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柊幸のショートショート

【ショートショート】犬の言葉翻訳機

2013/08/27 23:29 投稿

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  • ショートショート
あるところにひと組の夫婦がいた。

 夫婦には子供はなく、代わりに子供と同じようにかわいがる犬を飼っていた。

「新聞を取って来ておくれ」

「ワンワン」

「これをお父さんのとこまで届けてね」

「ワンワン」

 犬は非常に賢く。まるで人の言葉を理解するように、忠実に命令をこなし、夫婦もそんな犬のことを大事に可愛がっていた。

 しかし、夫婦にも残念なことがあった。

 いくら可愛がっても相手は犬。

 何を伝えたがっているのかを理解することができないのだ。

 夫婦はいつも「犬の言葉が分かればいいのに」と心から思っていた。

 

 そんなある日、夫婦がテレビを見ているとニュースでは最新のデジタルアイテムの紹介が行われていた。その中で紹介された商品の一つに二人は釘づけになった。


『こちらの商品、なんとワンちゃんの言葉を同時通訳してくれるんです!』

画面の中では実際に使用した犬が「おなかすいたワン」「お散歩生きたいワン」など、犬がほえるたび翻訳された人の言葉が機械から発せられ、アナウンサーがオーバーなリアクションで驚きを表現していた。

二人は互いに見つめあいうなずいた。この犬の言葉翻訳機こそ自分たちが待ちに待っていた機械だ。

次の日、夫は早速お店に行き、テレビで紹介されていた犬の言葉翻訳機を買ってきた。

「おい、買ってきたぞ!」

「ええ、すぐにでもあの子の声を聞きたいわ」

 二人は犬を呼び、首輪にマイクを取り付けた。犬は何をされているのか良く分かっているようで、嫌がるそぶりも見せずおとなしくマイクをつけさせた。

「よ、よし、さあ、何か話しておくれ」

 二人が見つめる中、犬は小さな咳払いをして話し出した。

『あ~あ~、僕の言うことわかりますか?』

 機械から翻訳された言葉が流れ、うんうんと、うなずきながら夫婦は抱き合って喜んだ。

 しかし、夫婦の言葉とは裏腹に、犬の発する言葉は厳しいものだった。

『前から一言言いたかった。僕はちゃんと人の言葉を覚えたのに、なんであんたたちはこんな機会使わなきゃ僕の言ってることが理解できなんだい!愛情が足りないんだよ!』

 怒りを込めた犬の説教は夜まで続いた。

終り

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