いま日本の経済は、問題が山積みである。
債務残高の対GDP比は、昨年200%を超えた。
デフレはすでに20年続き、円高株安の流れも止まらない。
新聞や雑誌は暗い予測ばかりし、「日本が沈没する」と不安を煽る。
けれど、そうした悲観論を鵜呑みにしてはいけない、と僕は思う。
メディアが不安を煽るのは、商売のためだ。
不安を煽らなければ、人びとはテレビを見ないし、新聞や雑誌を買わない、
そう大手メディアの人は思い込んでいるのだ。
では本当はどうなのか。日本経済は沈没するのか。メディアが煽っているだけなのか。
そういう疑問を、僕がもっとも信頼する2人のエコノミストに徹底的にぶつけてみた。
ひとりは、元大蔵省財務官の榊原英資さんである。
榊原さんは国際金融局長などを歴任し、「ミスター円」の異名を持っている。
もうひとりは竹中平蔵さんだ。
経済財政政策担当大臣などを歴任し、小泉内閣の構造改革を主導した。
元大蔵省官僚と、規制緩和を主導した経済学者。
経歴も考え方もまったく異なる彼らが、対談することなど普通はあり得ない。
その2人が、僕の質問に率直に答えてくれたのだ。
国債について榊原さんは、こう答えてくれた。
「少なくとも5年は暴落はない。供給が大きくなってもまだ充分需要がある。
日本人は国内貯蓄がほとんどだからだ」
一方、竹中さんの答えはこうだ。
「いますぐ暴落する懸念はまったくない。ただし、プライマリー・バランスを
回復するシナリオを、そろそろ作らなければ危ない」
つまり、すぐに国債が暴落することも、財政が破綻することもない。
だが、国の収支をできるだけ早い時期に、黒字に持っていかなければならない
ということだ。
消費税増税については、2人とも、
「消費税は上げる必要はあったが、だが時期がよくない」
と意見が一致している。
そして将来的に消費税は、
「少なくとも15%まで引き上げなければダメだ」
と榊原さんは述べた。
竹中さんの答えは、
「消費税増税だけでは財政再建はできない」「まずは市場の活性化を最優先すべき」
であった。
原発の問題でも、2人の答えは一致していた。「原発ゼロ」である。
そのうえで、竹中さんは
「電力を自由化し、市場メカニズムを働かせるべき」
と訴え、榊原さんは
「原発から予算を付け替えて代替エネルギーの開発をすべきだ」
と答えた。
この話の中で、僕がとても印象に残ったことがある。
2人の意見が、「日本の未来は明るい」ということで、はっきりと一致したことだ。
榊原さんは、日本は自然環境がよく、
「環境技術も水道技術も文句なく日本が世界一」
であることを挙げる。
そして、竹中さんは、そのような日本のポテンシャルが
「100%発揮できる政策がほとんど採用されていない」「もっと自由が必要だ」
と現状に苦言を呈す。
日本経済の問題点や現状分析では、両者の意見はほぼ一致している。
水と油の2人の意見が一致するということは、議論の余地がない確たる事実だと言っていいのだろう。
一方、対応策や政策面については、多くの点で対立した。
ここが、きっと日本の分岐点となるにちがいない。
この2人の激論で、低迷する日本経済への「答え」が明らかになったと僕は思ったのだ。
この鼎談は、『それで、どうする!日本経済 これが答えだ!』というタイトルで1冊の本にまとめた。
日本と日本経済の問題がよくわかり、いま僕たちが何をすればいいのか、どうすれば、「日本の未来が明るくなるのか」がはっきりと明示された、自信作となっている。
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