バチカン市国の日刊紙オッセルバトーレ・ロマーノは、映画『スポットライト 世紀のスクープ』が、2月28日(現地時間)に弟88回アカデミー賞作品賞を受賞した後、バチカン初のオフィシャルコメントとして、同作を「説得力がある」 「カトリック教会と対立する立場を取るものではない」と、称賛した。
日刊紙オッセルバトーレ・ロマーノは教皇庁が所有する新聞媒体であり、2月29日午後(現地時間)に発行された同紙一面の社説によると、『スポットライト 世紀のスクープ』は、カトリック教会による児童性的虐待の調査を行うボストン・グローブ紙記者らの姿を再現したもので、“悲惨な現実”にもかかわらず、一体どれだけ教会側が自らを守ろうとしてきたのかを忠実に描写している、と記している。
記者のルセッタ・スカラフィアは、「弱い人間を食い物にする捕食者たちが、必ずしも聖職者の衣服を身に着けているわけではないし、小児性愛が必ずしも純潔の誓いから生じるわけでもない」と、警告した。そして、「だが、教会内のいかに多くの人間が、虐待行為の重大性よりも教会のイメージが重要だと考えていたかが明らかになった」と、続けた。
さらに社説では、ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われた弟88回アカデミー賞授賞式で、『スポットライト 世紀のスクープ』の共同プロデューサーを務めるマイケル・シュガーが、フランシス教皇に呼びかけのメッセージを述べたことについても取り上げている。それについては、「前向きなメッセージとして受け取るべきだ。教会の信用はまだあり、フランシス教皇は、以前の教皇たちによって始められたことの後始末を熱心に進めている」と、記されている。
2015年9月、ヴェネチア国際映画祭で『スポットライト 世紀のスクープ』のワールドプレミアが開催された際、トム・マッカーシー監督は本紙ヴァラエティに、同作がカトリック教会にどのくらい影響を及ぼすかについて悲観的になっていると語った。マッカーシー監督は、「カトリック教会はなかなか変化しない、何をするにも時間がかかるんだ」と、語った。そして、「誰かが “教会側からどんな反応がくると思う?”と言った。私は、“誓ってもいいが、カトリック教会からは何の反応もないだろう” と答えた」と、続けた。
どのくらい影響があったのかは今のところ不明だが、いくつかの反応はあった。2月初めにフランシス教皇が設立した、カトリック教会内での性的虐待を防ぐことを目的とした新しい委員会は、『スポットライト 世紀のスクープ』のプライベート上映とともに始動した。
また、2月28日(現地時間)に行われた弟88回アカデミー賞授賞式の直前、フランシス教皇の財務顧問のトップを務めるジョージ・ペル枢機卿は、オーストラリアの法廷が徹底的に調査を進めている、カトリック教会やその他の機関が数十年に渡る児童虐待をどのように扱ってきたのかという問題について、ローマからビデオ中継を通して証言することに合意した。繰り返し不正行為を否定するペル枢機卿は、彼がメルボルンとその後シドニーで大司教を務めていた時期に、聖職者による児童虐待の事件の取り扱いを誤ったという疑惑についての質問に答えるため、呼び出しを受けることになる。