第1作『零 ~zero~』のタイトルの由来は?
元々このプロジェクトの開発コード名、つまり「こんなコンセプトでゲームを作ります」というプロジェクト名は『零刻(れいこく)』でした。ただ、開発中に同じ読みのゲームが発売されてしまったので、他のタイトルを考えることになりました。そこで英語やドイツ語、フランス語などを含めて、200個ほどの候補の中から、一番シンプルで多様な解釈のできる『零』を選びました。
「零」というのは虚無の存在、無いことを表す数字ですよね。このゲームの敵は霊、いないものがいる。霊という存在と零という記号とが意味的に合致します。「れい」というふうに読まれても、霊と親和性が高いから大丈夫かなと思って、このタイトルにしました。
また『零』シリーズは何作も出てますが、話の結末が毎回「零」になっています。例えば、誰かを追いかけていったけれど、結局その人を失ってしまうような。最終的に「零」という局面にたどり着くという部分もありますね。
第1作から13年経ちましたが、作品を作る上で何か大きく変わったりしましたか?
2001年に第1作が発売されてから、現在はシリーズ5作品(リメイクとスピンオフ含めて7作品)を数えます。ホラーってネタありきですよね。この時にこう驚かす、こう出て来たら怖いよね、と怖いシチュエーションを毎回作ってるんですが、シリーズを重ねるごとにどんどんネタが無くなって、やりにくくなってます(笑)。
ただハードが変わって技術が進化している分、表現できることが向上して、今までにない「驚かし」ができるようになりました。ハードが進化すると、より高解像度で画面がクリーンに見えるようになるんです。でも奇麗に見える分、直接的な怖さは上がるんですが、『零』って「見えにくい」ってところが怖かったりするので、一旦奇麗な画面を作って、煙とか影でよく見えないようにわざと荒らして、バランスをとっています。シリーズコンセプトである「想像力に訴える怖さ」が欠けないよう、そこは慎重に作っています。
射影機のアイデアはどこから生まれたのですか?
1作目から僕とコンビを組んでいるディレクターの柴田(誠)が、このゲームを企画しました。その時からカメラを使うアイディアは出ていて、設定的な部分とゲーム的な部分で採用しようということになりました。
僕が子供の頃には、カメラに見えないもの、霊とか不思議なものが写る「心霊写真」が流行ったり、集合写真の真ん中の人は魂を抜かれるという迷信がありました。それがホラーというゲームの設定とぴったり合うんじゃないか、というのがまずひとつありました。
もうひとつは、それまでのホラーゲームって、怖いものを見たいんだけど、見てしまうと不利というか、怖いものを味わっちゃうとゲームオーバーになったり、すぐ倒さなきゃいけなかったりしました。でもこの「射影機」というカメラは、怖いものにずっと目を向けてないといけないんです。引きつければ引きつけるほど怖くなるんだけど、敵に与えるダメージも大きくなるから、そのジレンマというか、ここまで引きつけてよし撮ろう、そう頑張ってファインダーに捉えるときのドキドキ感が、新しいホラーゲームになると思って採用したんです。
Wii U GamePadは、一番射影機に近いデバイスのようですが、怨霊を倒すことが今まで以上に面白くなっている?
構えて、GamePadに映る画面を見て、撮影する、というカメラに見立てるってところが楽しいかなと思ってます。特に実際のカメラの撮影でもそうなんですけど、3人いたら3人が入るように構えるじゃないですか。ちょっと縦になってたら体を引いたりして写そうとする、そういった遊びができるのが、GamePadのいいところだなと思います。
『零 ~濡鴉ノ巫女~』は水が重要なモチーフとなっていますが、水を選んだ理由は?
ディレクターの柴田と話をしていて、Wiiに比べてWii Uは表現力が上がってるので、怖い表現をするというときに、グラフックの質感の向上を端的に表すには、水の表現がいいんじゃないかということになりました。
また、ホラーとセクシー要素って結構密接で、海外のホラー映画にはよくセクシーなシーンがあったりしますよね。『零』のキャラクター達も女性が多いのですが、水で服がぺたっと張り付いて体のラインが見えるところなど、ちょっとセクシーさを助長しつつも、濡れて無防備な状態も表すことで、より怖くなるという両方の側面を狙っています。
「零」開発チームは”人間が想像したもの” が一番怖いと考えてゲームを作っているとのことですが、菊地さんにとっての一番の恐怖は?
僕、基本的にはすごく怖がりなんですよ。ホラーゲームを作ってなかったら、お化け屋敷とかホラー映画とか、まず見ないだろうと思います。お化け屋敷に開発チームのみんなで行っても、僕だけ目をつむりながら怖がっています。
一番怖いのは、まったく音のしない無音の状況とか、まったくの暗闇です。見えないから勝手に色々想像してしまうんです。恐怖って、人間の防御本能、心理的に突然何かが起こった時に耐えうるために、怖い状態を作っておくんじゃないかと思います。だから何がおこるか分からない、無音だったり真っ暗だったり、目を凝らしても耳を澄ましてもまったく聞こえない状態が、すごく怖いと思います。
「零」シリーズで一番大切にしていることは?
一番大切にしているのは「ただそこにいるだけで怖い」という空間です。単純に日本家屋を作って、キャラクターや霊を動かしても全然怖くないんですよ。怖くするためには、ちょっとした光の当て方だったり、ささやかな音だったり、いろんな複合的な要素があって初めて「ただそこにいるだけで怖」くなるんです。霊が出てこなくても怖いよね、こういうところ行きたくないなと思ってもらえることを、大切にしています。
あと『零』はあんまりザコキャラ、記号的な敵がいないんですよ。霊も元々人間であって、何らかの理由で不遇の死を迎えた存在です。現世への心残り、恨みとかがあって現れているというふうに、一体一体の設定があるんです。
「ただそこにいるだけで怖い」空間と背景に物語のある霊。こうしてひとつの閉じた『零』の世界にまとめあげることを大切にしています。
僕はまったく見えないんですけど、ディレクターの柴田は霊が見えるそうです。顔の見えなさ加減とか、動きとか、より本物らしくなるよう、彼が見た霊を再現することにこだわっています。ただデザイナーは本物の霊を見たことがないので、それを伝えて本物ぽくするのが大変です(笑)。
『零 〜濡鴉ノ巫女〜』でお気に入りのキャラクターは?
今回は今までに比べて多くのキャラクターを用意したんですが、主人公の中にひとり、雛咲深羽(ひなさき・みう)というヒロインがいます。「雛咲」は1作目の主人公と同じ苗字で、彼女と関連があるキャラクターなんです。造形的にも存在的にも、彼女を結構気に入っています。
女の子キャラは、皆さんすらりとしたモデル体形ですが、菊地さんの好みなんですか?
ベースのお話からしますね。なぜ一作目で女性を主人公にしたかといいますと、屈強な男性だと物理的な攻撃できそうじゃないですか。それはできなくしたい、やっぱり怖がってる顔が一番さまになるようなキャラクターにしたいよね。また大人より子供の方が霊感が強いと言われてるので、若い女性にしようということになりました。また海外のホラー映画とか結構グラマーな女性が多いんですけど、あんまり胸が大きいと怖がらないよね、というところもあって、すらっとした体形が多かったんです。
それから回を重ねて行くごとに、いろんなバリエーションの女性が登場しましたが、大体基本線はそういったところを踏襲しているので、最近の作品では体に関してはディレクターとデザイナーにお任せしています。今作でこだわっているのは、体型というよりも濡れたらセクシーに見える衣装にするということですね。
あと僕が非常に大切にしてるのは、目と唇です。そこに関しては口酸っぱくというか、納得いくまで直してもらいます。キャラクターは時間をかけて大切に大切に作っていくんですが、自分がキャラクターに惚れ込まないとダメなので、ホント主人公は自分の娘のように、これだったら自分で惚れ込めるキャラクターになるまで細かい調整を繰り返しています。
唇は難しいですね。厚すぎてもダメだし、ちっちゃすぎてもダメだし。目はある程度のデザイナーであれば上手くできるんですけど、唇の形はデザイナーによって左右されやすいですね。唇の感覚というのは、鼻と唇の間とか、唇自体の形状とか、作る人によって非常に個性が出やすいところなんですね。ただ主人公クラスは同じデザイナーになってきているので、最近は一発オッケーを出すことも多いです。
小説、映画、漫画そしてハリウッド映画と大型メディアミックスになりましたが、それについて一言お願いします。
ほんとに各界のプロフェッショナルな方と一緒に仕事ができて夢のようです。なかなかこういうメディアミックスが同じ時期に実現するのは難しいんですよね。それを皆さんの力を結集して実現できたのはありがたいと思っています。僕は、ゲームの世界をそのままノベライズにするとか、漫画にするとか映画にするとかはまったく考えてなくて、漫画で面白い描き方ってあるじゃないですか。ゲーム、漫画、映画、それぞれに成立のさせ方があるので、それを各専門の方にお任せしようと思ったんです。『零』のエッセンスというのは、女性が主人公だったり、カメラが出て来たりというところですが、そこの根っこの部分は押さえておいてほしいというのを、最初にお伝えして展開して頂いたんです。
天樹先生が原作の『零 影巫女』は『零』のポイントを押さえた上で、怖い要素もありつつも、読ませるサスペンスという要素を多分に混ぜて頂いてます。最初プロットを見せて頂いた時に、この期間でこれだけの発想と構成ができるのは、天才というか、すごいなあと思いましたね。毎回毎回、同じようなページ数で、起承転結つけるなんて、ほんと難しいと思うんですよ。そして話を通して先が見たいように見せるって、すごいことだと思います。
ハリウッドの方でも、サミュエル・ハディダ、『バイオハザード』『サイレントヒル』などヒット作を手がけているプロデューサーの方と、ご一緒に仕事をしようと話をしています。そういった方とは中々接点がないので、僕達が作ったコンテンツを通じて関われるのは、もっといい作品を作っていこうと刺激を受けますね。一流の方と仕事をするっていうのは、こういうことなんだなと思いました。ほんと感激です。
最後にハッカドールのユーザーの皆さんへのメッセージをお願いします。
発展なきところに成長なしではないですが、ホラーのコンテンツも同じようなものを作っていくと衰退していくのではと思っており、『零』シリーズには毎回新しい試みを足しています。今回発売された『零 ~濡鴉ノ巫女~』に関しては、GamePadを使った怖さであるとか、水の表現であるとか、そういったものを盛り込みつつも、お話に関してはシリーズ最長のボリュームで、沢山の怖い体験ができるようにしてパッケージング、ひとつの作品として完成させましたので、その新しい恐怖体験をみなさんに味わって欲しいと思っています。
またこうやって「零Project」として各界の著名な方と一緒にお仕事をしましたが、いろんな方々の視点での『零』の解釈と表現方法を楽しんでいただけると、よりこの『零』シリーズとか世界が広がると思います。ぜひ漫画も楽しんで欲しいと思います。
――ありがとうございました。
『零 ~濡鴉ノ巫女~』
対応機種:Wii U
発売日:2014年9月27日
価格:6,600円(税別)
ジャンル:ホラーアドベンチャー
©2014 Nintendo / コーエーテクモゲームス
「零Project」情報
映画 『劇場版 零〜ゼロ〜』公式サイト
http://zero-movie.jp/
ゲーム 『零 〜濡鴉ノ巫女〜』公式サイト
http://www.nintendo.co.jp/wiiu/al5j/
小説 『零 〜ゼロ〜 女の子だけがかかる呪い』
http://www.kadokawa.co.jp/product/321401000057/
漫画 『零 影巫女』第1巻
http://kc.kodansha.co.jp/product?isbn=9784063951981
最新話 https://www.mangabox.me/reader/197/
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