オタ風に吹かれて

東方の新ガイドラインを読む

2020/10/11 00:18 投稿

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 2020年10月8日、突如として東方プロジェクトのニュースサイト、「東方よもやまニュース」が公開され、話題を呼んだ。
 そこで一つの目玉であったのが二次創作ガイドラインの更新である。
 ここではそもそも、ガイドラインとは何か、新しいガイドラインのどこが変わったのかについて自分なりに解説したい。

※この記事は筆者、ひーだ独自の見解を述べたものに過ぎず、上海アリス幻樂団と解釈が一致するとは限りません。この記事の言に従うことで生じた損害等について筆者のひーだは責任を負えません。従う際には自己責任でお願いします。

二次創作ガイドラインとは何か

 著作権法によれば、正当な手続きを踏まない限り、他人の著作物を使用することは違法行為である。しかし、著作権法違反というものは、著作権者が訴えない限り犯罪とはならない親告罪で、即時に犯罪となるわけではない。つまり、二次創作は違法行為だけど著作権者が訴えない限り犯罪ではないということになる。
 東方プロジェクトの原作者、ZUN(以下、神主)は個人の二次創作については寛容な姿勢を見せている。しかし、膨大な二次創作物にいちいち許可を与えているときりがないので、基本的な決まりごとを設定し、これをに同意して創作した二次創作物は許可を与えたことにすることにした。この決まり事が「二次創作ガイドライン」である。
参考:上海アリス幻樂団様の場合の著作権の基本概念

2020年版ガイドライン以前

 今回の新ガイドライン以前にもガイドラインは存在していた。大まかに、
の2つがある。この他にもZUNのブログに二次創作のガイドラインに準する書き込みがある。
しかし、時代を追うにつれて、いくつか問題点が生じていた。
  • 情報が分散していて欲しい情報が見つけにくい
  • 上海アリスHPからガイドラインへのリンクが切れている
  • 情報が古い

という問題だ。
 最終更新が2011年で止まっているタッカー氏のHPはサイト消滅が危惧されており、更新が望まれていた。また、上海アリスHPもほとんど更新されておらず、タッカー氏のHPへのリンクも切れていたことから、こちらも改善すべきとの声があった。
 2020年9月30日、二軒目ラジオ内で「公式のHPがあまりにも酷いので、色々やってます」と発言があり、更新が期待されていた……。
(ちなみに、タッカー氏は現在、ツイッター上で活動してるようです。)

2020年ガイドライン

 そしてその翌月8日、「東方よもやまニュース」が登場し、ガイドラインも追加された。
 ぼくもまさかこんな早く出るとは思わなかった。
 これからその内容について触れていこう。

免責

このガイドラインは円滑なファン活動のための目安となるものです。ガイドラインの内容や二次創作活動について、個人からのお問い合わせ・報告につきましては個別の返答は行いません。ガイドラインから大きく逸脱した行為については直接連絡することがあります。このガイドラインは予告なく変更されることがあります。

 まず、抑えておきたいのがこの事項。

 ガイドラインはあくまでも「目安」にすぎず、絶対的なものではない。そして、ガイドラインを逸脱したと判断するのは上海アリス側である。第三者がこのガイドラインを用いて他人の二次創作をガイドライン違反と訴えても何の意味がないのである。
 また、ガイドラインについての「個人からのお問い合わせ・報告」には個別には返答しない旨が記されている。

条件
東方Projectの二次創作である事を明記してください。
 二次創作の前提である。変にぼかすのはよくない。堂々としよう。
禁止事項
 おおむね常識的なことが書かれているが、まず目を引くのが、
ZUN本人の許可無く、本人の写真を加工・公開する行為は認められません。

という条文。
 以前から原作者ZUNの写真を加工して楽しむ界隈が存在していたが、二軒目ラジオでしてほしくないという旨の発言があり、今回のガイドラインにも明記された。

 ここで問題となるのは、神主が入ってるイラストなどの類は禁止なのかという話だ。
 ここからはぼくの見解になるが、条文は「写真」が対象になっているのでイラストはOKだと思う。ただし、写真をトレスすると「加工」とみなされると思われるため、控えたほうがいいと考える。また、イラストであっても神主を貶める意図で公開したものは肖像権・人格権の侵害とみなされる可能性が十分に高いのでやめよう。

「思想」問題

 禁止事項でもう一つ議論を呼んでいるのが次の条文である。

原作コンテンツや二次創作物を利用し、個人の思想を発信する行為
 これには「『個人の思想』を発信する行為こそ二次創作だろ」という反発や、「政治・宗教活動での使用を禁じているものだ」という解釈が飛び交っている。
 この点についてぼくの考えを述べておく。
①まず、著作権法においてある作品が著作物だと認められることの要件「その作品が思想・感情を含んでいる」というものがある。つまり、このガイドラインを文言通り文理解釈すれば、著作権法上、個人の思想を含まない二次創作は著作物とはみなされず、二次創作者は二次創作物の権利を持っていないことになる。
しかし、神主本人による二次創作物に関しての著作権と再利用について」には、
東方Projectの二次創作物は簡単に言えば
「東方Projectの権利は上海アリス幻樂団」
「二次創作物の権利(複製や頒布など、作品を取り扱うことに関して)はその作品の制作者」
がそれぞれ保有しています
とある。
 つまり、神主は二次創作物の権利を二次創作者に認めている。これは①の結論と矛盾する。
③「二次創作者に関しての~」が現在でも有効であることは2020年版ガイドライン末尾からも明確である。つまり、②の結論を無効だとすることは無理がある。
④なぜ、①と②に矛盾が生じるのかと言えば、2020年版ガイドラインの条文が曖昧としているためである。②の結論が無視できない以上、「個人の思想を発信する行為」を限定して解釈する必要がある。
⑤「個人の思想を発信する行為」によって上海アリス側が不利益を被る場合として考えられるのは次のようなものが挙げられる。
  • 選挙活動や政治ビラにコンテンツを使われた場合
  • 宗教勧誘などにコンテンツを使われた場合
  • 誹謗中傷にコンテンツを使われた場合
 当該条文が想定している「個人の思想を発信する行為」とはこのようなものではないかと推測する。でないと、法的にも実務的にも広範で現実的ではない対応を強いられることになる。
⑥ぼくの結論として「個人の思想を発信する行為」とは政治・宗教・犯罪にかかわる領域においてコンテンツを使用し、その思想を発信する行為だと考える。

2020年11月20日追記

英語版ガイドラインが追加された。例の「個人の思想を発信する行為」を禁止した条文はこのように訳されている。

Anything that means to advertise personal beliefs beyond the bounds of fiction.
和訳すると、「フィクションの範囲を超えた個人的な信条の宣伝を意図するあらゆる行為」となる。「個人的な信条」に係る「フィクションの範囲」とはいかなるものだろうか。
  • 東方の世界観の範囲
  • パロディ、二次創作の範囲
いずれにせよ、日英のガイドラインにある個人の「思想」や「beliefs」は日本の著作権法第二条一項が著作物の要件として求める「思想又は感情」よりもかなり狭義に解釈しているように感じる。
また、このガイドラインにはどの言語のガイドラインを優先すると明記されていない。つまり、英語版も日本語版と同様の効力を持つものと考えてよさそうだ。

その他

 「ファン活動可能範囲について」という項目にはこれまで禁止されていたスマホアプリについての条文動画サイトでの配信に関する条文などが追加され現代の二次創作事情に即した更新がなされている。
 こちらについては皆様の目で見ていただいたほうがわかりやすいので割愛して記事を終わる。良い東方二次創作ライフを。


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