④日本代表のスタイルとは
多くの方はザッケローニ監督時代のパスサッカーを思い浮かべるはずで、当時の私もショートパス主体のサッカーが日本人のスタイルなんだと勝手に思っていました。そして現在の私個人の意見はというと、日本代表のスタイルは戦術面での柔軟性であったりここ一番での運動量であったり狭いスペースをかいくぐれる一瞬の素早さであったり。どちらかといえば身体的特徴や戦術への柔軟性にあると思っています。ショートパス主体のサッカースタイルがもし本当に根付くのであればとても魅力的ですが、現実的に難しい側面があります。何故なら選出される代表選手には連携不足を補えるだけの一定以上の技術が常に求められてしまうからです。また自国リーグでもそのスタイルを持つ象徴的なクラブがなければ定着することはなく、どうしても一過性のものにすぎないものとなり、築き上げたとしてもその世代で簡単に潰えてしまうことでしょう。それではやはり日本人の特有のスタイルとは言い難いものになってしまいます。
ではもう少し掘り下げて日本のサッカーの人材育成に関して語っていきたいと思います。
人材育成に関してはおそらくこう思っている方が多数いるのではないでしょうか。
「どうして2列目の選手ばかりを育ててしまうのか。CBやSB、CMFに適性のある人材をどうして育てないのか」
おそらく指導者側にCB、SB、CMFなどの指導経験がない。もしくは絶対数が少ない為に、専門的な指導ができない。またDFやCMFだけを目指す選手が少なく、現状はFWやMFの適正からもれコンバートという形でDF、CMFをやる選手が圧倒的に多いことが挙げられるでしょう。もしイタリアのような堅守が『独自のサッカースタイル』として日本に定着していたのであれば(しないと思われますが)DFやCMFの育成は段階的に着実に進歩するかもしれません。それは間違いなく指導者側にも作用し、ディフェンシブな戦術が定着していくかもしれません。
よくサッカーの強豪国たる所以は、『独自のサッカースタイル』によるといわれます。
その『独自のサッカースタイル』とは、国民の誰もが認識しており、長い間醸成されて作られたものと認識されています。ですが、そんな強豪国でも常に結果がついてくるというわけではありません。その『独自のサッカースタイル』に合う人材が育っていない、もしくは駒不足となれば機能不全に陥るからです。では、そんな『独自のサッカースタイル』などない方がいいかというと、決してそういうわけでもありません。前述したように『独自のサッカースタイル』は指導者、プレイヤー両方の人材育成の面で効果を発揮しているからです。
現在、ザッケローニ氏が確立しようとしたパスサッカーのスタイルは完全に影をひそめ、現状は日本のサッカースタイルと呼べるものは完全に消失してしまっています。それがザッケローニ氏のスタイルを引き継いでいたかもしれない前日本代表監督の緊急の解任によるものなのか、はたまた人選を焦ったせいなのかは定かではありませんが、全くの別方向へと向かっていることは確かです。しかし、逆に考えると新しいスタイルを生み出せるチャンスでもあるとはとれないでしょうか。⑤ではハリルホジッチ就任によってどう日本代表が変化したのか、就任から現在までの日本代表戦から検証していこうと思います。