ゲキビズ田原通信

長谷川幸洋 コラム第19回 太陽・東京五輪と北風・TPPでどうなる規制改革と消費税

2013/09/19 12:00 投稿

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〔PHOTO〕gettyimages

イソップ童話に「北風と太陽」という話がある。
いまさら解説もいらないと思うが、北風と太陽が旅人に上着を脱がせるのを競った。北風は旅人が懸命に抵抗したので、上着を脱がせるのに失敗したが、太陽には暑くてすぐ脱いだという話だ。

東京五輪の誘致に成功したニュースを聞いて、この童話を思い出した。
どういうことかと言えば、日本経済の改革をどうやったら実現できるか、という話である。それから、いま焦点になっている消費税引き上げにも少し絡んでいる。

私はかねて環太平洋連携協定(TPP)が日本の改革を促すテコになる、と主張してきた。TPPに参加するかどうかは、日本自身の選択であるが、同時に外圧でもある。なにも外国と交渉しなくても、日本が自分自身で貿易の門戸を一段と開いていくことができれば、それに越したことはない。

外圧を大義名分に国内の改革を進める

だが、国内のさまざまな事情によって、それが難しければ「外国にも譲歩を求めるのだから、日本も外国の要求を一部認めて、譲歩するのはやむを得ない」という論法で国内を説得する。
そういう意味で、外国との交渉を大義名分に、国内の改革を進める。つまり外圧を利用するのだ。

この話は4月26日付コラムをはじめ、2年前からあちこちで何度も書いてきたから、詳しく繰り返さないが、外圧は日本にとって安楽な話ではない。
だから、北風と考えてもいい。農業にしろ医療にしろ現状維持を望む勢力がいて、それを改めようとすれば、関係業界にとっては生身を切り刻むような話になる。

では、東京五輪はどうか。こちらは太陽なのではないか。

なぜかといえば、多くの人が東京五輪の誘致成功を喜んでいる。
経済界の大人たちはもちろん、子供たちも「もしかしたら自分も五輪に出られるかもしれない」と夢を膨らませている。五輪が一挙に身近なものになって「よし、これから世界と競争できるようにがんばろう」と意気が上がっているのだ。

2020年の東京五輪という大目標に向かって、大人も子供も新たな挑戦意欲を沸き立たせている。「20年には世界の人々が東京に来る。日本は再び世界の檜舞台に立つ。だからなんとしても、日本を立派な国に復活させなければならない」という気分が広がっている。

アベノミクス第3の矢の柱と位置づけられている規制改革も、そんな挑戦意欲が高まる中で議論が進んでいく可能性が出てきた。
こちらは、つらく苦しい北風ではなく、基本的には「みんなが望む大目標を達成しよう」という前向きな話である。わくわく感があるのだ。

ふたつのグローバル・ファクターを改革に活かせ

改革は既得権益勢力とのバトルだ。戦いである。だから、生臭い血が飛び散るような側面ばかりが強調されてきた。今回決まった東京五輪は、そんな「戦う改革」から「未来を描く改革」というように、改革の色合い、ニュアンスを変えていく契機になるかもしれない。いや、そうすべきである。

日本の改革を「北風のTPP」が後押しして「太陽の東京オリンピック」がけん引していく。そんなイメージである。
デフレに苦しんでいる間に日本はすっかり内向きになった。そこへ、TPPと東京五輪というグローバル・ファクターが同時に前面に出てきた。このチャンスをつかまなければならない。 

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