久田将義責任編集 ニコ生タックルズマガジン

【3.11特別記事】マスコミと原発アウトロー

2013/03/06 05:39 投稿

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「久田将義責任編集 ニコ生ナックルズマガジン」
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「マスコミと原発アウトロー」

 もう、二年経とうとしているのか。というのが大多数の皆さんの感想であろう。「まだ二年」「もう二年」。それぞれの想いがあると思う。僕も福島第一原発事故の取材をして、約二年経つという事になる。正直言って、深い専門的な事は新聞記者も正確には把握できないでいる。何しろ、世界初の最悪の事故で前例がないからだ。

 こういう時、一編集者として僕は何が出来るのだろうか。

 僕はこの前代未聞の事故を取材するにあたって、まずは冷静になる事を心がけた。ご承知のようにこの震災によって新聞などの大メディアは虚偽の報道をしており、ネットを中心とした情報こそが正確な報道をしているといった風潮が流れた。それは既存メディアへの反発からくるもので勿論、記者クラブのような制度はなくした方が、より自由闊達な議論が可能となるし、記者の力量の向上にもつながる(それは分かる)。

 また、海外の新聞等をソースに放射線被害を大げさに伝えるジャーナリストたちもいた。既存メディアも腰砕な所が露呈された。伝えるべき事実を放り出し記者たちを避難させた会社もあった。代わりにフリーの記者やカメラマンがいち早く、手弁当で現地に行って体を張って事故の様子を伝えた。しかし、既存マスコミが「安全デマ」を流し続けたという「風評」はもはや、それこそがデマである事は当時の新聞を読めば一目瞭然だ。

「炉心溶融」「放射線」といった単語が一面をかざっていた。だから、僕が取材した当事者たち。つまり相双地区で被害を受けた人々は「もう煽るような報道はやめて欲しい」とさえ言っていた。現地では東京と違い、前述の「既存マスコミが安全デマを流していた」とは真逆の事を言っていた訳である。

 僕は夏頃からいわき市を拠点に、まず今も福島第一原発、通称1Fで作業をしている、そして警戒区域に生まれ育った若者の声を、本当の肉声を届ける事に専念した。当事者しか分からない事がある。当事者でなくても伝えなければ分からない事がある。それは時として、余りにも本音過ぎて言葉が強くなり、僕たち東京など被災地から遠く離れた場所に住んでいる人間にとってはキツく聞こえたり、あるいは反原発デモをしている人からすれば憤りを以て聞かなければならないセリフかも知れない。

 しかし、声なき声に耳を傾ける事が、今、最もすべき事ではないだろうか。僕はメディアに(当然だが)出たがらない彼らといわきに行っては酒を飲み、たまには震災や放射線被害と関係ない女の子の話や芸能界の話などをして酔いつぶれ、また彼らも酔いつぶれた。

 彼らは、戦争で言う所の最前線に立つ兵士である。放射線という弾に当たりながら作業を続けている。放射線の恐怖を知りながらいまだ作業を続けている。まだ二十代。その様子と、彼らの本音を『原発アウトロー青春白書』という本にまとめた。書店でも売っているがいわき駅前のいわき市立総合図書館に入っているようだ。

 

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