博田伸樹の地方競馬・ダート競馬予想コラム「Dの疾風」

コラム 無観客でも興奮が包み込んだ、ばんえい記念2020を振り返る

2020/04/23 22:30 投稿

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2018年7月から連勝記録を続けていたホクショウマサルが、国内連勝新記録となる30連勝達成。またメムロボブサップの3歳世代3冠達成など、明るい話題が多かった2019年度シーズン(以降、今シーズン)のばんえい競馬。そんなシーズンを象徴していたかのような熱闘が、3月21日に行われたばんえい記念ではなかっただろうか。新型コロナウイルスの影響により無観客開催になってしまったが、語り継ぐべき名勝負になったことは間違いないところ。2020年度(以降、新シーズン)の開幕を明日4月24日に控える今、振り返っておきたい。

<大スランプを乗り越えて復権を果たした、オレノココロが3度目の頂点に>

今年のばんえい記念は7頭立て。いわゆる“複勝2着払い”になったのは2004年以来だったが、この時は絶対王者スーパーペガサスに恐れをなして、5頭立てになったもの。しかし今年は連覇がかかったセンゴクエースに、雪辱を期したオレノココロ。さらに5度目の出走で大願成就を狙うコウシュハウンカイといったおなじみのメンバーに、明け5歳世代として18年ぶりに参戦したアアモンドグンシンに、連勝記録を31まで伸ばしたホクショウマサルが満を持して檜舞台に登場。これ以上ない役者が揃うことになった。

気温こそ上がったものの、風が強い中で行われたレース当日、朝から徐々に下がった馬場水分は、レースの時点で昨年並みの1.4%。こうなると1トン戦らしいゆったりした流れになるが、昨年以上に慎重に各馬が進んだ結果、先頭が第2障害手前に到着するまでおよそ2分15秒昨年より20秒近く遅いスローペースで、勝負所に集まったのだ。

その第2障害で、最初にアタックをかけたのは何とオレノココロ。すかさずセンゴクエースホクショウマサルも反応するが、どの馬もなかなか腰が入らない。その後にアタックした馬も例年以上に各馬が第2障害に苦戦する中、じっくり溜めたコウシュハウンカイがいち早く天板に脚をかけ、頂上でヒザを突きながらもトップ抜けを果たす。そのまま苦しむ後続との差を広げていき、2番手でアアモンドグンシンが抜けた頃には、既に残り30mを切っていた

ところがコウシュハウンカイの歩みがここから急激に鈍る。そこにアアモンドグンシンと3番手で抜けたオレノココロが迫り、さらにホクショウマサルセンゴクエースも凄い脚で追い込んできた。それでもコウシュハウンカイは残り10mを先頭で通過したが、ここでついにオレノココロに交わされる。そのままオレノココロが押し切ろうとしたところにセンゴクエースが襲いかかったが、ギリギリ(1.9秒差)凌いでゴール。オレノココロが昨年2着の雪辱を果たすとともに、3度目の制覇を果たすことになった。

勝ったオレノココロは今シーズン、ばんえい十勝オッズパーク杯と旭川記念を制し、幸先いいスタートを切ったものの、その後ばんえいGPと岩見沢記念でともにシンガリ負けを喫するなど、まさかの大スランプに見舞われた。それでもシーズン終盤に立て直し、この舞台に間に合わせたのは、長年ばんえい競馬を牽引してきた底力である。

ただし勝ちタイムが4分16秒0と、3年前・2年前に制した時より時計のかかる決着になったことに恵まれたことも確か。他馬が障害に苦労し、時計勝負にならなかったことが、今回の勝因として挙げられると考えている。

<障害に苦労したセンゴクエースと、トップクラスの底力を証明したホクショウマサル>

2着に敗れたセンゴクエースは、第2障害で何度もヒザを突いて苦戦したことに尽きる。昨年制した時はオレノココロより先に第2障害を抜け、降りてからノンストップで歩き切って頂点の座を射止めたが、今年は大きく離された5番手。それでも昨年同様、第2障害を抜けてからノンストップで歩き切り、あわやのシーンを作ったのだから恐れ入る。積年の課題である障害力が向上すれば、無敵の存在になってもおかしくないのだが。

レース前の話題を独り占めしていたホクショウマサルは、ゴール直前で一旦2番手に上がるシーンも見せたが、そこからオレノココロとセンゴクエースの末脚に屈し、結局3着。連勝記録は途切れてしまったが、ある意味“負けていいレース”出負けたのだから誰もが納得がいく。むしろ初の古馬重賞でこれだけ走れれば、新シーズンに向けて楽しみしかない。負けたことで、使いたいレースを使える立場になったのだから。

第2障害でトップ抜けを果たし、頂点まであと10mに迫っていたコウシュハウンカイは、結局4着。今シーズンは前哨戦の帯広記念を制しただけに、大願成就の期待も少なくなかったが、今年も高重量を曳き切る平地力という積年の課題を乗り越えられなかった。これを見せられると、この舞台だけは厳しいという評価を強めただけで終わってしまった。

そして第2障害を2番手で抜けたアアモンドグンシンは、残り10m付近で一旦詰まった後、再始動しようとした時にバランスを崩して転倒。そのまま競走中止となった。ただし見せ場十分の走りを披露し、豊かな可能性は間違いなく示した。もっとも今回の参戦が正しかったと評価されるには、次にこの舞台に立った時に結果を出さなければいけない

<“ポスト・オレノココロ”を巡る新シーズン>

ここまで取り上げた5頭が、新シーズン初日に行われるOP特別「スプリングカップ」に名を連ねたことからわかるように、今年のばんえい記念出走馬にラストランとなった馬はいない。そうなるとばんえい記念をはじめ、シーズン終盤の重賞戦線で活躍した馬が、そのまま新シーズンも古馬重賞戦線の主役を担う可能性は高いはずだ。

その中で大きなポイントとなるのは、オレノココロとコウシュハウンカイは、新シーズンがラストシーズンとなる可能性が高いことだ。この2頭を中心に“黄金世代”と呼ばれ、長く古馬重賞戦線を牽引してきた10歳世代が、間もなく競馬場を去ろうとしている。つまり新シーズンは“ポスト黄金世代”“ポスト・オレノココロ”が最大のテーマとなることを意味している。

その座を狙うのは、何もばんえい記念出走組だけではない。今年のばんえい記念に名を連ねなかった、メジロゴーリキやミノルシャープといった6歳世代に、アアモンドグンシンがいる5歳世代も、コウシュハレガシーにキタノユウジロウといった実力馬が揃っている。こういった若い世代がどこまで既成勢力を脅かすかにも、注目したいシーズンになるだろう。

また今シーズン、3歳世代3冠を達成したメムロボブサップが、開幕のスプリングCで早くもトップクラスと対戦する。新シーズンは古馬重賞戦線で戦う姿を見ることは少ないだろうが、こういう機会は新シーズン中に何度もあるはずで、そこでどんな可能性を披露するか、楽しみは尽きない。黄金世代が王者のまま競馬場を去るのか、それとも明確な世代交代が果たされるのか。近くて遠い未来を見据えながら、新シーズンのばんえい競馬を楽しんで欲しいと思っている。


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