博霊饅頭即売所

東方SS 天子の地底散策

2016/10/04 20:12 投稿

コメント:2

  • タグ:
  • 東方
  • 東方SS
  • 比那名居天子
  • 水橋パルスィ
  • 10月4日は天子の日

※この作品は東方Projectの二次創作作品です。独自設定・解釈、キャラ崩壊、その他ご注意ください。


「着いたわ! ここが地底ね!」

 いつものように暇を持て余し、退屈を紛らわせるために天界を抜け出して地上に降りた私は、いつもよりも更に下、地下に潜りこんで地底にたどり着いた。入り口の縦穴を探すのに少し手間取ったけど、ちょっと道に迷いかけたりしたけど、たまたま会った鴉天狗から道を聞いて無事縦穴の底にたどり着くことが出来たわ。

「地上の遥か上空に位置する天界とはまさに真逆、地下深くに位置するもう一つの異界、地底。ここなら何か面白いものが見つかるはずだわ」

 期待の高まりを胸の中に秘めながら、広い一本道になっている地下を進んでいく。当然地上からの光は全く入ってきていないが、地下の妖怪たちが通るためか所々にランタンやランプが置いてあり、明るいとまではいかないが壁にぶつかることがない程度の薄暗さが保たれている。よく見ると妖怪が住処にしていると思わしき横穴がちらほらと見える。

「結構人口……妖口? は多そうね。地上の嫌われ者妖怪が追いやられたんだったかしら? 他の天人から疎まれてる私も、案外こっちのほうがあってたりしてね」

 自虐的なことを思い浮かべながら苦笑いしつつ進んでいると、隅の物陰から声が聞こえてきた。

「卑屈なことを行ってる割に、随分と楽しそうね。前向きだこと」
「あら、後ろ向きになってうじうじしてるよりは建設的だと思うわよ」
「……驚かないわね。私がいるのに気づいてたの?」

 物陰に座っていた妖怪が、そう言いながらゆらりと立ち上がった。私が彼女に気づいていないと思ったのだろう。確かに彼女がいた場所は周りの光源からは岩に隠れて暗くなっていたが……

「妖気を全く隠してないんだからそりゃ気づくでしょ」
「自然にしてて流れる妖気なんて微弱なものだと思うけど……実力者なのね、妬ましい」

 まあ妖気に気付けるのは非想の剣のおかげもあるのだけれど、些細な事ね。

「さっきの独り言から察するに、あなた天人? なんでそんな人が地底に来たのよ」
「退屈だから。面白いことないかと思って」
「そんな理由で地底くんだりまで来る人いないわよ。物好きね」
「退屈は人を殺すのよ。殺されたくないから退屈しのぎにあらゆる手段を試すわ」
「そこらの妖怪よりも頑丈で長寿な人に言われてもねえ」

 妖怪は呆れたように息を吐いた。

「ちょうどいいわ。あんたこのあたりに住んでるやつでしょ。地底の道案内お願いしたいんだけど」
「あらあら。地底の妖怪は嫌われ者よ? 人気のない場所に連れていって身ぐるみ剥がされるとは思わない?」
「そういうことするやつはそんな忠告しないし、そもそも声なんて掛けずに不意打ちしてくるでしょ」
「そういう常套文句をサラッと言える対応力が妬ましいわね」
「そう妬んでばかりじゃ人生暗くなるわよ?」
「気にしないで。口癖みたいなものだから」
「で、道案内引き受けてくれる?」
「んー……まあ特に予定もないし、天人に借りを作るのもいいわね。あなたの言葉を借りて、”退屈しのぎ”に付き合ってあげる。私は水橋パルスィよ」
「ありがとう。私は比那名居天子。お察しの通り天人ね。よろしく」

 開始早々に案内人を手に入れて、幸先よく地底散策ができそうね。




 パルスィに道を教えてもらいながらたどり着いたのは、地底にある唯一にして最大の街、名前はないらしい。まあ一つしかないなら固有名詞をつける意味がないものね。
 さっきまでの地下空間とは違い、明るい光源をこれでもかと並べ、道の脇に赤い瓦をふんだんに使った和風建築が立ち並んでいる。絶えず妖怪たちの往来があり、宴会らしき賑やかな声や喧嘩と思わしき激しい音、それに付随する野次馬達の声援。人里よりも活気があり騒がしい街並みは、まるで繁華街のようだというべきか。

「嫌われ者の巣窟っていうからもっと欝々したのを想像してたけど、賑やかねえ。人間がいないからか、異形の姿を変化で隠そうともしないし。自然体で楽しんでる感じがするわね」

 額の角を隠そうともしない鬼らしき姿や、獣の耳や鳥の翼を気兼ねなく見せている動物系の妖怪。そもそも人とは似もしていない異形というべき妖怪。多種多様な人外たちが区別なく町中を歩き回っている。それこそ、人と同じ姿をしている私の方が浮くぐらいに。

「目立つって困るわぁ。面倒ごとは出来るだけ避けたいのだけど……」
「絡んできた妖怪皆返り討ちにしてるあなたが言うのか」

 私とパルスィが歩く後ろには、ナンパや金銭狙いで絡んできた妖怪たちの成れの果てが積み重なっていた。少女そのものの容姿と地底に不慣れな様子から、うっかり迷い込んだひ弱な人間とでも思われたのか、先ほどからやたら絡まれる。みんな返り討ちにしていたら、後半は逆に腕っぷしに自信のある妖怪が腕試しにと勝負を申し込んでくるほどだ。

「っていうか、強いのね。正直驚いたわ。鬼の拳直に喰らってピンピンしてるし」
「天界の桃食べてると丈夫になるのよ。それに、前やり合った鬼に比べれば全然だったし」
「? 地底以外で鬼? それってもしかして……」

 パルスィは何か心当たりがあるようで聞こうとしたようだが、それよりも先に私に声をかける相手がいた。

「強いねあんた。しかも見たところ、あれでもまだ本気じゃないと見た。ちょいと私と戦ってみないか?」
「ん?」
「あ、勇儀じゃない」

 声をかけてきたのは、周りの妖怪に比べてひときわ目立つ妖力をもった鬼らしき人物。片手に杯を持っていて中には酒らしき液体が入っている。

「ようパルスィ。面白そうなやつ連れてるじゃん。なんで私に紹介してくれないのさ」
「この子がこんなに強いの、私もさっき知ったからね。そもそも今日会ったばっかりだし」
「ほう、お前が初対面の奴と一緒に行動するとは……」
「なによ。別にいいでしょ」

 パルスィの知り合いらしく、二人は二言三言言葉を交わしてから、鬼の方が話しかけてきた。

「さっきの会話ちらっと聞いてたが、あんた伊吹萃香と戦ったことあるのか?」
「あら、萃香の知り合い?」
「旧友ってやつさ。同士って言ってもいいかな。あいつと戦えるような奴だっていうなら、ぜひ手合わせ願いたい」
「いいわ。そこらの奴より手応えありそうだし、戦ってあげる」
「いいねえその上から目線。自信がある奴のセリフだ。へし折ってやる」
「額の角が折れないよう気を付けることね」

 互いに軽口をたたき合い、少し距離を取って構える。強そうな相手だし、武器を使うかと、さっきまでは使わなかった緋想の剣を出して出方をうかがう。

「ほう、剣士……ってわけでもなさそうだね、構えが不自然だ。他にもなにかあるな」
「さあ? ご想像にお任せするわ」
「くっくっく。強いやつとの戦いはわくわくするねぇ。元妖怪の山四天王、星熊勇儀だ」
「天界の天人、比那名居天子よ。お手柔らかにお願いね」





 結果から言うと。負けた。見事に敗北。結構いいところまで行ったと思ったんだけど、そこらの鬼と違って、やっぱり鬼の実力者は強いわ。

「はっはっはっ! さすが萃香の奴とやりあっただけある。久しぶりに楽しかったよ!」
「いい退屈しのぎになったわ。また戦いましょう」

 勝負の後、意気投合した私たちは近くの勇儀おすすめの酒場でお酒を飲み交わしていた。私は彼女にいたく気に入られたようで、この酒場は鬼仲間にもめったに教えない穴場らしい。実際建物の間の細道をジグザグに進んできた場所にあるこの酒場は、こじんまりとした佇まいであまり目立たない。しかし酒や料理はものすごく美味しい。良い場所を教えてもらった。
 隣でパルスィが、「なんであんなめちゃくちゃに殴り合った後で食事ができるのかしら。丈夫すぎるでしょ、妬ましい」などと言っているが、妖怪は皆こんなものではないだろうか。私は天人だけど。

「しかし……お前服が汚れないよう気にしながら戦ってたろ」
「そりゃそうよ。この後も地底を散策するのに、汚れた服じゃみっともないじゃない」

 勇儀の服がところどころ擦り切れているのに対し、私の服は多少ほこりが付いている程度で、土汚れすら見当たらないほど綺麗なまま。勇儀はそれを気にしているらしい。

「それであの強さかぁ……なりふり構わず戦うと私の方が負けてたかもなぁ」
「あら、私が手加減してたと思ってるの?」
「いんや。服を汚さないようにはしてたが手は抜いてなかった。それが分からないほど未熟じゃないよ私は。ただ、やっぱ立ち回りが変わると同じ全力でもだいぶ違うからなぁ。いつかお前と泥臭い殴り合いがしたいもんだ」
「それはまたの機会に取っておくわ」

 次の話題は萃香の話。今萃香が何をやっているかなど聞かれたので、私が異変を起こしたときに、天界に入り込んで我が物顔でいたときのことを話してやった。

「あいつ天界に乗り込んだのか。やるなぁ。なら私は地獄に乗り込んでやろうかな」
「なんで対抗しようとしてんのよ。住んでる側としては迷惑だからやめてちょうだい」

 次はなぜかパルスィの話題。

「こいつ嫉妬の妖怪だからさ。いつもなにかしら嫉妬してんだよ」
「口癖とか言ってたけど、そういうことだったのね」
「おまけに酔うとさらに見境なく妬む。ほら」

 見るとお酒で顔を赤くして机を指でつつきながらぶつぶつ言っているパルスィがいた。

「綺麗な青い髪が妬ましい……上品な立ち振る舞いが妬ましい……勇儀と仲良くなってるの妬ましい……」
「最後はなんかおかしい気がするわ」
「かわいいだろ?」
「……ちょっとだけ」




 その後、パルスィが泥酔して寝てしまったため道案内人がいなくなり、結局地底散策を打ち切ることに。勇儀にパルスィを預けて一人で歩き回ってもいいのだが、勇儀とお酒を飲んでいたら結構な時間になってしまい、帰らなければ衣玖に怒られることになりそうだ。
 勇儀はまだお酒を飲んでいくというので、パルスィの住処の場所を聞いて送り届けてから帰ることに。勇儀と別れ、パルスィを背中に負ぶって地底を歩く。

「ほんとに、賑やかなところねえ。退屈することがなさそう。私には天界よりこっちのほうが合ってるかもね」

 地底に来た時に思い付きでポロリとこぼした独り言。ただの冗談のつもりで言ったことだが、案外本当に的を射ているかもしれない。

「……天子には帰る場所があるんでしょ? なら絶対そっちのほうがいいわよ、妬ましいわね」
「……あら、起きてたの」

 背中から声が聞こえて少し恥ずかしくなった。今のは誰にも聞かせるつもりはなかったのだけれど。

「ちょっと前から」
「じゃあ自分で歩きなさい」
「んー……まだくらくらするし、もう少しこのまま」
「甘えん坊ね」

 彼女を背負ったまま、地下の街を歩き続ける。行きかう妖怪達の雑踏に紛れながら、話を続ける。

「私はね、天界では嫌われ者なの。正規の手順で天人になったわけじゃないから、七光りとか、他の天人と価値観が違うから不良天人とか呼ばれて、要するに嫌われ者なのよ」
「そうなの?」
「それに関してはもう色々あって気にしないようになったから良いんだけどね。私は気にしなくても嫌われてるのは事実なわけで、天界では浮いた存在なのよ。受け入れてくれてる人も少しはいるんだけど、全体的に見て嫌われ者なのは変わらない」
「それで、嫌われ者の巣窟って言われてる地底がぴったりだと?」
「そんな感じね。自虐的な思い付き。でも実際今日は楽しかったし、街の賑やかな感じも嫌いじゃないわ」

 パルスィは少し押し黙り、やがてゆっくりと口を開いた。

「贅沢な悩みね。妬ましい」
「また妬んでる……」
「うるさい。いい? 私たちは嫌われ者だから地底にいるんじゃないの。地底にしか居場所がないからここにいるのよ。地底の方があってそうだから、なんて理由で地底に来ることを考えるなんて、贅沢過ぎて妬ましい事この上ないわ」
「えー」
「えーじゃない。あなたには天界にも、受け入れてくれる人がいるんでしょ。勇儀との話を聞いてた限りじゃ、地上にも結構な数知り合いがいるみたいだし」
「そうね。天界の友人よりも地上の友人の方が多いわ」
「……それもどうかと思うけど、まあいいわ。地底と地上は、あなたみたいな一部の物好きを除いて未干渉。地底に住むなら、地上の友人たちとはほぼ会えなくなると思っていいわよ」
「それは……困るわね」
「でしょ? たまに遊びに来るならまだしも、地上のものと繋がりがあるうちは、〝こっち側〝に来るのはおすすめしないわ」
「……なんか、やけに親身になってくれるのね。今日会ったばかりなのに」

 私がそういうと、パルスィはふっと顔を伏せて、恥ずかしそうに言った。

「実は最初……あなたが縦穴から降りてきた時点で、私はあなたを見つけてたのよ」
「うん。妖気は感じてたから気付いてた」
「うぐっ……」

 パルスィは顔を赤らめて、絞り出すようにして話を続ける。

「……最初に見たとき……真っ先に、妬ましいって思ったのよ」
「……え?」
「さらさらしてそうな綺麗な青髪だし、赤い目が対照的で綺麗だったし、わくわくしてるような横顔とか柔らかい立ち振る舞いとか、すごくきれいだなって思って……妬ましいほどに地底と不釣り合いだったから、気になってふらふらついて行って、そのくせ自虐的なこと言ってるから思わず声かけたりして……」

 そして少し間を置き、パルスィはしっかりと考えを口に出した。

「あなたみたいな妬ましい人は地上にいるべきよ。ここはふさわしくない」

「……そっか。ありがと」

 うまく言葉が見つからずに、簡素にそう答える。
 そうこうしているうちに、パルスィの住処にたどり着き、結局ずっと背負っていたパルスィを降ろす。

「ごめんなさいね。なんか変なこと言っちゃって」

 パルスィはそう謝るが、むしろ謝るのはこちらだろう。彼女たちの境遇も考えず、軽率なことを口にしたと言っていい。

「こちらこそごめんなさい。地底の方がいいなんて、無神経なこと言ったわ」
「いいのよ。あなたの独り言に、私が過剰に反応しただけだから。妬むことしかできないから地底に追いやられたのに、ここでも同じことをして、地底でも私は孤立してる。私はとことん嫌われ者なの」

 私は首を傾げた。

「孤立? 何言ってるの? 勇儀と仲良かったじゃない。街を歩いてても何度か挨拶されてたし」
「挨拶ぐらいだれだってするでしょ。勇儀は誰とでも仲良くするし、あなたともすぐ仲良くなってたし」
「いやぁ、今日話した感じあいつは好き嫌いはっきり区別するタイプよ。食べ物でも人間関係でも」
「……食べ物は関係なくない?」
「ま、あんたが自分は孤立してるっていうなら、私が友人1号になっても良いわよ」
「なによ……また地底が良いとか言うつもり?」
「まさか……。たまに遊びに来るぐらいならいいって言ってたじゃない?」

 パルスィは少しあっけにとられたような顔をして、やがて嬉しそうに頬笑んだ。





終わり


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

10月4日! 天子の日!!

というわけでどうも、博麗饅頭です。
少し間が空いてしまったけれどSS投稿!


天子の日記念のはずなのにやたらパルスィがかわいくなった気がする・・・。まあ楽しそうな天子が書けたし、満足です。
天子と勇儀がどんな戦いを繰り広げたかは想像にお任せ。余談では、周囲の建物が全壊したとかなんとか……。


間が空くことはあってもSS投稿をやめる予定は今のところありません。




コメント

HRK
No.1 (2016/10/06 01:10)
久しぶりのSS投稿お疲れ様でした!
天子とパルスィ・勇儀との絡みもよかったですし、地底の薄暗い様子や街の賑やかな様子などもよく伝わってきて、とても読みやすかったです。
できれば天子VS勇儀のシーンも読みたかったですが(饅頭さんの戦闘シーンの描写結構好きなので)、流石にそこまで書いたら長くなり過ぎますかねw
今回も楽しく読ませて頂きました。ありがとうございます!
博麗饅頭 (著者)
No.2 (2016/10/06 22:54)
感想ありがとうございます!
戦闘の描写が好きとか嬉しいこと言ってくれますね((ノェ`*)っ))タシタシ

長くなりすぎるのと、今回は天子から見た地底の日常風景が書きたかったので省きました。まあ地底じゃ喧嘩も日常の一部かもしれないですけど。
戦闘書くならどっさり書きたいので1話まるまる使いそう。むしろ前後編……戦闘メインのシリーズもありか。「天子の幻想道場破り」とかいって
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事