[完全俺得]「踊ってみた」を語ってみた

第2回 インセンティブとしてのクリエイター奨励プログラム

2013/02/01 18:50 投稿

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今回はクリエイター奨励プログラムについて考えてみたい。これがどのようなプログラムなのか、またそれにどのような問題があるのかについてはネット上の様々な場所で議論されているのでここでは割愛する(注)。ここで論じたいのは投稿者が製作しアップロードした動画1本に対して実際どのくらい支払われるているのか、そしてその金額は投稿者に次の動画製作を後押しするほどのインセンティブにどれくらいなっているのかという点である。以下各種データからこのプログラムがもつ魅力とその意味について論じでみたい(以下言及する踊り手やその他の人物への敬称はすべて省略)。

注)3/30追記。同プログラムについてはこちらの動画でとても詳しく論じられているので、ぜひ参考されたい。

ニコ動におけるクリエイター奨励プログラムの位置づけ
クリエイ ター奨励プログラムに登録された作品について、その人気度に対してどのくらいのクリエイター奨励スコア(ニコニコポイントか現金に交換可能)が付与されるのかということは、それがどのように計算されるか運営側が工作対策のため明かしておらず、また後述するように1動画に分配される奨励金も月ごとに少なくなってきているのでなかなか実情がわからない。さらに場合によっては著作権侵害等の問題で投稿動画へのスコアの付与が見送られる場合もある。そもそも実際にどれだけ再生されるかはなかなか事前に予測できないので、金銭的見返りだけを目的として動画を投稿・登録するというのはあまり現実的に確実であるとは言えない。実際にポイントや現金に交換できるのが動画投稿から3ヶ月(場合によっては4ヶ月)以上経ってからということもあり、実際には動画製作をがんばった投稿者に 対する「ご褒美」という位置づけに近い。運営側もこれはあくまで動画投稿者の「創作活動の支援、および二次創作文化の推進」に対する「奨励金」であるとし、投稿作品に対する金銭的な対価ということには(公式上は)なっていない。以上がこのプログラムが生み出す「お金」の性質である。では実際その「お金」は動画投稿者にとってどれほど魅力的なものになりうるのか。

実際にクリエイター奨励スコアはどのくらい付与されているのか?
実際投稿した動画に対してどのくらいのクリエイター奨励スコアが付与されているかというのは、ネット上でもほとんど明らかになっていない。運営側が付与基準を公表していないのに加え、毎月登録される動画数が徐々に多くなってきているため、それによって分配・付与されるスコアもわずかずつだが少なくなってきている(1年間で4億円という原資が限られているため、登録動画数が増えれば増えるほど動画ひとつあたりへの分配額は少なくなっていく。現時点では全投稿動画の0.6%が登録されており、この比率は数ヶ月ごとにわずかずつにだが高くなってきている)。筆者が知る限り、自らの登録動画に対する詳しいスコアとその付与率を公開しているユーザーはほとんどいない。ただこのままだと議論が先に進まないので、ここではあえて筆者自身の登録動画に対するスコア付与率を計算・開示し、続く分析に用いるためのとりあえずの基準値としたい(詳しくは下記注を参照のこと)。筆者は昨年の4月以降現在(1/24)までに計19作品を動画紹介動画として投稿し、同時に全てクリエイター奨励プログラムにも登録しているのだが、初めの方の5作品は紹介した動画に使われていた曲のいずれかが著作権侵害に引っかかったらしく、動画へのスコアの付与は見送られてしまった(運営に詳しい理由を尋ねたが、それがどの曲かまでは教えてもらえなかった)。また直近3ヶ月以内に投稿した動画5本もまだスコアが付与される時期にはきていないので、残り9本が現時点までに自分に付与されたスコアの対象動画となる。これらの動画の総再生数は1/24現在で43,121回であり、これに対して今までに付与されたスコアの合計が14,944なので、スコア付与率は再生数に対して34.7%となる(実際には毎月平均約3,000ほどのスコアが付与されており、現在までにそのうち約12,000円を現金化した)。つまりざっと見て1本の動画の再生数の約1/3がスコアとして付与され、現金化できるということになる。

注)実際には人気度は動画の再生数の他にマイリスト数やコメント数なども考慮に入れて算出されているらしいが、本論考では計算を簡単にするため登録動画の再生数のみを基準に再生数あたりのスコア付与率を算出する。よって他の動画に実際に付与されているスコアとはおそらく異なっているであろうことを注記しておく。あくまでも動画のスコア数を見積もる際のだいたいの目安だと考えてもらえれば幸いである。

クリエイター奨励スコアは動画製作を「奨励」するに足るのか?
筆者自身の登録動画から算出したこの比率を参考に、以下様々な動画の換金可能額を推定し、その金額の妥当性について考えてみたい。はたしてこの奨励スコアはどの程度踊ってみた動画投稿者の動画製作を「奨励」することに資するものなのだろうか?まず大前提として、この奨励プログラムはプレミアム会員を対象としたものなので、一般会員にとってはなんの意味もない。またプレミアム会員であっても投稿した動画を同プログラムに各作品ごとに登録しなければスコアはもらえない。よって中には嫌儲厨のようにあえて作品を登録しない投稿者もいるかもしれない。しかしここでは動画投稿と同時に同プログラムにも登録しているという前提で論を進める。では投稿作品を登録している平均的な踊ってみた動画の投稿者にとって、このプログラムはどのくらい励みになるのだろうか?前回の論考で指摘したように、ドキドキしたPによる最新のデータ分析(上図)によると平均的な踊ってみた動画投稿者の動画再生数(中央値)は1,100回なので、換金できたとしてもわずか400円弱にしかならず、その月のプレミアム会員料金(525円)分にも満たない(ちなみに付与されたスコアを現金化する場合は10,000以上からとなる。またプレミアム会員の月額料金は付与されたスコアやニコニコポイントで支払うことはできない)。その月の会員料金をペイするためには、少なくとも1動画につき1,500回以上の再生数がなければならない。上位11-20%層の動画の平均的な再生数(中央値)でも4,675回、換金すると1,622円なので、これでも月々の会員料金+1,000円ぐらいにしかならない。現在投稿されている踊ってみた動画の約8割はこれ以下になる。この金額ははたしてどのくらい「ありがたい」のか?筆者の個人的な感覚としては、この奨励スコアはまさにその月のプレミアム会員料金プラスちょっとしたイベントや活動の手伝いに対するお礼として渡される1,000円分のクオカード、あるいはその日にかかった実費として渡される昼食代や交通費ぐらいに相当するように思われる(つまり損はしないか、多少得した気分になれる)。運営側の発表によると、実際にニコ動全体でも昨年4月の時点で月3,650円以上もらえる投稿者はわずかに382人にすぎなかった。

儲かっている踊ってみた動画はあるのか?
では次に高再生数の動画が実際どのくらい稼いでいるのか考えてみよう(重ねて言うが、以下はあくまで筆者個人の実績をベースにした推定であり、それぞれの動画に実際に付与されたであろうスコアとは異なっていることに留意されたい)。運営によると、昨年4月の時点でその月に100万円以上現金化できたのはニコ動全体で4人いるとのことである(注)。そこまでの金額にはいかなくても、例えば100万回再生された動画(いわゆるミリオン動画)なら計算上34万円ほどの収入となる。この奨励プログラムがスタートした2011年12月13日以降に投稿された動画に限ってみると、例えば踊ってみたと同じパフォーマンス系の歌ってみた動画では、ミリオン動画は現在(1/27)までで計10作品ある。他方踊ってみたはどうかというと、ミリオン動画はひとつもなく、一番多いものでも【galaxias!】galaxias!踊ってみた【いとくとら Ver.】の63万5千回である。ただこれはこの曲をリリースしている音楽レーベルU/M/A/A ch. (ユーマチャンネル)の投稿によるものであり、企業が音楽プロモーションとして行っている、いわゆる「プロの犯行」である(手取りとしては22万円ほどになるが、その広告効果はともかく動画自体の「売り上げ」としてはその金額はかなり少ないと言える)。これは先ほどから問題にしている「投稿者個人にどれだけ投稿意欲を与えるか」という問題とは違うので、ここでは論じない。その次に再生数が多いのが人気踊り手みうめ投稿による【踊り手5人で】MERRY GO ROUND 踊ってみた【√5】の56万3千回である。のちに同じメンバーでギルティ†ハーツとしてデビューすることを考えるとこちらもほとんどプロの犯行だと考えられるが、強いてここでこの動画の獲得できる金額について考えてみると、以下のような分析となる:仮にこの動画が換金されると、およそ20万円弱となる。それをさらに5人のメンバーに等分に分配した場合、1人あたり4万円弱となる。同カテゴリ内でもっとも人気のある踊り手達5人に対して、はたしてこの金額はどうなのだろうか?おそらく実際には動画撮影のためにスタジオ代や衣装代、交通費など諸々の費用がかかっているはずであるし、事前の練習などの時間・手間暇を考えれば、これはあまりにも低いように思われる。歌ってみたでプロではない人気歌い手がひとつの動画だけで60万近くを稼いでいるのを考えると、カテゴリ人気トップレベルの5人が集まった動画に対する金銭的対価としてはとうてい納得できるものではないだろう。

注) 先日(2/19)の公式生放送ニコニコ『クリエイター奨励』新発表~現代の絵師が生計を立てるには?~の中で運営から発表されたデータによると、右の図のように昨年10ヶ月間に金額を受け取ったユーザー約4千人中、累計で1,000万円を超えた者(つまり月あたり100万円以上)は3名なので、4月より1名少なくなっている。また月50万円以上が4名、月10万円以上も56名いることがわかる。昨年の年間うp主ランキングの結果から推測するに、これらは有名ゲーム実況者・歌い手・ボカロPらであると思われる。


親作品としての振付本家
踊ってみたカテゴリにおいてクリエイター奨励プログラムを考える際にどうしても外せないのが、このカテゴリ特有の「振付本家へのリスペクト」である。同プログラム導入以前まではコメント欄においてリンクを貼ることによってそれがなされていたが、開始以降はそれに加えて動画投稿者がその振付本家を親作品に設定するようになった。同プログラムでは親作品に設定されると設定した子作品の人気度に応じてその親にもある一定の割合でスコアが付与される。よって自分の振付がたくさんの投稿者に踊ってもらえればもらえるほど、親としてたくさんのスコアをゲットできることとなる。ただここでも運営はその子作品から親作品へのスコアの付与率・基準等をいっさい公開しておらず、またユーザーとしてそれを公開している人も筆者の知る限りいない(2chで何度か報告されてはいるがどれもあいまいで、それを裏付ける数字も示されていない)。筆者自身の動画のいくつかもなぜか親動画として他の動画投稿者から設定されているのだが、それら子作品からスコアが付与されたことは未だかつてない。また逆に毎回動画を作るにあたって筆者はそこで紹介する動画をすべて親作品として設定しており、今までに計400作品以上を設定してきたのだが、それらの動画がその後多少なりとも(おそらくは多くても数円程度だろうが)子作品である筆者の動画から親作品としてスコアを付与されたということについてはいっさい耳にしていない。よってここでは具体的な数字による想定がまったくできないのだが、ひとつ言えることは、振付本家として親作品に設定されていることにより大きなうまみを得ていそうな踊ってみた動画はおそらく思われているほどはないだろうということである。唯一の例外は【踊ってみた】ハッピーシンセサイザ【めろちん】である。コンテンツツリー 子作品数 ランキングによると、この動画は昨年8月の時点で子作品数上位100位に踊ってみたカテゴリから唯一ランクインしている。ニコ動全体では30番目の子作品の多さ(528)を誇り、半年後の現時点ではさらに多くなっていると思われる。これらの多くの子作品から得たスコアに加え、さらにこの動画自体が常時カテゴリランキング入りしていることから、この動画自体の再生数からも月々一定の割合でスコアが付与されていると思われる(同プログラム開始以前に投稿された動画でも2011年12月以降同プログラムに登録した場合、その登録した日からの再生数などがカウントされる)。一方でこの作品については、親作品へのスコア付与には一切関係してこない、同作品から見て孫作品にあたる動画も1,736にのぼっており、ハッピーシンセサイザを踊っている動画でも必ずしもめろちんの動画を親作品にしているわけではない場合が実は多いであろうことが伺われる。また踊ってみた動画の中には実際に動画の中で使用している音源をその親作品として設定している場合も多く、必ずしも常に振付本家が親設定されるわけでもない。また子作品数2,300以上(2012年8月時点)を誇る千本桜PVなどのように歌ってみたや演奏してみたなど他のカテゴリへの広がりもなかなか見込めないので、仮に振付が一時的に流行ったとしても、継続的にはそれほど大きな見返りは期待できないだろう。(注)

注)ただMMD動画へと子作品が広がる可能性はある。振付動画(ここでは仮にAとする)があるMMD動画(B)のトレース元になる場合である。ただその場合もAはBには親作品として設定されるだろうが、Bのモーションを使った他のMMD動画群(C)はたいていBを親作品として設定するので、結局AはそれらCから親設定されることはほとんどないのが現状だろう。

「お金がもらえる」ということ
一番初めにも述べたように、現時点において少なくとも踊ってみたカテゴリ内においては、クリエイター奨励プログラムはそれによる金銭的対価をあてに動画を製作・投稿できるようなものではないということが以上の考察である程度わかったと思う。勘違いしないでほしいのは、筆者はこのプログラムを決して批判しているのではない。むしろこの画期的なプログラムの導入が発表されたとき、そのビジネス上の大きな決断に心から拍手を送った1人である。「クリエイターが『ご飯が食べられるように』ならないといけない」というドワンゴ側のプログラム導入理由は、一方でYouTubeのパートナープログラムに対抗せざるを得ない局面にあったとはいえ、個人的にも100%賛同する。「最終的にはニコ動でコンテンツを作るだけで、ある程度の生活がまかなえるような、そういう経済圏を作りたい」という川上会長の目指す目標に到達するのはまだまだ先の話だろうが、ニコ動の活動をきっかけに様々な分野でプロのクリエイターやパフォーマーとして活躍している人はすでに数多く見られる。なによりもほんの少しのお金でもそれが一種の潤滑油となってユーザーが動画を制作し投稿しようと少しでも思うようになるのなら、それはユーザーとドワンゴ双方にとってこのプログラムがうまく機能し始めている証拠だろう。

コメント

ヤシロミ
No.1 (2014/02/21 12:31)
素晴らしい記事です。

僕もこのプログラムには賛成です、
すでにニコニコで活動している踊ってみたの人達、
またはこれからなんらかの活動をしようとしている人が人気相応の
報酬を受け取るのはある意味当然のことだと思いますから。
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