ピザ屋でアルバイトする売れない漫画家・悟は、ある日突然「リバイバル」という特殊な現象に見舞われるように。それは、周囲で悪いことが起きる気配を察すると自動的にその数分前に戻り、事件や事故の原因を取り除くまで何度でも繰り返すというものだった……。
自分だけの時が巻き戻る現象“リバイバル(再上映)”に悩まされる青年・藤沼悟が、自らの過去と対峙し、もがく姿を描く三部けい先生の“時間逆行”サスペンスを実写化した、映画『僕だけがいない街』。いよいよ3月19日より公開となりました。今回ガジェット通信では主演の藤原竜也さんにインタビュー。作品の魅力についてから、最近観て感動したアニメまで、色々なお話を伺いました。
―本作、とても楽しく拝見させていただきました。『僕だけがいない街』の主演に起用された時のお気持ちを教えていただけますか?
藤原:これまで色々な漫画原作の映画をやらせていただいて、さすがに次は違うだろうと思っていたら今回も漫画原作だという事で。なるほどそうか、と思って。でも漫画原作といっても、人を操ったり惑わせたりする能力物では無いよな、と思っていたら「時間が巻き戻ってしまいます」と聞いて、そうかい、なんて思って(笑)。そこから本をいただいて初めて読んだのですが、こういう面白い漫画を知らないでいるのは損するな、と思うほどハマってしまいました。
―原作を読まれていかがでしたか。
藤原:ストーリーが緻密に計算されていて、純粋に面白かったし、『僕だけがいない街』を読んでいると、何か自分の過去を投影するというか。子どもの頃寒い冬に友達と歩いた事とかを思い出して、すごく暖かい気持ちになったんですよね。実写化するにあたり、その時には原作も完結していなかったので、どういう終わり方にするのかな、とか、平川監督や(有村)架純ちゃんとも初めてでしたし、どうなるのかなと、楽しみでした。
―『僕だけがいない街』は現実世界のお話でありながらも、再上映(リバイバル)などの表現があり、漫画原作の中でも、特に実写化が難しかったのでは無いかと思うのですが。
藤原:漫画で読んでいると、ある飛躍っていうのは気にならない、でも実写化にするとその空白の部分を埋めないといけない。そこの作業は気を遣いますよね。なので、もちろん原作は一番のお手本ではありますが、そこまで気にし過ぎない様にしながら。再上映(リバイバル)が実際にどう起るか、というのも現場ではどんな絵(画面)になるかは分からないので、完成した映像を観てこう観えるのか、と納得しました。
―完成した映画をご覧になっていかがですか?
藤原:すごく良かったですね。僕は子ども達が主役の映画だと思っています。鈴木梨央ちゃん演じる雛月の抱えている問題とか、今の時代にもそういった子どもはたくさんいて、すごく切ないお話ですよね。平川監督が本当にこだわりを持って、1カット1カット粘って撮って、なおかつ同じシーンの別バージョンも撮るという大変な撮影の中で、皆すごく頑張っていたと思います。
―悟の子ども時代を演じた中川翼君も素晴らしかったです。
藤原:本当にすごいですよね、子どもって。まだ11歳くらいで。僕らが撮影している時にも、翼君が汗だくで泣きながら演技指導を受けたり、監督の演出に食らいついている姿を見て、あの年でそれだけ揉まれていたらすごく貴重な財産になるなと思いましたね。実際完成した映画を観ても、彼らの真剣な姿勢が作品に暖かみを与えてくれたなと感じました。僕、ビーチサンダルに短パンで現場に行っていたんですけど、ある日翼君がビーサン短パン姿で来て、「藤原さんを尊敬してこの格好にしてきました」と。「他の現場ではやめとけよ」と言っておきましたけど(笑)。本当に可愛かったですね。
―藤原さんが演じられた悟という役は、本業は漫画家だけれど、今はバイト生活で少しくすぶっていて……という今時の青年だと思うのですが、そういった普通の青年を演じる事は難しく無かったのでしょうか。
藤原:今回、監督が本当に自由にやらせてくれて、自然体で演じられたので、そういう苦労はあまりありませんでした。僕、出身が埼玉の山奥なんですけど、その頃って『僕だけがいない街』の様な出来事ってたくさんあったんですよ。「知らない人についていっちゃいけない」「この車には近づいちゃいけない」というプリントがまわってきたり。それで、僕は実際に悟みたいに正義感を持って「犯人をつかまえるぞ!」とか意気込んでいたので、そう考えるとこの作品と共通点が多いですね。デパートの屋上で観たヒーローに憧れて、自分もそうなりたいと思う、悟の子ども時代に近いかもしれないですね。
―実際、再上映(リバイバル)に巻き込まれるとしたらいつに戻りたいですか?
藤原:14歳で演劇の世界に入ったのですが、その判断がプラスだったのかマイナスだったのかを確かめてみたいですね。
―もし戻れて、違う道に行くとしたら?
藤原:子どもの頃は本気で、西武ライオンズの選手か浦和レッズの選手になりたかったんです。今もスポーツを観るのがすっごく大好きで。スポーツ選手って究極の趣味の延長というか、楽しいんだろうなって、芝居をすることを「楽しい」とは言えませんからね(笑)。
―それでも俳優を続ける楽しさはどにあると思いますか?
藤原:だんだん分からなくなってきますね。やればやるほど難しくて、じゃあなんでやるのかって考えたら、今回で言えば平川監督や架純ちゃんを始めとするスタッフ・キャストの皆さんとの出会いであるし、作品ごとの新しい出会いが自分を次に進めさせてくれるのかなと思います。
―普段漫画をあまり読まれない藤原さんが『僕だけがいない街』を読んだのも、まさに出会いですね。
藤原:本当に「知らない」ということは損だなと思いますね。中村勘九郎さんとか漫画が大好きで、たくさん読んでいるので、最近は「これいいよ、あれいいよ」って勧めてもらっています。そうして手に取ったものが実写化されるかもしれないし、もしかしたら自分がやらせていただくかもしれない。そういう楽しみもありますよね。でも、自分が大好きな作品は実写化して欲しく無い、そういう気持ちは僕にもあるんです(笑)。
―ちなみに最近ご覧になって一番お気に入りの作品はありますか?
藤原:僕は秩父出身なんですけど、最近遅ればせながら『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』を観ました。本も読んで。「めんまからの手紙」あるじゃないですか、最初はめんまって変な名前だななんて思っていたんですけど、気付いたら声あげて泣いていましたね(笑)。
―今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!
僕だけがいない街
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(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会
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