ゴールデングローブ賞は予測が不可能なことで知られており、その点において、今年は最もゴールデングローブ賞らしい結果となった。
主要部門を制覇した『レヴェナント:蘇えりし者』や『オデッセイ』、純情な少女役でブレイクしたブリー・ラーソン、カムバックを果たしたシルヴェスター・スタローンなど、受賞作の多くが驚きとは言えない一方で、テレビドラマ部門は予想から大きく外れた結果となった。さらに、映画部門においてもいくつかの衝撃があった。
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以下に、第73回ゴールデングローブ賞における15の冷遇と驚きを紹介する。
冷遇:『キャロル』
どの作品よりも最多のノミネートを果たしたにも関わらず、トッド・ヘインズ監督が手掛けた1950年代のレズビアンロマンスは、『レヴェナント:蘇えりし者』のような派手なライバルとは対象に、いずれの賞の獲得にも至らなかった。主演女優賞(ドラマ部門)にノミネートされたケイト・ブランシェットとルーニー・マーラは、2人の票が割れてしまったのかもしれない。
驚き:ケイト・ウィンスレットとアーロン・ソーキン/『スティーブ・ジョブズ』
授賞式の最初の驚きは、採算ベースを下回る伝記映画で、ケイト・ウィンスレットが映画部門として最初に発表された助演女優賞を獲得したことだ。さらに、ソーキンの番狂わせと言える脚本賞受賞は、同作に対するハリウッド外国人映画記者協会の好意を強固なものにした。
冷遇:『スポットライト 世紀のスクープ』
批評家グループの受けが良く、協会からもかなりの支持を得ていたが、トーマス・マッカーシー監督の高名な映画は手ぶらのまま会場を去ることになった。
冷遇:『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
ノミネートによる躍進と興行収入における確かな実績のおかげで、予想家の間では勢いを増し、アダム・マッケイ監督が手掛けた経済危機コメディが作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞すると期待する声もあった。しかし、なぜかミュージカル・コメディ部門に分類されたメガヒット作『オデッセイ』に敗れた。
驚き:ジェニファー・ローレンス/『Joy(原題)』
ジェニファー・ローレンスは、デヴィッド・O・ラッセル監督と組んで3度目のノミネートを果たし、3度目の受賞を獲得した。ローレンス本人さえも、(BFF=永遠の大親友)女優仲間、『Trainwreck(原題)』でノミネートされたエイミー・シューマーを応援すると述べたにも関わらず、投票者は、ほとんど喜劇の要素がないローレンスの演技を支持することを選んだ。
冷遇:『FARGO/ファーゴ』
米ケーブルテレビ局FXの人気シリーズは批評家のお気に入りで、昨年のゴールデングローブ賞では主演男優賞(ビリー・ボブ・ソーントン)と作品賞(リミテッドシリーズ・テレビムービー部門)の2部門を受賞した。今年は、ノミネートを果たした3部門、作品賞(リミテッドシリーズ・テレビムービー部門)、男優賞(パトリック・ウィルソン)、女優賞(キルスティン・ダンスト)を全て逃した。
驚き:『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』
米アマゾンは昨年、異色コメディ『トランスペアレント』で作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞した。しかし、はるかに注目度の低いニューヨークのクラシック音楽シーンを風刺した『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』同様に、同作の再受賞を予想する者は少なかった。ガエル・ガルシア・ベルナルが主演男優賞を受賞し、昨年ジェフリー・タンバーが『トランスペアレント』で同賞を受賞したように、『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』も2部門を制した。
冷遇:Netflix(ネットフリックス)
今年のテレビドラマ部門で最多のノミネートを果たしたにも関わらず、ストリーミングサービス大手のNetflixは受賞数ゼロに終わった。人気シリーズ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック 塀の中の彼女たち』、『ハウス・オブ・カード 野望の階段』に加え、新作の『ブラッドライン』、『マスター・オブ・ゼロ/Master of None』、『グレイス&フランキー』、『ナルコス』など、ノミネートされた一通りの作品が落選した。有力候補と思われた実写映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』においても、唯一ノミネートされた助演男優賞(イドリス・エルバ)を受賞することは叶わなかった。
驚き:レイチェル・ブルーム/『Crazy Ex Girlfriend(原題)』
昨年は、『ジェーン・ザ・ヴァージン』でブレイクしたジーナ・ロドリゲスが女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を獲得したため、CWテレビジョン・ネットワークの『Crazy Ex Girlfriend(原題)』シーズン1で、ブルームが同様にこの賞を獲得したことについてそれほど驚きはない。しかし、リリー・トムリン、ジェイミー・リー・カーティス、ジュリア・ルイス=ドレイファス、そしてロドリゲスといった手ごわいライバルたちを考慮すると、今回も見事な離れ業と言える。
冷遇:2部門ノミネート
アリシア・ヴィカンダー(『リリーのすべて』『Ex Machina(原題)』)、リリー・トムリン(『グレイス&フランキー』『愛しのグランマ』)、イドリス・エルバ(『ビースト・オブ・ノー・ネーション』『刑事ジョン・ルーサー』)、マーク・ライランス(『ブリッジ・オブ・スパイ』『ウルフ・ホール』)は今年2部門でノミネートを果たしたが、良い結果とはならなかった。4人はそれぞれ、どの部門も受賞することはなかった。
驚き:ジョン・ハム/『MAD MEN マッドメン』
ハムは、受賞スピーチの中で、『MAD MEN マッドメン』に対するハリウッド外国人映画記者協会の長年の支援に感謝を述べた。しかし正直に言えば、ここ数年、協会は同作についてそれほど夢中だったわけではない。米ケーブルテレビ局AMCの同作は2011年以降ノミネートに恵まれず、それ以来、ハムが唯一2度目のノミネートを果たした。だから、ハムの最終シーズンでの(全シーズンでは2度目の)受賞は、決して確実なものというわけではなかった。
冷遇:『ゲーム・オブ・スローンズ』
米ケーブルテレビ局HBOのファンタジー大作は、未だにゴールデングローブ賞の作品賞(ドラマ部門)を受賞したことがない(今年は新作『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』に敗北した)。シーズン5の放送を予定している同作が唯一受賞したのは、ピーター・ディンクレイジが助演男優賞を獲得したシーズン1までさかのぼる。
冷遇:『トランスペアレント』
米アマゾンの人気シリーズは昨年2部門を制したが、今年はノミネートを果たした3部門、作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、男優賞(ジェフリー・タンバー)、助演女優賞(ジュディス・ライト)の全てで受賞を逃した。
驚き:クリスチャン・スレーター/『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』
作品賞(ドラマ部門)を受賞した『MR. ROBOT/ミスター・ロボット』は、ブレイクを果たした番組を高く評価するパターンに合致する。しかし、アラン・カミング、ダミアン・ルイス、トビアス・メンジーズ、ベン・メンデルソーンといった手ごわいライバルを押さえて、熟練俳優のスレーターが初めての助演男優賞を獲得したのは驚きだった。
冷遇:ロブ・ロウ
米テレビ局FOXの『The Grinder(原題)』に出演するロウは、低評価のコメディで男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートを果たしただけでも光栄だっただろう。しかし、ロウがゴールデングローブ賞の受賞を逃すのはこれで6度目となる(映画『スクエアダンス』、テレビ映画『サーズデイ・チャイルド』と『恋するリベラーチェ』、そしてテレビシリーズ『ザ・ホワイトハウス』のノミネートで過去に受賞を逃していた)。