長谷川: 今日はたくさん聞きたいことがあります。どうぞ、よろしくお願いします。
安倍: よろしくお願いします。
長谷川: まず、ウクライナ情勢です。これはもしかしたら冷戦終結後のもっとも大きな出来事かもしれないと思っています。なぜなら、ロシアは国連安保理の常任理事国であり、本来なら一番国際法を守らなければならない立場の国でありながら、クリミアに侵攻して実効支配をし始めている。この情勢を総理はどのようにご覧になっていますか?
力を背景にした現状変更は決して許すことはできない
安倍: まず、日本の立場は明確です。それは、「力を背景とした現状変更は決して許すことができない」ということです。そして今、ウクライナで起こっていることは決してこの地域だけでの問題ではなく、たとえばアジアでも起こりうることなんです。そのような意味においては、世界全体の、国際社会全体の問題だと捉えるべきだと思うのです。私はG7の会議でもそのように主張しました。だからこそ、この原則を守らなければならない。ロシアの取っている行動は明らかに法に反する行動です。だからこそ国際法をしっかりと守っていくためにG7では一致結束して行動していくということで一致しました。
長谷川: 「アジアでも起こりうること」と首相が指摘されたときに、各国首脳からの反応はどうでしたか?
安倍: G7において他の国がどのような発言をしたのかは引用しないことになっているので国名は挙げませんが、アジアにおいては台頭する中国という存在があり、南シナ海、東シナ海でもいろんなことが起こっているという話をしましたら、3ヵ国の首脳から基本的に私と同じ認識が示されました。
長谷川: 今、東シナ海、南シナ海、中国と国名が出ましたが、総理は国名を挙げてお話しされたのでしょうか?
安倍: アジアにおいては中国の存在は極めて大きいということ、そして、東シナ海、南シナ海においても力を背景とした現状変更の試み、挑発行為が行われているということは、ファクトとして紹介しました。
「封じ込め」ではなく対話のチャンネルを維持していく必要がある
長谷川: ウクライナで起きていることは、われわれジャーナリズムの世界では「新しい冷戦の始まりだ」とも言われていますが、総理はどのようにお考えですか?安倍: まさに「新しい冷戦のスタート」にしてはなりません。かつてのように、再び米ソが対立し、世界が西側、東側に別れていたという状況を作ってはいけない。現在では、経済はグローバルにつながっていますから、対立が起きれば、結局、世界経済を直撃してすべての国に損害を与えることは長谷川さんもご承知の通りでしょう。
かつてのように西側、東側のブロックの中で経済が形成されていた時代とは違うのです。だからこそ、私もG7の会議において、「力を背景とした現状変更の試みは絶対に許すことができない」と主張したのです。
一方で、ロシアが経済的な制裁に対して無責任な報復をするかもしれない。(その可能性も含めて)この問題が世界経済にどのような影響があるのかをよく議論しておく必要があるとも申し上げました。だからこそ、あのような形で違法にクリミアをロシアに編入したり、今後、さらに東ウクライナにロシアが軍隊を派遣させたりすることがあってはならないのです。
同時にウクライナを経済的に安定させていくことが必要です。日本は15億ドルの支援をしていく予定です。現段階では具体的な数字を挙げたのは日本だけですが、日本がリードする形でウクライナへの支援をしていく必要があると思います。
ロシアに対しても、国際社会から受け入れられる形の対応をするように強く促していく必要があると思います。いわば"封じ込め"ではなく、常に対話のチャネルを維持していく必要があると思います。日本のもう一つの原則として、「どんな課題があっても、課題があるからこそ対話は継続すべきだ」とG7で主張しましたし、それはG7全体のコンセンサスになっていると思います。
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