今回は序盤ということで、基本事項や『鎧武』という作品傾向の説明が多く、2話で1本というスローペースになってしまいました。次回以降はもう少し、数話まとめて投稿したいと思います。
 が、何しろツッコミどころの塊のような作品なので、いったい何部構成になるのか筆者にもまだ想像がついてません。もし同じペースにしかならなかったら、全二十数回ということになってしまいますが、なんとか1桁くらいまで収めたいなと思ってはいます。

 筆者は仮面ライダーではロボライダーが好きです。


コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事