Vol.120
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          『そこそこ週刊・畠山理仁』

      ウェブ連載「フクシマの首長」を始めた理由

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●何が言葉を堰き止めるのか
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 男性の目には涙が浮かんでいた。どう声をかけていいのかわからなかった。

 私はその時、福島県二本松市にある浪江町役場二本松事務所にいた。一階の一番奥にある町長室で、馬場有・浪江町長から話を聞いていたのだ。

 震災から丸3年が経った。その長さを考えれば、1時間のインタビューはあまりにも短い。それでも私は震災後に浪江町に起きたことを矢継ぎ早に質問した。馬場町長は「よそ者」の私にも、端的にわかりやすく話してくれていた。

 時間を一秒たりとも無駄にしない。互いにそんな緊張感の中で取材を進めていくうち、突然、馬場町長の言葉が止まった。私はパソコンに文字を入力する手を休め、じっと次の言葉を待った。

 1秒、2秒、3秒……。心の中でゆっくり数えてから馬場町長の顔を見た。

「すみません」

 馬場町長はようやく声を絞り出すと、ポケットからハンカチを取り出し、そっと目頭を抑えた。