<夏だ!!競馬だ!!>
「夏だ!! 競馬だ!!」第2弾は、季節感たっぷりにプールの話題をお届けします。今週行われる伝統のハンデ戦、七夕賞(G3、芝2000メートル、12日=福島)に挑むグランデスバル(牡7、星野)のプール活用法を参考に、トレセン内のプールの仕組みと競走馬のプール調教について教えます。
直線プールで泳ぐグランデスバル
美浦トレセン北馬場のすぐ脇に「競走馬スイミングプール」と書かれた建物がある。グランデスバルにとっての、“最終追い切り”の場所にもなっている。
地方で勝ち上がり、転厩先の星野厩舎が苦労を重ねてたどり着いた調教法。コースでの追い切りをせず、プールで仕上げるようになったのは昨年3月の常総Sからだが、準オープンで2、2、1着と好走し、オープン入りと結果を残した。
「賢い馬だよ。気性が悪いんじゃない、個性が強いのかな」。500万から重賞戦線まで育った個性派。
星野助手 厩舎に来る前から調教中に急に止まったり、立ち上がったりするって聞いてました。障害練習は跳ぼうとしない。馬場で追っていたけど、ウッドが嫌になって、坂路が嫌、ポリトラックも嫌、芝も嫌・・・。今は軽い運動しかしないと分かっているAコース(一番内側のダート馬場)しか入らない。
プール監視員を務める美浦トレセン業務課の斎藤氏は「水中の動きと走る動きはもちろん違う。泳ぐだけで速く走れるようになることはありません」と断言する。ではなぜ、グランデスバルは活用できるのか。「Aコースではゆっくりだけど走ってくれるので、ここでフォームを作るのが大事ですね。プールは流速を秒速1・2メートルまで上げて肉体面に負荷を掛けてます。向かってくる水に対して泳ぐだけでは飽きてプールを嫌いになるかもしれない。だから、4本泳ぐうちの1本は逆向きで水の流れに乗せて泳がせるんですよ」(星野助手)。
わずかな平地調教とプール調教をバランスよく取り入れ、重賞戦線で戦うまでに成長した。12年日経賞を逃げ切ったネコパンチを育てた厩舎の現エース。昨年の七夕賞は11着に敗れたが、「福島は平たん小回りだから合う。順調なら暮れの有馬記念に出したい馬だから」と意気込む。
「人も馬も同じでおぼれるときというのはパニックになってしまう。プールでは引き手(人)と馬との信頼関係が大事」と斎藤氏は話す。心肺機能を高め、馬体を引き締め、人との信頼関係も形成する。馬の調教は走るだけじゃない。プールで鍛えた自由形、グランデスバルに乞うご期待だ。【木南友輔】