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紅美鈴の過去を妄想してみた

2014/01/30 01:45 投稿

コメント:2

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友人のあにょはせ氏が咲夜さんの過去を妄想していたので俺も妄想してみた。
色々とめちゃくちゃです。とにかく真面目な話が作りたかった。俺も絵が描ければ漫画に出来たのかもしれんな~。


紅の追憶

「そういえば美鈴は紅魔館に来るまで何をしてたの?」
門番のシフトが終わったことを告げに十六夜咲夜がやってきた。そして、たわいもない会話をしていたら、急に尋ねてきたのだ。
「どうしたんですか、突然。」片眉を釣り上げて訊き返す。
「いやね、昨晩お嬢様と昔の話を思い出していたらちょっと貴女の過去も気になって」
ああ、そういうことか。なるほど、とだけ呟き美鈴は黙りこくってしまった。
屋敷の扉を開け、ロビーを抜ける。そして暖炉の燃え盛る居間に入ったところでようやく咲夜が口を開いた。
「話したくないのね」
図星だった。
「ええ、まあ。あまり面白いものではないですから。」
そう言ったはいいものの、咲夜の好奇心に満ちた目はきっと食い下がってくるだろうと見てとれた。美鈴は渋々どこから話すべきか、考えを巡らした。
ソファに腰掛け、視線を上に仰ぐ。気付いたら手元のテーブルには紅茶が淹れてあった。
「そうですね...確か、あれは...」


自分がいつどのようにして生まれたかは覚えていない。気付いたら山奥にひとり立ち尽くしていた。
自分が何なのかさえ解らなかったが、生きるために何かを食さねばならぬことだけは本能が告げていた。
小さなネズミから、人間なら到底敵わぬパンダまであらゆる獣を狩って命を繋いでいた。
そのうち山を下りていくと、自分と似た姿の生き物、人間を初めて見た。
しかし彼らは仲間ではなかった。私を見るなり「妖怪」と呼び、あらゆる手段を講じて退治しようとした。
もちろん私を恐れず、優しくしてくれた人間もいた。そういった人間から言葉を教わり、美鈴という名前をつけたのだ。
だが彼らと私では流れる時間が違う。彼らは儚き刹那を生き、死んでいく存在だった。結局一人きりになった私は仲間、「妖怪」という同胞を求め各地を放浪した。
どこにも居場所などなかったのに。

そして時は第一次世界大戦。私はドイツ軍の傭兵部隊にいた。もはや仲間など見つからず、人間にも溶け込めなかった私にはお似合いの場所だっただろう。
傭兵たちは、とても人間とは言えないほど残忍だったし、私を妖怪と気付くほどの判断力も持っていなかった。
女の姿であることが最初のうちは様々な偏見や差別を生んだし、レイプもされかけたが、人間より遥かに高い私の身体能力が全てを解決した。
長年の孤独ゆえ人生に絶望していた私に倫理や道徳はなかったのも手伝い、戦場ではいつも一番殺していた。それも女子供までも。
その無慈悲で返り血にまみれた姿から、他の傭兵達からは"Die Frau von roten"(紅の女)と言われていたほどだ。

そんな生きてるか死んでるかも解らない日々が続いていたのだが、ある日の市街地戦でそれは変わる。
何か違和感を感じた私は単独行動を取り、その違和感の発生源へ赴いた。
古い石造りの小屋だったろうか。爆撃を免れたその家には紫の長い髪をたくわえた少女が倒れていた。
私は彼女を見た瞬間、人間ではないと直感した。何としてでも話を聞かねば。
彼女を介抱し、一晩明けてようやく目を覚ましてくれた。
状況を把握できておらず混乱する彼女に私は矢継ぎ早に質問した。
しばらくして冷静になった私達は、まず自分達が人間でないことを確認しあった。
ずっと探していたものが見つかった気分だった。私は独りではなかったのだ。
魔女というその少女は、友人の元へ行く旅路の途上で、しかもその友人は私のような人外を仲間として集めているらしい。
私は躊躇うことなくその魔女とイギリスを目指した。身体の弱い彼女を護りながらの移動は、戦時中ということもあって非常に厳しいものだったが
邪魔する者は殺してでも排除して、ようやく紅魔館に辿り着いたのだ。


「私は...ただ居場所が欲しくて、沢山の罪のない人を殺してしまった。決して許されないことですよね。」
美鈴は一息ついて紅茶をすすった。暖炉のパチパチという音が重く響く。
「...誰にでも過去はある。大事なのは今よ。」
少し考えてから、咲夜が励ますように言った。
「ええ。しかし今、とは過去の積み重ね。蔑ろにはできません。私の名前、紅美鈴の"紅"っていうのは傭兵時代のあだ名から付けたんです。戒めるように、忘れないように。」
たった一人の妖怪の、居場所が欲しい、という願いの為に散って行った命へ、せめてもの贖罪である。
咲夜が気まずそうな顔をしているのを見て、美鈴は付け加えた。
「幻想郷は平和だ。来てよかったと思っています。そして何よりも、こうして人間である咲夜さんと同じ屋根の下で暮らせることを嬉しく思います。」
照れくさい言葉だったが、この重々しい雰囲気を打開するには必要な言葉だった。
美鈴の言葉はしっかり咲夜に届き、彼女は微笑んでこう訊いた。
「ねえ、じゃあ"美鈴"という名前はどんな意味があるの?」
「それは...適当なんですよ。名前がないと不便だと思いとっさに考えたもので。」
本当に意味などないから素直に答えた。すると咲夜は立ち上がり、笑顔で振り返った。
「じゃあ、こんなのはどう?美しい音色を鳴らす鈴の様に、美しく生きる。そうすれば...その紅も綺麗に輝く、私はそう信じてるわ」
美鈴はその言葉を聞き、何だが救われたような気がした。涙腺に刺激が走るが、必死に堪える。
「咲夜さん...」
まるで新しく生きる意味を与えられた感じだ。美しく、生きる。この身朽ち果てるまで。
「無理やり話してもらってごめんなさいね。でも嬉しかったわ。...おやすみ。」
そう言い残すと咲夜はいつの間にか部屋からいなくなっていた。
美鈴はしばらく余韻に浸って、あの当時を、受け止めるように思い返すのであった。
暖炉の残り火が、パチッと最後の音を立てた。

コメント

E中隊
No.1 (2014/01/30 01:54)
いい話ですね、ほんのり悲しくほんのり暖かい。
ハウザー (著者)
No.3 (2014/01/30 08:53)
>>1
どうもです^^ 自分でもなぜドイツ軍を出したのか謎ですが、楽しんで頂けたら幸いです
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