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博霊饅頭即売所

オリジナルSS 弾丸VS剣戟

2015/10/19 00:00 投稿

コメント:4

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※オリジナルSSです。単発作品なので前回や続きはありません



 青々とした葉をふんだんにまとった木々が鬱蒼と生い茂る森のなか。地面から大量に生えた雑草をガサガサと音を鳴らしてかき分けながら疾走する影が2つ。前を走っているのは、見た目二十歳前後の青年。黒の短髪で、着ている服は動きやすそうな茶色の上下。彼は不規則に並んだ木々の間をジグザグに動きながら、時々首だけを後ろに向けて、自分を追ってくるもう一人の人影の位置を確認していた。どうやら追われているらしい。そのまま幾ばくか走った後、木の間隔が少し広くなっている場所に差し掛かったところで体ごと振り返り、バックステップで移動を続けつつ腕を追っ手の影に向けて伸ばす。

「ライフル弾丸(バレット)!」

 青年がそう叫ぶと、伸ばした腕の周囲に突如、金属の塊が複数出現した。サイズは手のひらに収まる程度の長細い円筒形。先端が細くとがるような形をした、弾丸と火薬を金属で覆った近代兵器……ライフル銃の弾薬である。
 弾薬は出現した直後、銃の引き金を引いた時のような発砲音を響かせて先端の弾丸を射出。空の薬莢を空中に置き去りにして、高速の弾丸が追っ手の影に迫る。追っ手は青年が振り返った時点で攻撃を予測していたらしく、射出よりも早く横に回避行動を取っていた。長い髪を翻しながら弾丸をギリギリで躱した人影は、横から回りこむように青年に接近する。木の葉の間から差し込んだ陽の光が追っ手の姿を照らす。青年と同い年ぐらいに見える少女だ。動きやすさを重視した緑色の服に長い茶髪。一見どこにでも居そうな容姿だが、青年に接近したあと彼に向けて振り降ろされた右手には、その見た目と釣り合わない抜身の刀が握られていた。

「ふっ!」

 青年は振りぬかれた刀をなんとか回避。と同時にバックステップをやめて前に転がるように
跳ぶ。後ろに下がっていた青年を追っていた少女は勢いを止められずにそのまま青年と反対方向へ。結果再び距離を取ることに成功した青年が、再び弾薬を空中に出現させて少女に発砲。空中に置き去りになった薬莢はどういうわけか、地面に落ちる前に初めから何もなかったかのように霧散した。
 少女は青年に距離を取られた後、動きを止めることなく再び横に移動。後ろから飛んで来る弾丸を回避し、青年との間に木を数本挟むような立ち位置に移動する。
 お互いに、相手の動きを知っている位置取りの仕方。二人が戦うのは初めてではないようだ。

「くそ……やっぱ場所が悪い。こうも遮蔽物が多いとやりづらいぜ」

 青年は息を吐きながら呟く。最初に走っていたのは、できるだけ木が少ない場所を探すためのようだ。今二人がいる場所は周りに比べ木の本数は少ないが、それでも依然森のなか。射線が通っているとは言いづらい。

「ふふ。今回は私が有利みたいね。今日こそ仕留めてみせる」

 少女の余裕のあるセリフが聞こえ、直後、ポンッと空気が抜けるような音がした。少しして、何か重いものを地面に落とす音がしたあと、少女が木の裏から青年に向けて飛び出す。左手にはどこから取り出したのか、先ほどの刀の他に少し小ぶりな両刃の剣が握られている。
 青年は短く息を吐き、空中に弾丸を複数生成して片っ端から撃ちこむ。先程よりも小さな、ハンドガン用に似た弾丸。先の弾丸よりも速度が遅く、当てるためというより回避行動を取らせることで動きを制限しようとする、牽制の撃ち方だ。
 虚空に生み出した弾丸を発砲しながら、常に少女から一定の距離を保って移動する青年。少女は弾丸を躱したり剣の腹で弾いたりしながら近づこうとするが、時折青年が織り交ぜるライフル用の弾丸に注意をそらされて上手く接近できずにいる。

「毎度毎度ちょこまかと……」
「悪いな。持久戦が俺のやりかたなもんで」

 悔しそうな表情をする少女と若干余裕のある青年だが、地形が悪い。青年の放つ弾幕は木々に邪魔されて空白が多く、少女はその空白を縫うように動き、少しづつではあるが二人の距離は縮まっている。段々と青年の表情に焦りが生まれる。

「ちっ。どうするか……」

 青年が少し気を逸らしてしまったタイミングで、少女が動く。弾丸が何発か肌を掠めるのを
無視して、無理やり青年との距離を一気に失くす。

「しまっ……!」

 少女の手で振るわれた刀を、手元に出現させた弾丸で横から撃つ。金属音と同時に刀の太刀筋が僅かに逸れ、青年は肩を掠めるだけで剣戟を回避。すぐに再び距離を取ろうとするが、

「させない!!」

 少女が右手の刀を手放し、懐から水の入ったペットボトルを取り出す。それを空中に放り、左手の剣で叩き切る。ペットボトルが砕け、中の水が溢れる。
 直後、飛び散った水が突如収束。数本の大振りのナイフへと変化し、そのまま青年へと殺到する。
 青年は自分の右手にフッと息を吹きかけ握りこむ。そして飛んでくるナイフに向かって右手を振るう。まるで、握った刃物でナイフを叩き落とそうとしているように。

「斬撃弾丸(ブレイド・バレッド)!!」

 青年が振るった腕の軌跡をなぞるように大きな金属の塊が出現した。
 斬撃を形で表すならこんな感じだろうなと思わせる、半月型のいびつな巨大弾薬。先程までの発砲と同じように火薬が炸裂する音が響き、半月型の塊は高速で前方に射出。ナイフを弾きながら突き進み、そのまま少女へと斬撃型の弾丸が飛ぶ。

「防御刃(ブレード・サークル)!」

 少女は再びペットボトルを取り出し、蓋を開けて中身の水をあたりに撒き散らす。飛び散った水は先ほどと同じように収束し、巨大な円形の、およそ実用には適そうにない歪な刃物を創りだす。歪な弾丸が歪な刃物に阻まれ歪な金属音を鳴らして互いを弾き飛ばす。あらぬ方向に飛んでいった弾丸は先の空薬莢のように霧散し、弾き飛ばされたナイフや刃物は、バシャッと水しぶきを立てて地面を濡らす。辺りには傷ついた木々と二人の姿のみになる。




 彼らは『創造者(クリエイター)』と呼ばれる存在。自然物質を人工の物質に創り変える力を持った異能力者。




 青年が長く息を吐くと、彼の正面に再び弾薬の群れが出現する。彼は「二酸化炭素を弾薬に変える」創造者。動き回りながら戦うのは相手と一定の距離を保つのと同時に、常に呼吸を続けて弾丸の素を周囲に溜める役割も持っている。
 少女は濡れた地面に手をつき、土に吸われた水分を集めて右手に刀を、左手にナイフを数本生成して構える。彼女は「水を刃物に変える」創造者。何も持っていないように見えて、懐のペットボトルを使って何十本もの刃物を作り出す暗器使い。

 二人は互いに仕掛けるタイミングを見計らい、数瞬の膠着状態になる。そして青年が生成した弾薬が重力に引かれ、落下を開始した直後、青年が動く。弾丸と二酸化炭素がつめられている状態で空中に生成した弾薬。その内部の二酸化炭素を、”着火した状態の”火薬に作り変え、炸裂によって弾丸を発砲。少女は上に跳んで飛来してきた弾丸の群れを回避。木の上に着地して青年に斬りかかろうとしたが、それを読んでいた青年がすでに弾丸をこちらに向けているのを見て予定変更。横に跳んで追撃の弾丸から逃れ、ナイフを投擲。青年はバックステップでナイフを躱し、懐からサブで持ってきているハンドガンを出して連射。少女が木の影に隠れたため、青年は射撃をやめて弾倉を入れ替える。
 すると、隠れている少女から声がかかった。

「実銃使うなんて珍しい。息できないぐらい疲れちゃった?」
「うるせー。こうも木が多いと二酸化炭素ほとんど光合成で吸われちまうんだよ。お前がさっき木に水あげてたから余計に」
「あら、ラッキー」
「そういうお前も、わざわざ一度使った水吸い上げたってことはペットボトルは弾切れか?」
「さあ? ブラフかもしれないよ?」
「お前そんなことできる性格じゃないだろ」

 軽口を叩き合いながら、次で決まるかなと青年はおぼろげに考える。

(本来水がなくなるまでの短期決戦向きの彼女に、持久戦向きの俺がここまで粘られてんだから、戦う場所ってのは重要だな。覚えとこう)

 青年は思考をやめて、最後の邂逅に備える。短く呼吸を繰り返して二酸化炭素を辺りに作る。光合成で吸われる分使えるのは溜めた中の一部だけだろうが、それでもやりようはある。
 少し間が空いた後、少女が木の陰から勢い良く飛び出してきた。また地面から水分を取り出したらしく、ナイフを投げた後の左手に新しい刀が握られている。二刀流だ。

「はぁ!」

 少女が青年に急接近し、両手の刀を振るう。何度も戦っている青年はある程度彼女の太刀筋を把握しているため、動きを読んで弾丸を刀に当てて軌道を逸しながら、なんとかかわし続ける。弾丸による中距離戦が得意な彼が、わざわざ少女の鋭い太刀筋に冷や汗を欠きつつギリギリの回避を続けるのには、もちろん理由がある。少女もそれを分かっているため、その”準備”が整う前に決めようと全力で剣戟を放つ。二人は流れるように動き続ける。刃が閃き、弾丸が光り、金属音が響く。弾丸と剣戟の不協和音が森に広がり、やがてそれも終焉を迎える。
 唐突に、青年がパチンと指を鳴らす。

「俺の勝ちだ。


『鳥籠』





 辺りに充満しているのは、二人が動き続けて激しく呼吸を続けたことにより生成された、大量の二酸化炭素。それらが一斉に弾丸へと変わる。360度全方位から少女を取り囲むように。
 青年の接近戦における切り札。ギリギリの回避をひたすら続けた後に使用できる大技。
 決まったと、青年は思った。今日も俺の勝ちだ。と。
 それを見た少女は、「ふふふ」と笑って青年に言葉をかける。

「運動した後に出来るのは、二酸化炭素だけじゃないんだな~これが」

 次の瞬間、ズブリと、嫌な感触が青年の体に走った。

「……あれ?」

 疑問に思い、青年は自分の腕を見た。そこには、自分の腕に生えるようにして皮膚を突き破る、刃。刃の生えた部分から、赤い血がどろりと流れる。
 ポタポタっと、見ていた腕に血が落ちてきた。どこから落ちてきたのだろうと考え、ああ、俺の頬からかと、嫌に冷静な頭で考える。
 青年の冷静な頭に、少女の声が響く。

「激しく動けば当然汗が噴き出る。汗は水分なんだから、当然私なら刃物に出来る。大変だったんだよ? 離れた場所の水にも能力行使する練習。いつもこれやってるあんたほんと凄いわ」

 少女は笑いながら、自分がやったことの解説をする。こいついつの間にそんな練習を、と思いつつ、「俺の負けか」と呟く。


 ブー!


 頭のなかにブザーが鳴り響き、景色が一変する。
 草木が生い茂る森のなかから、突如として白い壁に囲まれた、大きなドーム上の建物へ。青年の体を覆っていた刃物は水へ戻り、流れていた血は霧散した。傷は全く残っていない。
 拍手の音が聞こえた。音の方へ目を向けると、一人の女性がやってきた。
「酸素を仮想データに創り変える」力を持つ、この訓練用施設の管理者。ステージデータの創造からダメージ判定、勝敗決定、その他演出まで全てやっている凄腕の創造者。

「お疲れ様~。今日も中々のバトルだったじゃない。二人共最初の頃とは比べられないぐらい強くなってるわよ」
「ありがとうございます」
「今日の勝負で……514勝と310勝だったかしら?」

 ちなみに、514勝が青年側である。二人はいつもこの施設で模擬戦をしている。創造者が集まって形成している組織のパートナーであるため、互いに競いながらの特訓だ。相性の関係で青年が勝ち越してはいるが、二人共組織内ではかなりの上位。実力にそれほどの開きはない。

「互いに切磋琢磨して強くなる二人……良いわ。やがて二人は仕事以外でも互いをパートナーとして認め合うのよ!」

 勝手に盛り上がっている管理者を置いて、青年は少女に声をかける。

「おつかれ。びっくりしたぜ。あんなのいつ練習してたんだよ」
「いつまでも負ける要素を放っておくわけ無いでしょ。言わなかったのは……単にあなたにいっぱい食わせたかっただけよ」
「さいですか……。俺もまだまだ頑張らなきゃな~」

 二人は並んで施設を後にする。少女が新しく出来るようになった戦い方でどんな連携ができるかを話し合いながら。二人は互いに力を高め合い、やがて世界トップクラスまで上り詰めるのだが、それはまた別のお話…………。




終わり
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どうも、博霊饅頭です。

どうでしたでしょうか。なんかバトル物書きたいと思ってぐわわ~と書き上げました。
最後のまとめはちょっとちょいやっつけな感じになってしまいましたが、出来る限り頑張りました。
単発なんで続きを書く予定はないです。

創造者(クリエイター)の設定はどこかで使うかもですが



コメント

博麗饅頭 (著者)
No.2 (2015/10/19 07:19)
感想ありがとうございます! 勉強になるとか、そんなこと言われたら照れるじゃないですか(*´∀`*)
酸素が薄くなる……そこまで考えてなかった(゚Д゚;)
詰めが甘いというか考えが浅いというか。酸素じゃなく窒素とかのほうが良かったかなぁと反省。
まだまだ構成の段階で直せそうなところが多そうです。精進します!
アレグラ
No.3 (2015/10/22 23:53)
執筆お疲れ様です。
バトル物書けないから羨ましい……とかいうのは置いといて。
空気中のCO2とペットボトルの水、変換させて武器にするのは面白いと思います。
疑問点としては、空気中の水(蒸気)は刃に変換出来ないのかなーと。それ出来たら太刀打ち出来るのかは分からぬ。
博麗饅頭 (著者)
No.4 (2015/10/23 00:30)
コメントありがとうございます!
空気中の水分に関しては単純に湿度とか本人の鍛錬とかによるでしょうね。初めからそこまでできたらチートですw

霧の中や雨天、海の上なんかでは容易にできるでしょうね。今作では森の中……出来るかどうか微妙なところでしょうか
使うとあっさり勝負決まっちゃいそうなんで今回は使いませんでした
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