博霊饅頭即売所

東方SS 自らの役割

2015/11/29 21:25 投稿

コメント:2

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※この作品は東方Projectの二次創作作品です。独自設定キャラ崩壊その他ご注意ください


 短い秋も終わりに近づき、吹き抜ける風が冷たくなってきた頃。河童たちの住む玄武の沢付近が、夏のような賑わいを見せていた。
 今日は河童が沢の近くで大きなバザーを開いている日。彼らと交流のある妖怪たちはもちろん、興味本位で恐恐とバザーを見に来た人間たちの姿も見える。もっとも、妖怪たちはバザーを見るのに夢中で人間のことは気にも留めないようだ。

 バザーにまた、新たな客が一人やってきた。命蓮寺に住む舟幽霊、村紗水蜜だ。水のあるところなら大抵の場所を行動範囲としている彼女は、当たり前のようにこの沢にもよく来ていて河童たちとも顔見知り。今日も知り合いの河童に、「いい物を作ったから見に来なよ」と誘われたのだ。
 このバザーは基本的に河童たちが作ったものが売られているのだが、それとは別に彼らが幻想郷各地で拾ってきたものも売られており、外の世界から流れてきたものも珍しくなく、そこから発想を得ることが多い河童の作品は難解なものが多い。どんな珍品を見せられるのだろうかと思いながらバザーを訪れた村紗は、肝心の自分を誘ってきた河童を探して会場内を歩きまわる。

 とあるスペースの前で立ち止まって品物を見ていた少女の後ろを通ろうとした時、ちょうどその少女は買い物を終えたらしく、店主にお礼を言って歩き出した。タイミングが悪く村紗と少女が衝突。村紗は片手で持っていた柄杓を落としてしまった。

 
「おっと」

「あ、すみません。私が急に動いたから……」

「大丈夫大丈夫。こういうイベントじゃよくあることだしね」


 村紗は落とした柄杓を拾って少女に笑いかけたが……


「あ」

「す、すいませんすいません!」


 落とし方が悪かったらしく、持ち上げた柄杓は持ち手の半分ほどでポッキリと折れていた。
それを見た少女が顔を真っ青にしてさらに謝る。少女の必死に謝る姿が不憫に思えて村紗は優しく声をかける。


「まあまあ。よく言うじゃない、形あるものはいつか壊れるって。この柄杓もだいぶ長く使ってるものだから仕方ないって。寿命だったんだよ」

「……そうですね。その柄杓の寿命は終わってしまったんですね。きっと私も終わってしまうんです。終わりかけの秋と一緒に……」

「いや、何いってんの?」


 とんでもない方向に飛んでいった彼女の思考を戻そうとツッコミを入れる。彼女はハッとした後気を取り直し、「す、すみません。柄杓は私が新しい物を手に入れます。だから許してください」と言った。


「いや、だから別に怒ってないって」

「ほ、ほんとですか」

「ほんとほんと」


 村紗は呆れながら溜息をつく。割と面倒な人にぶつかってしまったようだ。


「でも、柄杓のお詫びは必ずします。私、秋静葉って言って、一応秋の神様やってます」

「え、神様? やたら腰が低い感じだけど」

「だって……秋の神様ですよ? 一年で一番短い季節です。しかも私は紅葉の神。秋の中でも特に短い、終わりを象徴してる神様ですもの。なのに態度が大きかったらおかしいでしょう?」

「うわ……ネガティブ」

「いえ、良いんです。私は終わりの象徴ですから。終わりは後ろ向きなものですから」


 そんなふうな成り行きで村紗と少女……静葉は一緒に行動を始めた。村紗としては謝罪も受けたし十分なのだが、静葉は頑として「新しい柄杓を見繕うまで離れません」と後をついてきた。
 バザーに柄杓が売ってなかったらどうするのだろうと考える村紗を知ってか知らずか、静葉は左右に目を凝らして柄杓を置いている河童がいないかと探しまわっている。
 村紗は、彼女がなぜこんなに必死なのだろうかと考えた。さっきまでの言動を考えると、彼女は自分に自信がないようだ。


「なあ、あんた紅葉の神様なんでしょ。ってことは単にこの時期にいるってだけじゃないわけだ」

「ええ。そもそも紅葉は私が起こしているものですから。木に力を送って葉の命を燃やし、冬に枯れる前の最後のひとときに華を添える。それが私です」

「へえ。綺麗じゃん」

「綺麗は綺麗なんですけどね。秋の最後ってのが問題で」

「うん?」

「秋になって作物の収穫とか筍とか栗とか出てくると皆嬉しそうな顔するんですけど、私が紅葉を起こすと、もうすぐ寒い冬が来るんだ~って遠い目をなさる人間達が多くて……。私だって頑張って木々に華を添えようとしてるのに、皆寂しそうな顔するから」

(なるほど……自信失くすわけだ)

「私の役割って何なんだろうって、私がやってることに意味はあるんだろうかって考えてしまって……」

「馬鹿だなぁ」

「……え?」

「自分の役割があるなら、誰に何言われようと何思われようと続ければいいじゃん。大体、そんなこと行ったら妖怪の大半が存在意義失くすよ」

「それはそうですけど……」

「私からしたら、ちゃんとした役割があるだけで羨ましいね」

「なんでですか?」

「私って舟幽霊なんだよね。海の水難事故で亡くなった人の幽霊で、海で水難事故を起こす念縛霊」

「舟幽霊……ですか」

「そんで私の役割ってのは海に出た人間を水難事故で溺れさせることなんだけど、あ、もちろん幻想郷ではある程度自重してるよ。でもほら、幻想郷に海って無いじゃん」

「ないですね」

「水があればどこでも水難事故ぐらい起こせるから良いんだけど、やっぱり場違い感というか浮いてるっていうか。これは私がやることなのかって感じがするんだよね。川とか湖担当の舟幽霊とかいるかもだし」

「……」

「私と違ってはっきりと自分の役割自覚してるならさ。自信持って好きにやりなよ。神様なんだからヘコヘコしてないで、”私が山を紅く染めてるんだぞ、すごいだろ!”って感じでいなよ。ほら、紅魔館の吸血鬼とかに憧れの目で見られるかもよ」

「ふふふ……そうですね」


 静葉は村紗の言葉に笑顔を浮かべたが、やがてまた暗い雰囲気を少し覗かせる。


「でもやっぱり、神様なら慕われたいですね。紅葉を起こして人間たちに暗い顔をされるならやめたほうが……」

「なに言ってるの。幻想郷にいるのは人間だけじゃないでしょ」


 そう言って村紗が指差したのは、バザー会場の横。バザーの賑わいに便乗する形で妖怪たちが行っている、紅く染まったモミジの葉をみながらの宴会。


「少なくともあそこにいる奴らは紅葉を見て楽しんでるよ。暗い顔のやつは見当たらないね」


 静葉は少しの間宴会風景を眺めていたが、ふと何かに気づき、クスッと嬉しそうな笑みを顔に浮かべた。


「……ほんとですね。私一人で勝手に悩んでたみたいです。ありがとうございます。ちょっと自信が持てました」

「ま、神様なら人間に慕われてなんぼかもしれないけどさ。幻想郷は妖怪と人間が共存する場所なんだから、片方に嫌われてるくらいじゃなんとも……」

「いえ、人間に嫌われてるっていうのも、案外思い違いかもしれないです」


 そう言って静葉は宴会をしている会場の中央近くを指差す。村紗はそこに目を向け、思わず小さく吹き出した。


「ははは。あいつらはあいかわらずだねぇ。たしかに、人間に嫌われてるってのも疑わしいもんだ」


 宴会の中心には、霊夢や魔理沙、早苗といった、人間代表とも言える人たちが極自然に混じって一緒に騒いでいた。恐る恐るバザーを見に来ていた少数の人間たちも、宴会の熱に誘われたように端っこの方でお酒を飲みながら紅葉を眺めている。


「ずっと後ろ向いてたら気づきもしなかったです。ありがとうございます、舟幽霊さん」

「あ、そういえばまだ名乗ってなかったね。村紗水蜜。いつもはそのへんの水辺か命蓮寺にいるよ」

「そうですか。ではまた、お礼も兼ねてお寺に秋の名物をたくさん持って行きますね」

「お、ありがたい。あそこ精進料理ばっかりでちょっと飽きてきてたんだよね」


 二人は笑い合いながらもう少し一緒にバザーを見て回り、柄杓のことは気にしなくてもいいからと静葉を納得させて別れた。





 ちなみに、村紗が呼びだされた河童の元に行くと「全自動水汲み柄杓」などという奇妙な機械を見せられたが、丁重に断った。水は自分で汲んでこそだろう。


終わり
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恒例のツイッターお題募集SS 今回のお題は「紅葉と海」
オリジナルで書こうかとも思っていたけれどもアイデアが浮かばず、ならば東方なら何か浮かぶかもと考えた結果、それぞれを代表するキャラ同士のマイナー絡みとなりました。


でも結構上手く纏めれたと思うんだ(´・ω・`)
(´・ω・`) ←の汎用性の高さ便利。


今回募集したお題達の中で一作ぐらいオリジナルを書きたい……



コメント

HRK
No.1 (2015/11/30 00:47)
いいですね。なんというか、こういう「全然違う者同士がお互いの事を理解する」みたいな話、個人的には結構好きです^^楽しく読ませていただきました。ありがとう!(あと、最後のオチも地味に面白かったw)
博麗饅頭 (著者)
No.2 (2015/11/30 19:15)
感想ありがとうございます!
良いですよね、接点のなかった二人が分かり合う瞬間というか、不仲だったのが解消するきっかけにもなりうる素晴らしいシチュエーションです。
これからも楽しませられるよう頑張ります!
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