博霊饅頭即売所

東方SS  狼と楓1

2013/03/22 14:43 投稿

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妖怪の山。頂上に大きな神社がそびえ、天狗と河童が静かに暮らしている山の、森の中。風の音と木々の揺れる音、川のせせらぎにまじり、パチン、パチンと、木を叩く音が響いている。

山の合間を流れる川の脇、小さな石が多く転がる水辺で、二人の天狗と河童が、将棋をしている。白い長髪に犬のような耳を覗かせる少女と、青い髪で緑のカバンを背負っている少女だ。二人は向い合って将棋盤をにらみ、交互に駒を打ち合っている。

「よし、王手!」
「うー・・・このまま粘っても変わらないかな・・・投了するよ」

どうやら、決着がついたようだ。青い髪の少女が投了を宣言すると、白髮の少女の耳が嬉しそうに揺れる。耳と同じ、犬のような尻尾も左右に揺れている。その毛の色から、耳と尻尾が犬よりも狼に近いものだと分かる。

「にとりに勝つなんて数日ぶりだね。楽しかったよ」
「そう? 椛(もみじ)が楽しかったならまあ、良いか。それにしても、なんで負けたんだろ? 途中までは勝てると思ったんだけどなぁ・・・」

青髪の少女、にとりはそう言って、駒を初期位置に並べ直し、パチパチと駒を動かし始めた。今回の棋譜をなぞっているようだ。

「うーん・・・やっぱり46手目で桂馬じゃなくて角をこっちに・・・いや、68手目の後で飛車を取られたのが失敗かな・・・」
「よく覚えてるねー。そんな風に動かしてたっけ?」

にとりとは違い、白髮の狼耳少女、椛は棋譜を覚えていないらしい。自分の打った棋譜を人ごとのようにぼんやりと眺めている。彼女が勝てない理由の一つだろう。
にとりが再現する棋譜を眺めていた椛だが、ふと彼女の耳がピクッと動いた。ほぼ同時に彼女は顔を上げ、山の麓の方を見る。それに気づいたにとりが、椛に話しかける。

「どうかした?」
「・・・何か入ってきたみたい。天狗じゃないね。河童でもない。
・・・ちょっと行ってくるね」
「ん。頑張ってねー」

椛は、近くに置いてある剣と盾を取り、ひらひらと手を振るにとりに背を向けて地面を飛び立った。






辺りを警戒しながら麓の方に向かって飛んでいる椛。先程までのぼんやりとした雰囲気は無く、さきほど聞こえてきた不審な音の方向をしっかりと見据えている。

(侵入者・・・かな? 面倒な相手じゃなきゃいいけど)

上空から山の中を見据え、音のした場所に大体の当たりをつけてから、木の上に降り立つ。
木の下を覗き、音の元を探る。特に怪しい物は見つからないが、近くからガサガサと草を掻き分ける音が聞こえた。

(野良妖怪でも紛れ込んだかな・・・?)

そう思った椛だが、風にのって運ばれてきた匂いを嗅ぎ、考えが間違っていたことに気づいた。

(人間・・・? 人里のやつが神社のお参りにでも来たのか? どちらにしろ、変にうろつかれると面倒だからな)

木の間を飛び移って、侵入者の人間の前方に回りこむ。木の影に降りて体を翻(ひるがえ)し、歩いている人影の前に立ちふさがる。

「止まれ、人間! ここは天狗の領域だぞ!」
「うわっ!」

突然出てきた椛に驚き、思わず声を上げる人影。驚いて尻餅をついたのは、黒い短髪の少年。洋服を着ていることから、おそらく人里の人間では無いと思われる。

「え、天狗? ・・・あ、犬耳・・・」

彼が発した言葉に、椛は思わず叫び返す。

「犬じゃない! 狼だ! 白狼天狗だ!」
「ええ!? あ、ご、ごめん・・・そうだよね。犬の天狗なんて聞いたこと無いし・・・」

思わず謝る少年。そして立ち上がり、「はぁ~」と息を吐きながら椛を見る。

「ほんとに妖怪がいるんだなぁ。しかもいきなり天狗に会えるとは・・・結構ラッキーかも」

椛は少年の言葉で、彼が外来人だと気づいた。

「外来人か・・・妖怪がいるのを知ってるってことは、危険だってことも知ってるでしょ? 博麗神社の場所教えるから、さっさと帰りなさい」
「あ、いや。帰り方は聞いたし、博麗神社の場所も聞いたよ。いつでも帰れるなら、見て回ってからでもいいと思ってね。観光みたいなものかな?」
「変わってるね。危険だって聞いたらすぐに帰りたがる奴が多いのに」

頭を掻きながらこの人間をどうしようかと考える椛。そんな椛に、少年は名案を思いついたと言わんばかりの顔で、あることを提案した。

「あ、天狗ならこの山のこと良く知ってるよね? ここにも神社があるって聞いたんだけど、案内してくれないか?」

どうやらこの少年は守矢神社に行きたいらしい。

(勝手にうろつかれるよりマシか)

そう考えた椛は彼の神社への案内を引き受けた。少年を引っ張って飛んでいこうとしたのだが、少年がそれを拒む。高所恐怖症らしい。

「だったら山になんて来なきゃいいのに・・・」

椛はそう呟きながら、彼を案内するために一緒に山を登りはじめた。

「あ、自己紹介まだだったね。僕は楓(かえで)。よろしく」
「ん・・・私は犬走 椛」
「犬・・・」
「狼だ!」

思わず呟いた楓に、椛は怒る。苗字に犬の字が入ってるのがコンプレックスのようだ。

「ああ、ごめんごめん。でも、ふたりとも植物の名前なんだね」
「そうだな・・・ところで今更だけど、怖くないの? 私は妖怪だぞ」

その質問に楓は、何を言ってるんだとばかりに呆れた声で返す。

「いや、最初に襲われなかった時点で安全なのは分かってるし、動物好きの僕からすると、椛ちゃんの耳と尻尾が可愛くって危険だなんてとてもとても・・・」
「か、可愛いっていうな///」

突然の可愛い宣言に顔を赤くする椛。

「あと、呼び捨てで良いよ。ちゃん付けはあまり慣れてないし」
「赤くなりながら言われるとますます可愛いんだけど」
「うるさいバカ!」

さっさと先に進む椛。山道に慣れてないらしく、楓は付いて行くのに必死である。それに気づいた椛が少しペースを落とした。なんだかんだ言って、楓のことが気に入ったらしい。



                    続く
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椛のSS初めて書きましたー 
白狼天狗と外来人、この二人の登山は一体どうなるのか!? 乞うご期待!



最後の方は若干ラブコメっぽく書いてみました。他にも色々と試したいことが・・・
アドバイスとか感想もらえると嬉しいです。

次へ

追記:東方SS「狼と楓」 及び 東方紅葉録 は、更新ペースの都合上携帯小説サイトに移籍、修正しながら執筆しなおしをしております。

東方紅葉録~Day of Fantasy~

ブロマガ掲載分はキリの良いところ(東方紅葉録第3話)まで進めてありますので、修正前と修正後を比べたいという人向けに残しておきます。


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