博田伸樹の地方競馬・ダート競馬予想コラム「Dの疾風」

コラム 岩手競馬2019年度シーズンを総括する

2020/02/25 00:00 投稿

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2019年度シーズンの岩手競馬は、前年度に襲った禁止薬物問題が未解決のまま始まった。当初はその判断に対し物議も醸したが、開催が始まってからは順調に開催を消化。そのままシーズンを終えるかと思われたが、11月になって再び発生し、その対応で計7日間の開催自粛と2重賞の取りやめが発生した。これは大変残念なことであったが、それでも昨シーズン実施できなかった、桐花賞など年末年始のビッグレースを消化してシーズンを締めくくれたのは幸いだった。

それでも禁止薬物問題は、解決した訳でも原因が明らかになった訳でもない。これは3月20日に予定される実質的な新シーズン開幕までに、全ての人が知る形で進展があることを願うばかりだが、ここでは毎年のように行っている、2019年度シーズンに活躍した主な馬について、個人的な見解を交えながら振り返ることにする

ヤマショウブラック(桐花賞・不来方賞など重賞3勝、年度代表馬・3歳最優秀馬)

2019年度の岩手競馬は禁止薬物問題の影響で散り散りになった古馬の有力馬が開幕までに戻らず、それもあって3歳馬に期待がかかる環境があったと思う。そして古馬重賞に3歳馬が参戦することで世代間対決が生まれたシーズン終盤、そのエースとして立ち上がったのがヤマショウブラック。年末の大一番である桐花賞を制し、岩手の頂点に立ったことが決め手となり、年度代表馬に選出されることになった。

ヤマショウブラックは2歳時に岩手所属で寒菊賞2着はあったが(知床賞はホッカイドウ競馬在籍時の実績)、今期は南関東で3歳3冠路線を歩んでいた馬。しかし9月に再転入すると、初戦の不来方賞とイーハトーブマイルを制して3歳路線を平定。古馬との戦いでも初戦の白嶺賞こそエンパイアペガサスにハナ差届かなかったが、終始これをマークして進んだ桐花賞では直線でキッチリ差し切り、世代交代を宣言した

終わってみれば南関東で活躍した走りで岩手を制した訳だが、その一方、南関東で出走した3歳重賞は、全て勝ち馬から2秒以上離されていた。南関東の3歳路線がハイレベルだったことを差し引いても、それで古馬を含めた岩手の頂点に立ったことに寂しさもある。それだけ岩手競馬の古馬戦線が地盤沈下したことが現れており、その立て直しに向けて岩手競馬全体が努力していかなければいけないことを、伝える役目だったのかもしれない。

とはいえ2020年は、ヤマショウブラック自身が古馬戦線の主役となり、屋台骨を支える役割が求められることになる。南関東時代の1勝がマイル戦だったように、距離に対しては融通が利くので、岩手競馬の古馬路線で中核を形成するマイル路線でも主役を張れるはず。まだ成長する余地もあると感じているので、他地区や中央勢の強豪と切磋琢磨できるレベルまで届くことを、期待したいと思う。

パンプキンズ(東北優駿・ダイヤモンドカップ)

そのヤマショウブラックが来るまで、3歳路線で主役を張っていたのがパンプキンズだった。逃げれば2歳時に寒菊賞を逃げ切ったように力を発揮するが、その形にならないと厳しいとみられていたため、開幕の準重賞スプリングカップを逃げ切っても、疑心暗鬼な評価が多かった。しかし東北優駿でハイラップを踏み、後続を寄せ付けない逃げ切り勝ちを演じたことで、評価を一変ダイヤモンドカップも逃げ切り勝ちを収め、世代の王者として更なる高みを求められる立場になった

ところが2歳時に岩手で結果を残していた力量馬が戻ってきた不来方賞で3着に敗れると、イーハトーブマイルでも2着。古馬相手になっても壁を感じる内容に止まり、前半戦で見せた輝きが戻って来ることはなかった。結果的に前半戦の3歳路線が、層の薄い中で争われていた印象を与える結果になってしまった。

それでも徹底先行タイプ故の難しさがあったことは割り引かないといけないし、不来方賞の後にマイルチャンピオンシップ南部杯に出走して、高みを目指す意欲を見せたことはどこかで実を結ぶはず。マイル以下に戦いの舞台は限定されると思われるが、2020年の重賞路線を賑わせてくれることを、切に願うところである。

エンパイアペガサス(青藍賞・白嶺賞、4歳以上最優秀馬)

一方で古馬戦線は例年と比べて盛り上がりに欠ける1年だった。前述したように昨シーズンまでの有力馬が戻って来ず、また新たな主役候補と目されたサンエイキャピタル(今年に入り、川崎に移籍)が結果を残せなかったこともある。結果的に昨シーズンまでの有力馬で、いち早く岩手に戻ってきたエンパイアペガサスが重賞2勝を挙げて世代代表馬に選ばれたが、これもスケールダウンと言わざるを得ないシーズンだった。

その象徴といえるのが、それまで地元馬限定戦で無敗を誇っていた水沢コースで、一條記念みちのく大賞典と桐花賞で敗れたことにある。特に桐花賞はマークされる位置関係になったとはいえ、ヤマショウブラックに完敗した姿は、3~4歳時に見せた輝きを失ったことを証明するに十分だった。重賞2勝も辛勝で、世代代表馬に選ばれたことも、入着した他地区遠征2戦を地元の重賞勝ち並みの価値を認めた可能性もある。それだけにこの成績で満足されては困ってしまうのだが。

明けて7歳となる2020年シーズンは、年齢だけみればまだ老け込むには早いだけに、立て直してもう一度若い世代の壁になってほしい。ただし丸2年主戦を務めた菅原俊吏騎手が引退し、新たなパートナーが誰になるのか気になるところ。乗り手を選ぶタイプではないと思うが、まずは新コンビで力を出せるかではないだろうか。

ロジストーム(シアンモア記念・絆カップなど重賞3勝)

年間を通じての活躍となれば、エンパイアペガサスよりロジストームに軍配が上がるかもしれない。開幕直後に赤松杯とシアンモア記念を制し、秋には絆カップを制覇古馬戦線で今シーズン唯一の重賞3勝馬となって岩手競馬を盛り上げたことに対して、一定の評価を与えるべきだろう。

それでも世代代表馬に選ばれなかったのは、開幕直後の重賞2連勝はメンバーが揃っていなかったこと。そして対エンパイアペガサスが2戦2敗に終わるなど、一線級相手に通用しなかったことがある。2年連続して地元馬最先着となったマイルチャンピオンシップ南部杯も、爪痕を残した訳ではなく、能力的な限界も示したのは確かだった。振り返れば開幕前に短期移籍していた南関東では、古馬B1下を勝てなかった馬。層が薄くなって浮上したというのが、妥当な評価ではないだろうか。

それを考えれば、この馬の関係者には申し訳ないが、2020年もこれがタイトルを積み重ねるような岩手競馬では良いとは思わない。ただし低い壁になる必要はなく、これに勝てなければ更に強い相手に通用しないという意味のリトマス試験紙として、存在感を発揮してほしい。衰えて勝てなくなるのではなく、強い馬が出てきて勝てなくなる方が、まだ格好いいはずだから。

ラブバレット(栗駒賞・岩鷲賞、最優秀短距離馬)

禁止薬物騒動で昨シーズン影響を受けたラブバレットは、今シーズンも翻弄されてしまった。昨シーズン、その影響で兵庫ゴールドTに使えなくなったのを受けて中央に移籍。その後春先まで中央所属として戦ったものの、結果を残せず、クラスターCを見据えて岩手へと帰厩した。

すると帰厩初戦の栗駒賞に、クラスターCの前哨戦となる岩鷲賞を圧勝し、岩手に戻れば短距離路線の1強であることを証明。しかし大舞台のクラスターCでは9着に終わり、4年続けた3着以内を外してしまった。これは歴代最高クラスのメンバーだったこともあるが、移籍続きで何らかの形で馬に負担をかけた可能性も、否定できないだろう。

そして秋になると再び禁止薬物騒動の影響を受けてしまい、予定していた笠松GPを使えず。すると今度は川崎に移籍して、兵庫ゴールドTと大井の準重賞を使ったが、どちらも結果を残せなかった。再び岩手に戻ることを期待するファンも多いと思うが、これ以上振り回すのはどうなのかという想いもある。岩手に戻ってこなかったとしても、馬に罪はないので、これからの現役生活も暖かく応援してほしいと思っている。

グランコージー(若駒賞・寒菊賞、2歳最優秀馬)

2歳世代は最初のダート重賞となるビギナーズCからホッカイドウ競馬デビュー馬に屈し、また南部駒賞は7着までホッカイドウ競馬デビュー組で占められ質量ともに寂しいシーズンとなったのは否めない。岩手でデビューした頭数自体多くなかったのでやむを得ない部分もあるが、その中で孤軍奮闘したのは、世代代表馬に選出されたグランコージーだった。

デビュー4連勝で若駒賞を制し、シーズン最終戦となった寒菊賞も完勝と、地元馬同士では抜けた走りを披露したなら、当然の選出。南部駒賞こそ初めて経験する厳しい競馬に8着と崩れてしまったが、上位に入った馬はその後、統一グレードでも上位を賑わせていた。そういう強い相手と戦った経験を、糧にしてほしいところである。

なおシーズン終了後に船橋に移籍しているが、移籍後は現時点で未出走。体制が整い次第南関東で使う予定なのか、使わずに岩手に戻って来るのか不明だが、どちらになっても2020年の3歳路線は、転入馬に動向が左右されるはず。現時点で勢力図を占うのは、困難と考えている。

コスモリョウゲツ(OROカップ、最優秀ターフホース)

マツリダレーベン(オパールカップ)


最後に芝路線について。最優秀ターフホースに選ばれたコスモリョウゲツは、初めて岩手に在籍した2017年に芝で4戦全勝と、盛岡芝に高い適性を見せていた馬。それが再転入初戦の準重賞かきつばた賞を制すると、OROカップは中団から3角まくりに近い形で突き抜けて圧勝新たな盛岡芝の王者に就いたと評するに、十分なパフォーマンスを披露した。

また3歳路線は2つの準重賞を制したマツリダレーベンが、オパールカップも制して3歳芝路線の完全制覇を達成した。古馬相手の芝重賞に姿がみられなかったのは、選考の上で不利になった気もするが、インパクトは見劣らなかったと思っている。この2頭の対戦は2020年の楽しみとしてとっておくとして、ここに今期は態勢が整わなかったサンエイゴールドも絡んでくれれば、楽しみが広がると思っている。

なお2020年は大規模な芝の張り替え工事を実施する関係で、芝コースの使用開始は7月を予定している。他に代えがないだけに、レース数が増えた近年の状況(注)を案じていたが、ある意味限界を超えていたこと明らかになったといえる。これを機に芝コースの適正な年間レース数がどの程度なのか、議論する必要があると考えている。

(注)2010年以降の芝競走実施数(開催中止・ダート変更は含まない)
2010年・50レース

2011年・59レース

2012年・44レース

2013年・66レース

2014年・63レース

2015年・65レース

2016年・71レース

2017年・76レース

2018年・92レース

2019年・72レース


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