蚊によって媒介される感染症「ジカ熱」が南米を中心に問題となっています。
ジカ熱とは、1947年にアフリカ・ウガンダの森林に住むアカゲザルから検出されたウイルスです。蚊によって媒介される(血を吸われる)ことによって媒介されるウイルスですが、感染した場合、発熱・発疹・関節炎・筋肉痛や頭痛、めまい、下痢や嘔吐などの消化器症状といった症状を訴えるのが特徴です。
なおジカ熱ウイルス自体の予防接種や、治療薬は現在存在していませんので、感染した場合は、対症療法が主体となります。
ただし、不顕性感染といって、ジカウイルスに感染した人のうち、80%の人は症状が出ないことが指摘されています。
妊娠中の女性が感染した場合の小頭症の可能性
ジカ熱は、現在南米で流行を見せています。致死的な症状がでないにもかかわらず、WHOをはじめとした世界的な専門機関が警戒しているのは、妊娠中の女性がジカウイルスに感染した場合、小頭症の赤ちゃんが生まれる可能性あると報告されたためです。
小頭症とは、標準的な新生児に比べて、頭蓋骨が小さく、脳の発達に影響を与える疾患です。
実際、死亡した小頭症の新生児からジカウイルスが検出されており、妊娠中の女性がジカウイルスに感染すると小頭症の新生児が生まれる可能性があるのは間違いありません。
ただし、小頭症を引き起こすのは、ジカ熱だけでなく、風疹やサイトメガロウイルスの感染によっても起こりえます。蚊に刺されないことを前提に、風疹などと同じように、対策を講じれば、あまり恐れる必要はないともいえます。
性交渉でも感染する可能性
また、ケースとしては非常に少ないとしながらも、ジカウイルスに感染した男性の精液から、女性にジカウイルスが感染するケースがわかっています。したがって、ブラジルをはじめとした流行地域に渡航して1ヶ月は、性交渉を控えるか、もしくはコンドームなどを使用すべきでしょう。
日本での感染拡大はありえるか
現時点では、ブラジルをはじめとした南米で流行が続いています。日本での感染拡大を心配される方がいますが、むやみに心配しすぎる必要はないものの、もし、感染流行地へでかけた方が感染すると、日本国内での感染流行はありえるという前提で対策が協議されています。
ジカ熱ウイルスを媒介するのは、以前話題になったデング熱と同様、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ(いわゆるヤブ蚊)が媒介することがわかっています。
したがって、感染流行区域でジカ熱に感染した方が帰国した場合、ヤブ蚊(ヒトスジシマカなど)が血を吸って、他の方にジカ熱が感染する可能性はあります。厚生労働省は、届け出が必要な第4類感染症に指定する準備をするなど、感染拡大に対する対策を進めています。
しかしながら、蚊の駆除に対する体制が強化されていることや、現在感染流行が続いている中南米と違って、日本は冬期が存在します。そのため、感染流行が起こる可能性は低いという説もありますが、著者も個人的には同様の意見です。
今年は、夏に、ブラジルのリオデジャネイロオリンピックが開催されます。妊婦の方は感染を避けるために渡航するのを控えるべきだという意見がありますが、少なくともリスクを理解した上で出かけるべきでしょう。
繰り返しますが、ジカ熱についてはワクチンはありません。また、治療薬がないため、長袖や長ズボンなどで呼ぼうするくらいしか積極的な対策がないのが現状です。
感染流行地域や、今夏のリオデジャネイロオリンピックに出かける方は、情報収集と感染時の対症療法についての対策をしっかり行ってから出かけることが重要です。
※参考 ジカ熱感染で視覚障害の可能性も 感染疑いの小児は眼科専門医の検査を
http://getnews.jp/archives/1395274 [リンク]
※写真はイメージ PHOTO AC http://www.photo-ac.com/main/detail/16833?title=%E8%9A%8A%EF%BC%94 より
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