ヨーロッパにおける魔女の起源や歴史を多角的に紹介する『魔女の秘密展』が、東京・ラフォーレ原宿ミュージアムを2016年2月19日から3月13日まで開催。オープンに先駆けて、編集者・評論家の山田五郎さんと、東京展オフィシャル・アンバサダーを務める声優・歌手の上坂すみれさんが登場して見どころを紹介しました。
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2015年3月の大阪を皮切りに新潟・名古屋・浜松・広島を巡回してきた『魔女の秘密展』。ドイツのブファルツ歴史博物館で2009年に企画開催された展示をもとにしており、ヨーロッパ各国で所蔵されている絵画や展示物などが来日しています。
監修者でドイツ文学者の西村佑子さんは「魔女裁判は中世ではなく15~18世紀に行われています。今の日本でもさまざまな魔女がアニメやマンガに出ているが、魔女の歴史を知ってほしいです」と本展の意義を強調しました。
図録にもコラムを寄せている山田さんは「街の裁判所で法律にのっとって一般の人が裁かれていて、そのために拷問が行われた。魔女だと訴えるのも普通の市民で、魔女だと言われると負けということが起こっていた。これは現代のいじめやネットでの噂からのバッシングにも通じます」と、現代に魔女の“真実”を問う意味を語ります。
魔女をイメージした全身黒ゴシック姿で登場した上坂さん。「私もアニメやマンガを見て育ってきていて、日本の女の子は魔女っ子のことを憧れとして捉えているのけれど、自分の抱いているファンタジー的な要素とは大きく違っていました」と話し、魔女裁判の実態や拷問器具について驚いた様子でした。
入場するとまず迎えてくれるのが、日本の漫画家による魔女たちのイラスト。真島ヒロさんの『FAIRY TAIL』や吉河美希さんの『山田くんと7人の魔女』、『シュガシュガルーン』を描いた安野モヨコさんの作品が展示されています。
会場は「信じる」「盲信する」「裁く」「想う」の4つのゾーンに分かれています。疫病や戦乱に悩まされた近世のヨーロッパ。魔除けの処方箋や護符には悪魔から身を守ろうとした市民たちの心理をうかがい知ることができます。
18世紀のものとされるお守り紐。山田さんは「何かにすがって身を守りたいという心理は、古今東西同じ」と語るように、災厄から逃れたいという考えは現代にも通じるものがありそう。
ペストに襲われたり、宗教革命による戦争などが頻発した近世のヨーロッパ。骸骨もまた「悪」の象徴と見なされていました。1780年にヨハン・ペーター・シュヴァンターラー(父)によって制作された「死神や悪魔と一緒にいる哀れな亡者たち」は罪が浄化されることを願う者たちが煉獄で苦しみが和らぐことを知る姿を示しています。
上坂さんも印象的だったと語った拷問器具「苦悩の梨」。口の中を広げられて歯が折れて顎が砕かれるという凄惨さで、自白を引き出すのに効果的だったのだとか。
そのほかにも、手枷や身体用のリング、頭部用のリングなど、さまざまな拷問器具も展示されています。また、自白に至るまでの裁判官の審問をビジョンによって表現。実際に裁判にかけられ精神的に追い詰めていく様子も追体験できるような構成になっています。
処刑用の車輪。中央に描かれたドクロが禍々しいイメージを見るものに与えます。
自白により魔女だと認定され、火あぶりの刑に処せられる情景は、ホログラムなどを使って表現されています。燃え盛る火と魔女を見る市民たちの様子も、ビジョンによって表現。当時の服や絵画と合わせて、その残酷さを感じ取ることができるようになっています。
入口前には、拷問椅子が。ここに座って記念撮影も可能です。
「私のような日本の魔女っ子アニメを見て憧れた人には衝撃的な内容の展示会だと思うのですけれど、歴史上の魔女のことを知ることができるので、若い人に見てほしいです」と上坂さんも話す『魔女の秘密展』。ヨーロッパのダークな歴史を、貴重な展示物を見ることによって触れることができるので、日本の“魔女”のイメージのまま見ると驚くことの連続になるのではないでしょうか。
参考:”ワルプルギスの夜”の由来は? 大阪文化館・天保山開催の『魔女の秘密展』がガチだった
http://otajo.jp/46542 [リンク]
魔女の秘密展 Secret Witches Exhibition
http://www.majo-himitsu.com/ [リンク]