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『よつばと!』12巻の怖さと、よつばと俺の断絶について

2013/03/15 03:14 投稿

コメント:3

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こんなブログタイトルでありながら早速アイマス以外の話もするわけですよ。

 先日、遅ればせながら『よつばと!』の12巻買ってきました。で、目に付いたのがこちら。

よつばと!12巻なんか怖くね? 2chのかけら


 「『ドラえもん』は脳死状態にあるのび太の夢」だとか「『クレヨンしんちゃん』はしんのすけが死んで悲しんだ両親が描いたお話」だとか、こういった子供向け創作はその辺の都市伝説に事欠かないわけですが、というかこのスレも都市伝説語りの域から出ていないようにも見えますが、でも、確かに、『よつばと!』12巻はなんだか怖さ、というか寂しさがあった。

・秋の寂しさ
 この漫画の初期はずっと真夏のお話で、「夏の終わりと共にこのマンガも終わるのかな」と思っていたけど、何事もなく季節は進んでいくようなので安心してたりしてました。とにかく1日1日を大切に丁寧に描いていく作品なので、進行はとてつもなく遅いけれども、その分作品世界に深く没入しやすくなっている。(進行が遅いったって先の展開が気になる類の作品でもないしね)

 登場人物たちの細かな描写だけでなく、舞台背景、日常風景の描写にも力が入っているのは読んだことのある人なら知っていると思う。今回の12巻、私が一番印象に残ったのは空だ。

 『夏!』が描かれていたころは、「とにかく突き抜けるような青い空! 白くてデカい入道雲!」が背景に描かれていて気持ちが良かった。あの、見るだけで意識が3mほど斜め前方に飛び出すような空。この漫画は感動や感情よりも感覚を呼び起こしてくれる。

 で、12巻の舞台はもうすっかり秋。確か8巻の終わりころから作中には秋の気配が漂っていたけど、今回の舞台はハロウィンなり松ぼっくり拾いなり、イベント的にも秋真っ只中だ。そしてその背景、描かれる空もまた、秋らしいうすぐもりの空なんだよね。白の掠れた筆で引いたような薄く長い雲と、ぼんやりとした薄い青の、高い高い空。見ているとなんだか下腹部から目頭までキューンと涙が上ってくるような、あの秋の空。夜になって、影法師を見て初めて月の明るさに気づいて(これ、中秋の満月じゃないかなあ)、見上げてみると朧月夜。その人の年齢の回数だけみてきた、わけもなく寂しくなってくる、あの空。
 よつばは「なんにもない!」→「やりほうだいだ!」と相変わらずだし、周りの大人たちはもっと相変わらずだ。だけど、描かれている空や空気がすごく「秋」なんだよね。キャンプに行った一行が寝静まった後の、見開きで山と空を描いているシーンなんて、虫の音、冷たく湿った空気、草の臭いまでも感じられそうだ。このページばかり10分くらい見入っていた。
 そんな、「秋」が描かれた12巻。この季節独特の寂寥感というか、すぐおトイレに行きたくなるようなあの感覚を呼び覚まされた。

・寂しくなるスイッチ
 よつばが寝袋に入って、テントの天井をみて、ふと突然寂しくなってくるシーン、ものすっごく独特だったよね。感情がエアポケットに入ったかのように、急に孤独感に襲われるあの感覚、処理できない寂しさに戸惑う感覚を、あのよつばが感じている。今まで生きてきて何度も足を取られた陥穽だけど、よつばがそれに嵌っている。なんだか、珍しくこの漫画で大人達じゃなくよつばに共感してしまう。寂しさに共感してしまうので、読後感がすごく「寂しい」に固定されてしまう。悪くはない。
 一眠りして、見知らぬ天井を見て、よつばは前夜の寂しさも忘れて一人で外に出て行くんだよね。この辺、いつものよつばらしくてホッとするんだけど、それだけに、突然感じてしまった寂しさの異質さが際立つ。

・『とおりゃんせ』というか『メトロポリタン美術館』というか
 そしてまた、目覚めてからの描写が、なんというかこう、現実離れしているというか、まるでよつばがみている夢を覗いているかのような描き方なので、「こわく」感じてしまう。踏み込んじゃいけないワンダーランドというか、入っちゃいけない細道に迷い込んだような、登場人物が全員、その本人じゃなくて「よつばが見たその人達」に置き換わっているような、そんな怖さ。大人達、とーちゃんの目線の高さから描いた世界じゃなくて、よつばの目線の高さから見た世界になっている。いつもの「子供達を見守る視点」じゃなく、いきなり「子供の目線」に変わったお陰で、おっさんの私は突如異世界に迷い込んだような感覚に陥る。(たぶん、よつば自身がキャンプ地という非日常にいるからだとも思うけど)

 で、最後のコマが本当に怖い。
 この漫画にしては実に珍しい、読者と視線を交わすよつば(目線の高さから言って、とーちゃん視点とはどうしても思えないのよこれ)。それだけでも異質なのに、その背景、よつばがポツンと立っているその後ろの景色がまるで真空のように何もないんだよね。手を伸ばせば漫画のコマの中に吸い込まれて二度と出てこられなさそうなあの1ページ。本当に怖い。そしてまたよつばの台詞がね、

「きょうは なにしてあそぶ?」

なんか、手招きしてるようなんだよね。怖い。

 そして逆に、そのよつばとこちらの断絶が怖い。「今日"は"」とよつばは言う。よつばは毎日遊んでるからだ。一昨日はハロウィン、昨日はキャンプ、今日は……明日は……明後日は……、よつばが過ごす毎日はただ過ごしているだけで宝箱だ。でも、読んでいるこっちはもちろん毎日遊んでなんかいられないわけだ。いい大人だし。仕事あるし。よつばの日常と私の日常は断絶している。断絶しているのに、断絶をはっきり意識させられているのに、いきなり吸い込まれてしまいそうなあのページ。どこか全然違う世界に連れて行かれそうで怖い。あのよつばが、神隠しを行う狐のように見えてきて怖い。

 12巻の「こわさ」ってそういう怖さだったと思う。



 なんか、秋に独特なあの寂しさと怖さが存分に描かれていて、ちょっとしたSFや、ホラーとは言わないまでも不思議な物語を読んだような、いつものスッキリした感情の中に一かけらのワンダーを残していった読後感でした。

 そんな、『よつばと!』12巻は絶賛発売中です。

よつばと! 12 (電撃コミックス)


コメント

ガガンモ
No.1 (2013/03/24 18:38)
面白い見方ですね( ´ω`)

僕は単純に「子どもたちが仲良く遊んでるのはなごむのう」って感じで読んでました((´^ω^))
でも確かに最後のコマは普通とは違う感じでしたねー

あぁー、何にしてもまた単行本が出るのをまたなきゃ。。長いなぁ
gouzou (著者)
No.2 (2013/03/25 00:53)
>ガガンモさん
コメントありがとうございます。
「子供の世界」って何だか得体の知れない怖さがあるんですよね。得体の知れない存在と普通に仲良くなっているような、立ち入ってはいけない空間と隣接しているような。
そんな「こわさ」を感じた12巻でした。
ニャル
No.3 (2013/07/02 16:35)
遅ればせながらコメント失礼いたします。
よつばと!12巻がなんとなく怖い感じがしてググったらここにたどり着きました。
私は、よつばがペンキまみれになる回の序盤のとーちゃんがジャンボの花屋さんで沢山の花に囲まれているコマが、お葬式というか柩の中のように見えて怖いと感じました。そのコマに話の前後の繋がりはなく、唐突に1コマ。っていうところが不気味です。表情も虚ろなのが気になりました。
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