博霊饅頭即売所

東方SS 妬ましデート

2017/10/04 14:05 投稿

コメント:2

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※この作品は東方Projectの二次創作です。


 暗く深い穴の底。湿気にまみれた岩場に、上から大きな岩が落ちてきた。岩は逆さの円錐形、目測で幅2メートルほど。落下の衝撃で地面が揺れ、あたりに積もっていた砂が舞い上がる。岩の真上には大きな縦穴が開いていて、その幅は十数メートル。落ちてきた岩は周りの岩とは明らかに材質が異なり、穴の外から降ってきたのだろうと推測できる。しかしわずかに見える空は縫い針の穴ほどに小さく、この岩がどれほどの距離を落下してきたか、それでも岩には目立った傷がないことから、どれだけ頑丈な岩なのかが分かる。
 落下の衝撃で舞い上がった砂が晴れると、岩の上から帽子を被った少女が顔を覗かせた。少女はあたりを見渡し、こちらに気づいて手を振りながら声を掛けてきた。

「やっほーパルスィ! 遊びに来てやったわよ!」
「こんにちは、天子。今日も元気ね、妬ましいぐらいに」

 岩から飛び降りて、スカートを抑えながら着地した少女……比那名居天子は、後ろの岩(要石というらしい)を消して駆け寄ってきた。

「いつも思うのだけど、もっと静かに降りてこれないの? なんで毎回毎回墜落してんのよ」
「墜落じゃないわよ。着陸よ着陸。要石は無事でしょ?」
「毎回あんなに地下を揺らされちゃ、いつ洞窟が崩れるか気が気じゃないのよ」

 とは言ったものの、巫女や魔法使い、鬼などといった実力者たちの弾幕ごっこの最中でも、この洞窟は崩れるどころか壁面にヒビすら入っていない。心配するだけ無駄だろう。私も天子も分かっているため、これはもはや挨拶のようないつものやりとりだ。
 天子が地底に遊びに来るようになって数ヶ月、彼女が能力で洞窟の壁を弄ったりした数は指の数を一息で飛び超えるほどあるが、未だどこにも問題は起きていない。

「それよりも砂煙どうにかならないの? 私が降りてくるといつもじゃない。ちょっとは掃除しないとお客に失礼じゃない?」
「わざわざ遊びに降りてくるのはあんたぐらいよ。地上からすら誰も来ないのにその遥か上空から降ってくる物好きな天人さん」
「妬ましい?」
「すごく妬ましい」
「やったー♪」

 天子は人に羨ましがられたり、嫉妬されたりするのが好きだ。彼女いわく、「天人は誰もが羨む存在。私を上に見るのが当然。好きなだけ敬いなさい羨みなさい嫉妬しなさい」とのこと。当然のことなら一々反応する必要はないと思うのだが、彼女は毎回喜ぶ。今も上機嫌に笑顔を浮かべている。たんに承認欲求が高いのだろう。上に見られたいと言っている割に、気さくに接してくるのでこちらも話しやすく、気づけば仲良くなっていた。

「それで、今日は何の用?」
「あ、そうそう。パルスィは鈴奈庵って知ってる?」

 私が遊びに来た目的を聞くと、天子はそう言ってスカートのポケットを探りはじめた。

「すずなあん? ……あー、上に行くやつらが前話してた気がする。里の貸本屋だっけ?」
「そうそう。最近そこの店主が霊夢たちと仲良くなってねー。なんか色々あって、妖魔本の取扱を始めたみたいなんだー」
「何があったら人間の貸本屋が妖魔本扱うのよ……」
「さあ? そんでもってそこで借りてきたのが……これよ!」

 そんな話をしながら天子はクルクルに丸めた本を取り出して見せてきた。借りたものになんて扱いを……と思いながら表紙を見ると、どうやら地底の妖怪が人間の雑誌を真似て書いた地底都市のガイド雑誌らしい。天子が指差しているところを見ると。

「……『地底都市スイーツ特集』?」
「そう! あの広い街のどこにどんなスイーツが売ってるか特集してるのよ! 行きましょう!」

 普段橋の周りにいることが多い私は、地底の店といえば知り合いたちと呑みに行く居酒屋か日用品関連のところぐらいしか行くことはない。知り合い達が買ってきた甘いものを貰うことはたまにあるが、自分から食べに行くことはほとんどない。しかし、興味が無いというと嘘になる。

「……いいわね。たまには足を伸ばしてみようかしら」
「よし決定! 行きましょ、すぐ行きましょう!」
「ちょ、痛い痛い引っ張らないで」

 答えた途端に天子が私の腕を取り引っ張っていこうとするので、慌てて足を動かしてついていった。





 石造りの壁と瓦で造られた建物が立ち並ぶ地底都市。地底湖から流れ出た水でできた川を中心に作られたこの都市は、川沿いに並んだ灯篭や周囲の建物から漏れる明かり、妖怪たちが岩壁に養殖させたヒカリゴケなどで明るさを保っている。都市から離れると途端に暗闇が広がるわけだが、少なくとも都市の中は地下の漆黒とは無縁だ。
 そんな地下都市の中でも、区域によって明るさの程度は異なる。住宅地はほどほどの明るさで休息の邪魔にならないようになっているし、川沿いは明るいがところどころに掛かっている橋の上は薄暗い。妖怪はやはり明るいより暗い方を好むのか、橋の上でたむろしている者は多い。商店が並ぶ商業区などは当然明るいが、その中でも飲食店が立ち並ぶ繁華街は、ひと際明るく、賑やかだ。
 そんな喧噪があふれる繁華街に足を運んだ私と天子。天子が借りてきた本を見ながら、あっちこっちのスイーツの店を回る。

「今はある程度地上との交流とか交易とかあるらしいけど……その前はどうやって手に入れてたの? このフルーツとかクリームとか」

 お店で買った桃のプリンを食べながら並んで歩いていると、天子がそんなことを聞いてきた。

「もちろん地底内で自給自足よ。街の隅の方に工業区があって、ヒカリゴケを使って植物や木を育ててる農場があるのよ。どこからか牛や豚を引っ張ってきて育ててる牧場まであるし」
「へー。そこらで売ってる日用品なんかも工業区で?」

 食べ終わった器を道端のゴミ箱に投げ入れて、手に下げた袋から桃のモンブランを取り出しながら更に聞いてくる。

「そうね。製品を作る工場もあるし、工業区じゃなくても、日用品を作ってるやつはそこらにいるわよ。一つの街として完結してるから、経済も回ってるし大抵のやつはなにか仕事してるし。まあ大抵は趣味の延長だけど。荒事が好きなやつは大抵自警団の類に入ってるし」
「パルスィは何かやってるの?」
「橋守って暇だからねー。川で魚釣って飲食店に売ってるの」
「なるほど」

 桃のスムージーをストローで吸いながら納得した顔をする天子。さっきから桃ばっかりね。いつものことだけど。
 天子は空になったスムージーの器をゴミ箱に捨て、近くの屋台に駆け寄って桃のアイスを二つ買ってきた。片方を受け取って一緒に食べ始める。

「パルスィパルスィ! このアイス桃果汁だけじゃなくて、果肉まで入ってるわよ! やったぁ」
「良かったわねー。さっきからたくさん食べてるけど、お腹痛くならない?」
「平気平気。天人の頑丈さなめないでよ」
「お腹まで頑丈なのね……頑丈さに慢心して変なもの食べてなきゃいいけど」
「流石に食べられるものしか食べないわよ」

 そんな風に談笑しながら街中を歩く。普段居酒屋以外ほとんど歩かないため、ここの景色は私にとっても新鮮だ。
 アイスを食べ終えた天子は、どこで買ってきたのか、桃をまぶしたモッツァレラチーズなるものを取り出していた。そんなのこのあたりで売ってたかしら……。





 気づけば繁華街を抜け、街の中心を流れる川沿いの道にたどり着いていた。近くに並んでいるベンチに腰掛け、川を眺めながら色々買った食べ物に手を伸ばす。ちなみに私が買ったもの以外はほとんど桃系だ。最近あった面白い話などを互いにして笑い合いながら、ただのんびりと時を過ごす。
 お互いに話の種が尽き、買ってきたものもほとんど食べ終えた頃、天子が両手を上げてグッと体を伸ばしてから脱力して微笑む。

「いやー楽しかったー。パルスィを誘って良かったわ」
「今更だけど、なんで私なのよ。衣玖さんとか霊夢とか魔理沙とか誘えば良かったんじゃない?」
「衣玖は真面目だから、人里はともかく流石に地底には付いてこないと思う。霊夢も魔理沙も、そこまで遠出はしないだろうし。なによりパルスィを誘いたかったからね」
「だからなんで私なのよ……」

 話を聞いた感じ、天子は衣玖さんを信頼しているようだし、霊夢や魔理沙とも仲がいいのだろう。自分にそれほど気に入られる要素があっただろうか。

「だってパルスィかわいいんだもん。嫉妬ばっかりしてるくせに人一倍優しかったり気遣い出来たり、周りのことよく見てるから色々知ってて話してて飽きないし」
「そ、そう……?」

 やたら褒められたけど、自分ではそんなこと思ってもいなかった。でもこの前、勇儀にも似たようなこと言われたような気もする。そうなのだろうか。
 天子はベンチに広がっているゴミをまとめて袋に入れ、近くのゴミ箱に入れて戻ってくる。

「やっぱり一回じゃ全部は買いきれないわね。また誘いに来るわ」
「結構買ってた気がするけど、足りなかったのね」
「食べ切れる量しか買わないわよ、もったいないし。何度か来れば、それだけパルスィと遊べるしね」
「いつも思うけど、正直ねー。素直に慣れるって妬ましいわ」
「うん? 勇儀に告白できないってこと?」
「なんでそんな話になるのよ!」


 私も天子と遊べて楽しかったってことよ。と、勢いでも言葉に出来ないのがもどかしい。ほんとうに妬ましい。


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10月4日は天子の日!
ということで天子×パルスィのSSです。
仲良くスイーツ巡り。俺も天子とスイーツめぐりしたい……



コメント

HRK@秋例う55a
No.1 (2017/10/05 00:03)
天子×パルスィは饅頭さんのSSでは結構おなじみになってきましたねw今回も楽しく読ませていただきました。
(桃をまぶしたモッツァレラチーズとはいったい…)
博麗饅頭 (著者)
No.2 (2017/10/05 00:36)
いつも感想ありがとうございます! パルスィがかわいいのがいけないのですよ……
そして嫉妬キャラというのが天子の目上立ちたがり欲求とぴったりなんです。
(考えるな、感じろ……)
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