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「夕焼け」と「祝婚歌」

2014/09/12 03:38 投稿

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今年の1月にこの世を去られた

詩人吉野弘の作品が「夕焼け」「祝婚歌」である。



日常を切り取る天才といわれ国語の教科書にも掲載され知ってる方も多いのではないだろうか。



秋の夜は長い!



そして、長い夜は時に孤独を気づかせる。



そんな孤独を感じ時には、たまには詩を読んでみるのもありかもしれない。



「夕焼け」

いつものことだが

電車は満員だった。



そして


いつものことだが

若者と娘が腰をおろし

としよりが立っていた。



うつむいていた娘が立って

としよりに席をゆずった。



そそくさととしよりが坐った。

礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。



娘は坐った。

別のとしよりが娘の前に

横あいから押されてきた。



娘はうつむいた。



しかし

又立って席を

そのとしよりにゆずった。

としよりは次の駅で礼を言って降りた。



娘は坐った。



二度あることはと言う通り

別のとしよりが娘の前に

押し出された。



可哀想に。



娘はうつむいて

そして今度は席を立たなかった。



次の駅も



次の駅も



下唇をギュッと噛んで

身体をこわばらせて---。



僕は電車を降りた。



固くなってうつむいて

娘はどこまで行ったろう。



やさしい心の持主は

いつでもどこでも

われにもあらず受難者となる。




何故って

やさしい心の持主は

他人のつらさを自分のつらさのように

感じるから。




やさしい心に責められながら

娘はどこまでゆけるだろう。





下唇を噛んでつらい気持ちで

美しい夕焼けも見ないで。








祝 婚 歌


二人が睦まじくいるためには

愚かでいるほうがいい

立派過ぎないほうがいい

立派過ぎることは

長持ちしないことだと

気づいているほうがいい


完璧をめざさないほうがいい



完璧なんて不自然なことだと

うそぶいているほうがいい

二人のうち どちらかが

ふざけているほうがいい

ずっこけているほうがいい

互いに非難することがあっても

非難できる資格が自分にあったかどうか

あとで疑わしくなるほうがいい

正しいことを言うときは

少しひかえめにするほうがいい

正しいことを言うときは

相手を傷つけやすいものだと

気づいているほうがいい

立派でありたいとか

正しくありたいとかいう

無理な緊張には色目を使わず

ゆったりゆたかに

光を浴びているほうがいい

健康で風に吹かれながら

生きていることのなつかしさに

ふと胸が熱くなる

そんな日があってもいい

そしてなぜ 胸が熱くなるのか

黙っていてもふたりには

わかるのであってほしい






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