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[中田薫]【シリーズ廃墟探訪】源泉を掘り当て、維持することの難しさ~三重県伊賀市上村『名阪健康ランド』

2013/08/19 01:00 投稿

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中田薫 寄稿記事【シリーズ廃墟探訪】
三重県伊賀市上村『名阪健康ランド』
源泉を掘り当て、維持することの難しさ

 三重県亀山市と奈良県天理市を結ぶ名阪国道。中京圏と近畿圏を結ぶこの幹線道路沿いに、屋根に乗った2体の龍がランドマークとなっているスーパー銭湯の廃墟がある。営業中は2体の龍が妖しくライトアップされ、目から赤い怪光線を放ち、ドライバーの注目を引きつけていた『名阪健康ランド』の末路である。


 通常の入浴施設に様々なアミューズメント要素を付加したスーパー銭湯は昭和60年、富山県高岡市にオープンした「万葉ポカポカ温泉」が発祥とされているが、こちら名阪健康ランドも昭和62年オープンと早く、スーパー銭湯黎明期の開業組だった。


 風呂は大露天風呂のほか漢方薬湯、岩盤浴、サウナなど10種類以上を有し、レストルーム、焼肉コーナー、宴会場、ゲームコーナーなども併設。特にゲームコーナーは平成13年以降、三重県下でユニバーサルスタジオの公式キャラクターグッズがゲットできるのは「名阪健康ランドのUFOキャッチャーだけ」という独自色を持っていた。


 さらに土日祝日は韓国人演歌歌手モングンのコンサート、毎月末には大衆演劇の入替公演を行うなど、まさに顧客満足度120%のサービスぶり。幹線道路沿いという好立地、大型トラックが何台も停められる広大な駐車場も利便性がよく、往時はファミリー客はもちろん鈴鹿サーキットへ向かうドライバーやライダー、さらには長距離トラックの運ちゃんたちにこよなく愛された施設だったのである。


 だが、晩年は三重県下に競合店が10店以上も建ち、施設自体が古くなったせいか、「いつ行ってもガラガラです」などとネット掲示板に書き込まれるような経営状態が続き、水道代や燃料代、人件費が経営を圧迫するようになっていった。


 名阪健康ランドは別名「昇龍温泉」を名乗っていたが、これは敷地内で源泉を掘り当てていたことによる。しかし、この掘り当てた天然温泉が実は非常に金食い虫で、閑古鳥が鳴き始めてからは源泉を所有していること自体が経営を蝕んでいた。


 温泉掘削というのは難しく、泉温45度で毎分100リットルを超す湧出量で掘り当てれば理想的だが、現実はそう上手くいかない。泉温が低ければ加温の必要があるため重油などの燃料費がかかり、湧出量が少なければ水道水を加水しなければならないからだ。しかも〝かけ流し〟というわけにはいかないため、塩素を入れて消毒し、お湯を循環させる必要もある。

 

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