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ビットコインをギークの手に取り戻したい

2014/06/05 23:45 投稿

コメント:6

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ブロマガには初投稿です。ツイッターでは@gikopoolの名前で活動しているものです。

この記事はドワンゴ川上会長の記事へのレスポンスです。
http://ch.nicovideo.jp/kawango/blomaga/ar542568
川上さんは批判的な立場から、客観的にビットコインを分析されています。
未読の方はぜひ読むべき必見の記事でしょう。
私としては、特にVISAと比較したトランザクション数限界の低さは衝撃でした。
スケールしないとは聞いていたが、これほどまでとは・・・。

以下、自分語りをしつつ、川上さんの記事の補足のようなことをつらつらと書いていこうと思います。
長くなりそうなので、先に川上会長の「納得いかない点」にサクッと答えておこうと思います。

>>・だいたい仮想通貨の決済システムをP2Pで実装するメリットってなんかあんの?
ネットを介した個人間取引を低い手数料で行えるのがほぼ唯一のメリットです。
ただし、そのメリットを脅かすほどのデメリットも多数あります。
>>・ブロックチェインのような性能の悪いアルゴリズムが革命的発明ってどういうこと?
ブロックチェーンで取引時系列を保存し、ブロックチェーン生成協力者に報酬を払う、
というひらめきは天才的だと思います。パーツは単純でも、組み合わせが巧妙です。
それが革命的かどうかは、私にはわかりません。
>>・説明すべきはどうせスケールしないP2Pの決済システムじゃなくて取引所の実装だよね。
個人的にはビットコインを担保にした取引所の実装(Rippleなど)には
あまり興味はないですし、本質的ではないと思います。
それは、取引所という中央ができた時点で転送手数料が発生するため、
前述した暗号通貨の唯一のメリットがなくなってしまうからです。
P2P決済システムのスケーラビリティにはまだ研究の余地があると思っています。
また、スケールしないにしても、それなりに限定的な使い道はあると思います。
>>・ビットコインが素晴らしいって理由って結局のところただのイデオロギーだし、みんなそう主張したがるのは儲かりそうだからだよね。
ビットコインを推す人の99.99%はそういう理由で推しているのが現状です。
彼らは一儲けを狙っている投資家か詐欺師か、もしくは仕組みをよく理解していない人たちなので、
あまり真に受けないのが良いと思います。


さて、私自身は、今年の2月頃、入院中に暇を持て余して色々勉強をしていたのですが、
ちょうどビットコインの論文を読んで、ブロックチェーンを用いたプロトコルの
シンプルさに可能性を感じ、強く惹かれたのを覚えています。
そのまま、暇つぶしくらいのノリで、ビットコインと同じプロトコルを採用した
「モナーコイン」の勉強会、というかオフ会を企画しました。
http://off.gikopool.net/
非常にありがたいことに、ドワンゴ様には無料で会場を提供していただき、
その節は誠にありがとうございましたm(__)m


オフ会自体はまあまあ成功したと思うのですが、それと前後して、情報を集めるにつれ、
川上さんが指摘されているようなビットコイン型通貨(以下暗号通貨と呼びます)の
欠点ばかり目について、日に日にうんざりとした気分になっていきました。
何がうんざりかというと、そういった暗号通貨の欠点に対する本質的な改善が、
ビットコインのリリースから5年経った今において全くなされていないという点です。


その理由のひとつは、ブロックチェーンのプロトコルがあまりにもシンプルで、
ほとんど改善の余地がないという点が挙げられます。
モナーコインを含めた、暗号通貨と呼ばれるビットコインのコピーたちのほとんどは、
元々のビットコインのブロック報酬やブロック生成時間などのパラメータを調節しただけで、
ブロックチェーンに対する本質的改善は全くなされてません。


しかし、もっと深刻な問題は、ビットコイン界隈にスーパーなプログラマが
非常に少ないということにあると思います。

ビットコインは盛り上がってるように見えますが、結局は投資家が大騒ぎしているだけで、
ブロックチェーン以上の発明のできる天才的なプログラマはいないか非常に少ないのだと思います。
また、仮にそういう人がいて、何か革新的なアルゴリズムをビットコインに実装しようとしても、
たぶんリジェクトされてしまうでしょう。
現状、ビットコインの開発はビットコイン財団が管理しており、
この財団は投資家が牛耳っていて、彼らはとても保守的です。
(ちなみに、この財団に入るには会費を払わないといけないらしいです。)
結局、ビットコインは、ソースはオープンでも、開発体制は極めてクローズドなのです。
これではとても民主的とは言えませんね。
余談ですが、モナーコインの場合も、githubでオープンに開発しているとは言っていますが、
プルリクエストを承認する管理者は1人だけで、しかも彼はgithubのissueには何も書き込みません。
重度のコミュ症か、単なる傍観者を決め込んでいるのかはわかりませんが。


このような残念な背景を知るにつれて、本当に暗号通貨って既存の通貨に対して
何かメリットがあるのだろうか?と私は真剣に悩みました。
川上さんの仰る通り、取引に時間がかかり、保有するコインの価値は時価で上下し、
しかもスケーラビリティに乏しく、エネルギーをバカ食いするという様々なデメリットを
享受してまで、あえて暗号通貨を選ぶメリットって何だろう?と。


結論としては、たったひとつだけ、現行通貨と比較して確実なメリットがあると考えるようになりました。
それは、前述したように「個人間でネットを介して手数料をかけずに送金できる」ということです。
はっきり言って、P2P通貨のメリットはこれだけだと思います。


具体的にいうと、例えば同人サークルが同人誌の電子版を売りたいというケースを考えてみましょう。
同人誌はたくさんの人の手にとって貰いたいので、例えば1部100円で売りたかったとします。
このような少額の送金は、実はとても大変です。
銀行振込などの場合、送金額よりも手数料の方が高くなります。
もう少し現実的な方法は、DLSiteみたいな販売代行サイトを利用することです。
そういうサービスを利用すれば、ファイルのホスティングから課金代行まで全部やってくれます。
ただし、この場合、代行サイトが売上の何割かを手数料として徴収します。(下図)



このようなプラットフォームを提供するビジネスは、
同人誌販売だけでなく、音楽配信(iTunes等)、ゲーム配信(Appstore, Google Play, Steam等)、
ガチャ等のゲーム内コンテンツ課金(DMM等)といった少額のコンテンツ販売には、
現状ではなくてはならないものです。


ところが、暗号通貨を利用することで、この牙城を崩せるかもしれません。
暗号通貨は、中央で帳簿を管理する管理者がいないために、
エンドユーザとクリエータ間の直接の取引が、無料〜極めて少額の手数料で可能になります。(下図)





間に銀行や販売代行サイトも介さなくても良いのです。

標語的に言うならば、「プラットフォームを回避した取引が可能になる」ということです。

繰り返しますが、クリエータ側はプラットフォームに手数料を払わなくてよくなります。
このメリットは非常に大きいと思います。


この点に関しては、ドワンゴさんのように、自前の決済システムを用意できる体力を持つ
企業が、あえて暗号通貨を採用するメリットはありません。
恩恵を受ける可能性があるのは、個人や同人サークル、
または自前の決済システムを持つことの難しい中小企業などです。


また、この送金手数料が格安であるという性質は、「投げ銭」としての利用によくマッチします。
投げ銭なんて、良くて100円、場合によっては1〜10円位を気持ちとして投げるものです。
これを銀行送金で、なんてやり始めたら手数料の方が高くついてしまいます。
しかし、暗号通貨なら、本当に1円単位の投げ銭が現実的に可能です。
1円の投げ銭でも、1万人が投げてくれれば1万円です。
そこまでは無理にしろ、気持ちだけの「イイね!」よりは1円でも価値のある投げ銭のほうが
クリエータさんのやる気には貢献するのではないのでしょうか。


さて、ここまでの話だといいことばかりのように聞こえますが、もちろん暗号通貨にはデメリットがあります。
特にエンドユーザに影響するデメリットは、
1. 暗号通貨ネットワークの健全性
2. 暗号通貨のリアルマネーに対する価値変動
です。逆に言えば、このデメリットさえ何とか改善できれば、
暗号通貨が一定の普及をするのではないのかな、と私は期待しています。


そのような背景で、私の最近の興味は、暗号通貨を
個人間決済の手段として気軽に利用できる道を模索することです。
より具体的には、上にあげた2つのデメリットを改善していくことになります。


1つ目の問題に関しては、川上さんが指摘するように、非中央集約型通貨と歌いつつも、
半分以上のハッシュレートをたった4つのプールが支えているビットコインネットワークは、
セキュリティ的に非常に危険で脆弱です。
というか、そもそもプールが圧倒的に有利(リスクが少ない)のは、完全にビットコインの設計ミスです。
しかし、この問題は、ブロックチェーンの枠組みを少し拡張することで
解決可能なんじゃないかな、と最近思っています。
他にも、悪意のあるブロック生成は、長い方のチェーンを採用することで、
多数決の原理で回避できるとされてますが、
一方で悪意のあるノードが増えた場合にどうなるのかは今だによくわかってません。
(いわゆるビザンティン将軍問題)
ここも改善が必要なポイントだと思います。


2つ目の価値変動の問題はより難しいでしょう。
bitpayなどのサービスは、価値変動リスクをbitpayという会社が吸収してくれますが、
その分手数料がかかってしまうので、スマートな解決方法じゃないと私は思ってます。
なんとかソフト側の対応(通貨発行ペースの調整等)で対応できないかな、と思います。


さて、だいぶ大風呂敷を広げてしまいましたが、
これらの問題は、5年にわたるビットコインの歴史において未解決の問題であり、どれもそれなりに難しいでしょう。
頭を使ったところで、有益な回答が出ると保証されているわけではありません。
というか、むしろ徒労に終わる可能性の方が高いんじゃないでしょうか。


ではなぜ、私が未だにこんなに暗号通貨にコミットしているのかと言われれば、
1つは単純な知的好奇心というか、ギーク心です。
しかし、もう1つの大きな理由は、ネット上の個人間送金手段としての暗号通貨の需要を確実に感じるからです。
(公平のために書いておきますが、私がモナーコインに特にコミットしているのは、
ある程度まとまった量のモナーコインを持っているからという理由ももちろんあります:P
ただ、仮にモナーコインの価値が100倍になっても、私が今までかけた労力はペイできません)


モナーコインを通じて知り合った、漫画家さんなどのクリエーターさんは、個人間送金手段を強く求めています。
プラットフォームフリー送金手段には確実に需要があります。
私は彼らのクリエイティビティ、アクティビティに心を打たれました。
そこで、短期的にはモナーコインまわりのサービス開発にコミットして、普及に貢献しようと思っていますし、
中長期的には、ある程度の規模のコミュニティで十分通用する暗号通貨の改善・設計をしたいと思っています。
成果がモナーコインにマージされるのか、それとも他の暗号通貨としてロンチされるのかは、
今の段階ではなんとも言えません。
(まあ、趣味でやってることなので、過剰に期待されても困ってしまうのですが…。)


まとめると、ビットコイン自体はそれなりに意義のある発明ですが、
過剰に投資家の期待を集めすぎてしまったために身動きがとれなくなって、
非常に残念なことになっているな、というのが私の観測結果です。


元来ビットコインはギークのおもちゃでした。
Satoshi Nakamoto はビットコイン創世の神などではありません。
ただのオタク野郎です。
Satoshi Nakamoto の論文はまるで博士論文みたいに冒険心にあふれていますし、
彼がメーリングリストに残した激論は非常にGeekyでねちっこく、読み応えがあります。
そしていつしか、ビットコインで大きな金が動くようになってしまい、
嫌気のさした彼は、ギークらしく潔く去っていったのでしょう。


ビットコインはあくまでも、非中央集約型通貨の実験バージョンです。
個人間少額決済のメリットは実証されましたが、それ以上のデメリットも実証されています。
もしあなたが暗号通貨に興味をもったのならば、まずはSatoshi Nakamotoの論文を読みましょう。
そして、それを超えるシステムを考えてみましょう。
何か思いついたら、コミュニティにコミットして議論してみましょう。
腕に覚えがあれば、実装してみましょう。
見返りなんてありませんが、楽しい知的ゲームだと思いますよ。


今一度、ビットコインをギークの手に。
それが私のメッセージです。

まあ、人生かけるほどではないと思いますが、パートタイムであれこれ考えるのは面白いですよ、ってことで。。。


<!--ステマ

そんなわけで、暗号通貨に興味があって、サービスを提供したい!
開発に参入したい!という方にはできるだけサポートしようと思っています。
今度、モナーコインデベロッパーブートキャンプ!という、
モナーコインの送金システム実装講座を7月20日に開催します。
http://atnd.org/events/52106
講座の内容は、ビットコインなど他の暗号通貨にも応用可能です。
参加料は無料なので、お気軽にどうぞー

--ステマ/>

追記: せっかくなので、ビットコインをはじめとする暗号通貨について質問があれば
コメント欄にどうぞ。余裕があれば回答しますー
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コメント

latboy (著者)
No.4 (2014/06/12 02:03)
>>3
スケールの問題については、ビットコインコミュニティでは一応問題とされています。
https://en.bitcoin.it/wiki/Weaknesses
https://en.bitcoin.it/wiki/Scalability
基本的には、川上会長の記事にあったように、ブロックサイズの上限を排せばよい、みたいな考えのようです。
ブロックチェーンは膨大なデータ量になってしまいますが、フルのチェーンを保存する
ノードは数個あれば十分だ、みたいな発想のようです。
latboy (著者)
No.5 (2014/06/12 02:04)
この辺の議論、もう少し定量化して次のエントリにしたいと思ってます。。
espresso
No.6 (2014/06/13 00:35)
>>4
情報ありがとうございます。
確かにScalabilityはそれなりに議論されているようですね。エネルギーの問題よりは小さい問題という取り扱いでしょうか。
サイズの制限はブロックチェーンのサイズの増加を抑えるためのようですね。制限を解除すれば良い様な言い方になっていますが、これまで仕様およびソフトウェアの変更は平和にしばしば行われているのでしょうか。
ところで、モナコインはこの辺りの仕様はどうなっているのでしょうか?ビットコインと同じでしょうか。

定量的な解説ができましたら是非読ませて頂きます。
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