ガミジンのブロマガ

環太平洋パートナーシップ協定の概要(TPP交渉の大筋合意で何が決まったのか)

2016/04/04 01:20 投稿

  • タグ:
  • TPP
  • 外交
  • 協定
  • 政府
  • 雑記
1.序
 
 最近のトピックスである環太平洋パートナーシップ協定(以下、TPP協定)によって具体的に何が変化するのかを説明するには、あまりに多岐にわたっているため困難である。最近では、著作権問題にからんだ話題が提供されているが、この話題はTPP協定のほんの一部分であり、本質をあらわしていない。
 TPP協定は、アジア 太平洋地域に位置する参加国の間で、貿易・投資の自由化、各種経済制度・ルールの調和 等を実現することにより、参加国相互の経済連携を促す経済連携協定とされており、その本質は、流通問題全般を示している。
 そこで、政府資料調査からどのような話が大筋合意しているのか 眺めながらそこに内在する課題について述べていきたい。
 
2.健康問題に関わる協定
 
 TPP協定の中に「物品市場アクセス」と「原産地規則等」に関して検討されている事項がある。柱は輸出入規制の緩和であり、関税撤廃や食品検疫基準の統一が盛り込まれている。
 具体的な内容だが、平成 27 年 10 月 5 日公開された内閣官房TPP政府対策本部の政府資料によれば 輸入量の少ない作物の関税撤廃や、現状主要で輸入している米、牛肉、豚肉、乳製品、甘味料の取引方式をSBS方式化し*1)、さらには関税割当数量*2)の年次規制緩和が進められるとのこと。
 特に需要者と輸入先が共同で契約できるSBS方式では、低品質製品の輸入を行うことも可能である。BSE問題で輸入規制の敷かれた牛肉については記憶に新しいが、牛肉・豚肉においては大きく関税率の削減が設定されているため、5年以上の規制実績がない限り、輸入規制を敷いていた産出国の加工肉であっても、低関税率で輸入することが可能である。
 この低関税率がなぜ問題であるかはいうまでもないが、高品質製品との価格差から一般消費は低品質製品の方が上回るためである。輸入品質基準については TPP協定の中で共通の基準を設けることになるが、BSE問題対策基準をはじめ日本独自の高い品質基準をTPP協定国に適応させることが困難になっていくことに注目したい。
 次に問題なのは、「原産地規則及び原産地手続」に関してである。現在の大筋合意されたTPP協定によれば”輸出者、生産者又は輸入者自らが原産地証明書を作成する制度の導入”が検討されている。我が国の食品産地偽装問題は多く、(独)農林水産消費安全技術センター調べによれば食品自主回収件数のうち半数は「表示不適切問題」であり、輸入者自らの証明書制度の適正運用は依然不透明である。
 食品だけでなく、この基準は医薬品製品、工業製品にも適用される。

 *1)SBS方式
 予め需要者及び輸入業者が結びつき、輸入銘柄、輸入港及び輸入時期等を選択できニーズに細かく対応した取引ができる。一般の輸入方式に比べて政府の保管期間が短い。


 *2)関税割当数量
 関税割当制度とは、一定の輸入数量の枠内に限り無税又は低税率(一次税率)を適用し需要者に安価な輸入品の供給を確保する一方、この一定の輸入数量の枠を超える輸入分には高税率(二次税率)を適用することによって、国内生産者の保護を図る仕組みである。 
出典 農林水産省HP  1.関税割当制度 
http://www.maff.go.jp/j/kokusai/boueki/triff/t_kanwari/01/
国立国会図書館 調査及び立法考査局 調査 第884号 「環太平洋パートナーシップ協定の概要
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9549824_po_0884.pdf?contentNo=1
*内閣官房TPP政府対策本部「環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)の概要」
http://www.cas.go.jp/jp/tpp/pdf/2015/10/151005_tpp_gaiyou.pdf
3.衛生植物検疫措置で抱える問題

 検疫は我々の健康を維持する上で欠かせない検査である。病害虫の運搬手段としてしばしば輸入作物への混入が指摘されている。我が国では独自の衛生基準を設け検疫を行っている。現在は多くの国で様々な検疫基準が存在する。このさまざまな検疫基準のためある国では品質に問題のない輸出製品でも別の国では輸入基準に達さないため規制をかけられる貿易障害が発生している(外交問題から輸入規制が敷かれることも多い)。
 TPP協定において検討された事項の一つに、「ある健康問題が締結国の輸出製品で発生した場合、輸出国に対して検疫手法の公開を要求し、180日以内の是正を目的とし専門機関の設置を求める権利を発生させることができる」がある。
一見すると合理的な手法に見えるが、TPP協定の現状では締結国共通の基準作成はまだなされておらず、この制度を外交利用される懸念がある。
 具体的に言えば、衛生問題の疑義を制裁国に設けることで 疑義の対象となる製品の輸出規制をかけることが可能である。疑義対象製品に問題がなくとも少なくとも SPS既定の専門家協議の招へいに必要な37日間の輸出規制をかけることができる。これが複数の輸出製品で行われた場合深刻な経済問題を招きかねない。
 そのような疑義発動の阻止のためにTPP締結国共通の検疫基準の策定は急務であるが 全製品を網羅する規定はまだなされていない。

4.TPP協定を見据えた制度改定に伴う大幅なシステム開発

 TPP協定に絡む分野は、上記以外にamazonやGoogleなどの「越境サービス」や「金融サ ービス」、「投資」、「調達」に大きく関係してくる。新システムに即応したグローバル開発は必須であり、今後は海外協定に精通したコンサルタント事業、商社、システム開発の分野が伸びてくるであろう。しかし、我が国では二国間投資協定の実績は低く、世界で2500ある投資協定の内わずか11しか行われていない。特に「調達」や「投資」の分野でグローバル開発が進められる場合、未知の障壁が生じることは想定される。こうした障壁に対するセーフガードの設定は依然不透明である。
 調達」や「投資」の分野では 二国間投資協定の多い海外技術の輸入が先んじて行われることになる。そのため国内技術保護を見据えたシステム開発が遅れることは懸念すべき点である。

5.結

 TPP協定でしばしば取り上げられる知的財産権の問題だけでなく、物品市場アクセス・原産地規則等分野の問題、貿易の技術的障害(TBT)、TPP締結国同士の競争政策が抱えるリスクは大きい。リスク回避のための様々な開発は進められるだろうし、そこに新たな経済利益が創出されるが、問題解決への投資リスクを回避できるかは疑問である。我が国の利益保護の観点からTPP協定の中での統一基準の策定や損失に対するセーフガードの策定は急務であり、課題である。

コメント

コメントはまだありません
コメントを書き込むにはログインしてください。

いまブロマガで人気の記事