博霊饅頭即売所

東方SS 天子のバレンタイン

2017/02/14 19:17 投稿

コメント:2

  • タグ:
  • 東方
  • 東方SS
  • 比那名居天子
  • バレンタイン


 天界


 年が明けて一つの月が終わり、もうすぐ春だというのに未だちらほらと白い雪が降ることもあるそんな季節。バレンタインはそんなころにやってくる。間近に迫った春を思い、桜の開花を待ち望みつつ、かとおもえば雪が降り、雪遊びに興じることができるとはしゃぎ回る。そんなどっちつかずの季節。

「そんな季節に恋愛イベントなんて、ぴったりだと思わない? 複数の異性が気になりつつどちらを取るとも決められず、どっちつかずな思いを義理チョコという名のベールに包んでお茶を濁す……。複数の異性を手玉に取って遊び回るのよ!」
「なに言ってるんですかあなたは……」

 白い雪が降り積もる幻想郷を空から眺めながら、私は散歩中に近くを通りかかった衣玖に絡んでいた。

「というわけで、はい。バレンタインの友チョコ、もとい義理チョコよ」
「……今の独白を聞いていた私にどう反応しろと。というか同性なんですが……」

 せっかくチョコを渡したのに微妙な顔をされた。まったく、人から物をもらったらまずはお礼を言うのが礼儀というものなのに。

「……おや? 総領娘様、もしかしてこれ手作りですか?」
「あ、気付いた? ふふん。あなたにはいつもお世話になってるからね」
「世話を焼かれているという自覚があって普段の言動だとしたら驚きですが……、まあ、ありがとうございます。同性とはいえ、手作りというのはやはり嬉しいですね」

 衣玖は照れたように微笑んで受け取ったチョコを大事そうに抱えた。うん、効果は抜群ね。

「ほんと? 良かった。じゃあ他の人たちにも喜んでもらえそうね。ひとっ走り行って配ってこようかしら」

 私はそう言って鞄からいくつかのチョコを取り出して眺める。数日かけて頑張って作ったものだ。みんな喜んでくれるといいのだけど。
 しかし、私が出したチョコを見て衣玖が固まってるのはなぜかしら?

「……私の目が悪くなければ、すべて手作りのように見えますが……というか配って歩くつもりなんですか」
「そりゃそうよ。みんなに渡さないと意味ないでしょ? 既製品じゃ味気ないから自分で作ろうと」
「そんな……てっきり私のだけが手作りかと……。もてあそばれた……」

 衣玖が何やらぶつぶつ言っている。手作り=本命だとでも思ったのかしら。

「いいですよー。どうせ私は総領娘様にとっては、手玉に取るおもちゃの一人にすぎないんでしょう。さっさと行って配ってこればいいじゃないですか」

 あれ!? 拗ねてる!? 衣玖が拗ねるとかすごい珍しいんだけど! なにこれかわいいじゃない!
 ううーん。眺めていたい気もするけど、あんまりゆっくりしてるとチョコを配る時間なくなるのよねー。ここで思ったより時間かかっちゃったし。

「じゃ、下に行ってくるわ。今日中には戻ってこれるはずだからお父様によろしく」
「そういえば、今から行くんですか? お部屋にいらっしゃらなかったので、てっきり朝から遊びに行ってるものだと……」
「その予定だったんだけどねー」

 失敗しちゃったなーと思いながら、私は指でほほを掻いた。

「最初に渡すのは絶対あなたにしようと思って、朝からずっと探してたのよ。思ったより時間かかっちゃったから焦ったわ」

 顔を赤くして言葉をなくす衣玖に火照った顔を見られたくなくて、私は速足で天界から地上に降りて行った。




博麗神社


 時間が無いから、居場所がはっきりしてる人から渡していこう。
 そう考えて私は博麗神社にやってきた。神社の縁側には予想通り、霊夢と魔理沙、萃香が並んでお茶を飲んでいた。ついでとばかりに三人の妖精もいっしょにお茶を飲んでいる。

「こんにちは。霊夢ー」

 声をかけながら庭に降りると、6人は各々、「よっ」とか「うぃーっす」とか「こんにちはー」とか挨拶を返してきた。妖精が一番礼儀正しいってのはいつものことね。

「ふっふっふ。今日はバレンタインよ。この天人様がチョコを持ってきてやったから、ありがたくうけとりなさい」
「はいはい。遊びに来る口実でしょ。来ると思ってたわー」

 思いっきり見抜かれてた。

「チョコかー。和菓子とはまた違った甘みだよな。私は好きだよ」
「わーい! チョコチョコー!」

 魔理沙と妖精たちは嬉しそうに受け取ってくれた。萃香は「酒に合わないのはちょっと」とか言ってたけど無理やり押し付けてやったわ。そう思って料理酒入りのチョコ作ってきたし。
 お気に召してくれたみたいでむさぼるように食べる萃香。行儀悪いのに見た目は幼女だからちょっとかわいいのがむかつくわねこいつ。

「もしかして全部手作りかこれ。すごいなー」
「変なの入ってないでしょうね?」
「お酒入りだったぞー! 天人は気が利くなー」

 三者三様に言いながらチョコを口に運び、お茶との相性について話をしている。洋菓子にはお茶より紅茶やコーヒーの方が合うと思ったけど、この人たちに言っても意味無さそうね。妖精たちはお茶とか関係なくチョコ単体で食べてるし。

「萃香のにはお酒入ってたんだって? 私のはなんだろうこれ……松茸?」
「正解よ魔理沙。それぞれ好きそうなのを入れてみたの。妖精たちは会えるかどうかわからなかったから普通のチョコ多めに作ったのを渡したけど。どう?」
「まずくはないがチョコにキノコはなー。微妙? ま、ありがとな」
「私のはなにこれ? チョコの中にもうひと塊チョコが入ってる?」
「霊夢のには、前菫子に教えてもらった、外の世界のお菓子がぴったりだと思って二重になるようにいれてみたの」
「へー。何入れたの?」
「5円チョコ」

 「私そんな金金言ってたかしら……?」と落ち込む霊夢を横目に、妖精たちからも感想をもらう。普通のチョコを渡したことになるけど、素直に喜んでくれて作った甲斐があったわ。
 そうして少し雑談をしていると、霊夢が「あっ」と何かを思い出して奥の部屋に入っていった。なにかと思って待っていると、包みを持って出てきた。

「思ったより来るのが遅かったから忘れそうだったわ。はい、天子」
「え……? もしかして、チョコ?」
「どうせ来るだろうと思ってたからね。里で売ってる既製品だけど。来なかったら自分で食べるつもりだったけど」
「よく言うよ。昨日からそわそわしてたくせに」

 口出ししようとした萃香を霊夢がにらみを利かせ、私に包みを渡してくる。

「はー……お返しをもらえるなんて思ってなかったわ。ありがとう」

 笑顔でお礼を言うと、霊夢は気恥ずかしそうに顔を背け、「気まぐれよ、気まぐれ」と言い訳をするようにつぶやいた。
 すると魔理沙が、再びチョコを食べ始めた霊夢に言った。、

「実際珍しいよな。イベントごととはいえ霊夢がこういうの事前に用意するなんて。いつもあり合わせとかで済ませるのに。私らにはないのか?」
「なんで今更あんたらに。ほぼ毎日うちにきて何かしらつまんでいくのに」
「こういうのはイベント感が大事なんだよ。なにかくれよー、チョコー」
「じゃあまずあんたがチョコ用意しなさい。そしたらお返しを用意するのをやぶさかじゃないわ」
「えー」

 相変わらず賑やかねー。と思いながら、霊夢からもらったチョコを頬張る。ビターチョコかしら。ちょっと苦みがあるのがまた美味しいわね。

「じゃ、私他のとこにも配りに行くから。また遊びに来るわ」
「はいはい。またね」






命蓮寺


 人里近くのお寺にやってきた私は、入り口で掃除をしている山彦に挨拶がてらチョコを渡し、目当ての人物の場所を聞いた。裏の方で舞の練習をしているという。
 お礼を言って裏に回った私は、彼女の姿を見つけて声をかけた。

「やっほーこころ! バレンタインだからチョコ持ってきたわよ」
「あ、天子。いらっしゃい。バレンタイン……ってなに?」

 秦こころは最近自我を持ったばかりの面霊気の妖怪。まだ人間の暦には詳しくないようだ。
 私は簡単にバレンタインについて説明した。といっても起源から話すと長くなるので、女の子が好きな相手にチョコレートをプレゼントする日、そこから派生して、仲のいい者同士でお菓子をプレゼントし合う日だという程度に。

「お菓子が食べれるなんて素敵な日だね。でも私は何も持ってないよ?」

 こころは申し訳なさそうに謝ってきた。

「別にいいのよ。私がやりたくて勝手に配りに来ただけなんだもの。それに今日じゃなくても、ホワイトデーっていうバレンタインのお返しをする日もあるのよ。お返しがしたかったら、その日までに準備しておけばいいわ。ちなみにホワイトデーは来月ね」

 なんかお返しを請求してるみたいになっちゃったかなと思ったけれど、こころは声を弾ませて、「来月ね! 私も手作り準備するから楽しみにしてて」と言ってくれた。
 チョコを食べたこころから感想を貰ったり軽く雑談したりして、そろそろ次のところに行こうかと思っていると、本堂の方から聖がやってきた。

「あら、天子さんいらしてたんですか」
「こんにちは。お邪魔してるわ」
「いえいえごゆっくりどうぞ。……あら? その包は……ああ、バレンタインですか。そういえばそんな季節ですね」
「聖さんも食べます? 会った人に渡そうと多めに持ってきてるんですよ」
「そうなんですか。ではせっかくですしいただきましょうか。他の子達には会えました?」

 聖に包を渡しながら、そういえば山彦にしか会ってないなと気づいた。

「門のとこにいた響子ちゃんだけね。こころの居場所を聞いてまっすぐここに来たので」
「あら、こころに渡すのは決まってたんですね。これからも仲良くしてあげてください」

 相変わらず母親のような人だ。衣玖と気が合うかもしれない。

「もちろんです。じゃあ私は他のところに行くので。またね、こころ」
「またねー」

 手を振りながら答えるこころと別れて次の場所へ向かう。次はどこへ行こうかな。





紅魔館


 「レミリアー! 来てやったわよ!」

 チョコにはやはり紅茶が合う。洋館に行けば便乗して飲めるだろうと紅魔館にやってきた。

「あら、天子さん。こんにちは」
「やっほー美鈴。入れてくれる?」
「もちろんです。あなたならお嬢様も拒否しないでしょうし」

 幻想郷には紅茶やコーヒーを嗜む人物が少ない。そういう人物たちは結構横につながっていて、親しかったりする。ここもその一つ。あとは地底の主とか人形師、フラワーマスター、あと外から来た風祝や女学生ぐらいかしら。そういった人たちの影響で霊夢や魔理沙もたまに飲んでるわね。
 美鈴にチョコを渡して館に入ると、どこからともなく咲夜が現れてレミリアの居場所を教えてくれた。ちょうどフランやパチュリーと集まってお茶(この場合は紅茶)を飲んでいるらしい。
 咲夜に連れられて件の部屋に入ると、門の前で呼んだ私の声が聞こえていたらしいフランが飛びついてきた。

「天子ー!」
「おっとっと。危ないわよフラン、倒れたらどうするのよ」
「えへへー」
「いらっしゃい天子。もしかして、バレンタインのチョコでも持ってきてくれた」
「正解。ちょうど紅茶飲んでるみたいで良かったわー。ご一緒していい?」
「ええもちろん。これも何かの縁ね」
「何言ってるのよ。そろそろ天子が来そうだから紅茶の準備しなさいって咲夜に頼んでたくせに」
「ちょ!! 言わないでよパチェ!」

 相変わらずねここは。見てて飽きないわ。
 私が持ってきたチョコと紅茶でお茶会を楽しみ、日が落ちてきた頃においとますることにした。ついでにパチュリーのところで何冊か本を借りていく。

「どこぞの魔女と違ってちゃんと返してくれるから大歓迎よ」

 とのこと。こんど私からも魔理沙に言っておこうかしら。

「お返しになるか分からないけど、はい。これ渡しておくわ」

 と、レミリアから何やら小箱を渡された。まあ中身はチョコである。

「お茶飲んでるときに渡してくれればよかったのに」
「そしたらフランが欲しがるじゃない。あなたに渡したくて用意したのに」

 ちょっとかわいいなと思った。





地底


 その後妖怪の山の守矢神社に寄って風祝と神二柱、遊びに来ていた小傘にチョコを渡し、続いて私は地底に降りてきていた。茶飲み友達のさとりに渡すのはもちろんだけど、途中で出会えるであろう”彼女”にも渡しておきたい。
 いつもの橋に姿が見えなかったので少し近くをうろついてみると、少し上流の畔で足を水面に付けてぶらぶらしていた。

「やっほーパルスィ」
「? あら、天子。どうしたのこんなところに」

 地底の街に行くための道からは少し逸れた場所にいるため、誰かが来るとは思っていなかったようだ。意外な顔をされた。

「あなたを探してたのよ。いつもの橋の守りはいいの?」
「いいのよ。橋の守護なんて今は殆ど形だけのものだし。それに今日はバレンタインでしょ。あそこ、男女の待ち合わせ現場にちょくちょく使われるのよね。妬ましいったらない」
「なるほど」

 妬ましいと思いつつ邪魔しないように場所を移しているあたり、いい子だと思う。

「まあ、見つかってよかったわ。はいこれ」

 パルスィにチョコの包を見せると、何やら微妙な顔をされた。

「……なにこれ?」
「チョコよ。今日はバレンタインでしょ」
「いや、なんで私?」
「いつも仲良くしてるから。友チョコってやつよ」
「……手作りじゃない。わざわざ私のために?」
「手作りは皆にだけど、ほとんどのやつは会えたら渡す程度ね。なんとなくあなたには絶対渡したかったから探してたのよ」

 パルスィはなんとも複雑な顔をして「妬む側の私が、妬まれる側になるなんて……」とか言っている。嬉しいのだけど存在意義的にどうなのだろうというような、微妙な表情。
 そう、この顔が見たかったのが理由の一つ。あと単純にこの娘が気に入ってるから。

「ほれほれ~。嫉妬の妖怪が嫉妬される妖怪になった気分はどうよ?」
「……おちょくるために持ってきたの?」
「半分」
「半分……」

 小さく笑うような顔を見せて、「ありがと」とお礼を言ったパルスィは、私が渡した包みを開ける。

「……なんで藁人形型?」
「ぴったりでしょ」
「やっぱりおちょくってる?」
「ちょっとだけ」






 その後、地霊殿を訪れて古明地姉妹とペットたちにお菓子をあげた。動物にチョコはよくないとか聞いたような気がして、彼女たちにはクッキーを上げた。妖怪にその理論が通じるのかは分からないけど、まさか実験に使うわけにもいかない。さとりに怒られてしまう。
 そんなこんなで配りたいところにチョコを配り終え、微妙に残ったチョコをその辺の氷精やら野良妖怪やらにあげて帰宅。
 んー! と伸びをして天界に帰ってきた。

「そういえば衣玖にはチョコ渡しただけで、食べるところ見てないわね。口にあったかしら」

 ふと衣玖に渡したときのことを思い出し、ふと疑問に思う。
 衣玖は、私が部屋にいなかったから地上に行っていると思った。と言っていた。ということは私の家に様子を見に来たわけだ。合鍵を持ってるはずだから別におかしくはないけど、でもたしか衣玖、今日は休みだったはずだけどなぁ。
 そう考えながら部屋に入ると、机の上に紅色の包が置いてあった。ああ、そういうことかと思いつつ、包の上においてあるメッセージカードをみた。



HAPPY VALENTINE 

        衣玖




 今日もらったお返しで、一番うれしかった。




終わり



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


バレンタイン話です。
あっちこっち動き回ってあれこれする話大好きです。一つの絡みをガッツリ書くのも好きですがね、




コメント

HRK
No.1 (2017/02/15 22:56)
ワタシニモチョコクダサイ…
博麗饅頭 (著者)
No.2 (2017/02/15 23:22)
すいません364日後からなんですよ……(´・ω・`)
コメントありがとうございます!
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事