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FF14プロデューサー吉田直樹&ひろゆき対談(前編)

2013/01/05 04:31 投稿

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吉田直樹ひろゆき対談

12月26日21時よりニコニコ生放送で『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』(以下、FF14)の生放送が行われた。この番組に新生FF14プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏、ニコニコ動画管理人のひろゆき氏が出演し、初出しのトレーラーやスペック別PC比較などのほか、α版テスター達と共に巨大モンスター『デュラハン』に挑むなど非常に充実した内容となった。その放送後、吉田プロデューサーとひろゆきさんの対談が実現。放送では語られなかった「ゲーム観」やディレクターとしての側面なども垣間見える内容となった。

■僕の仕事を見てから決めてくれて良いよ

吉田:僕は『スクウェア・エニックス』(以下、スクエニ)に入って8年ですが社内では外様なんです。元々『ファイナルファンジーシリーズ』(以下、FF)の開発に1度も関わった事が無くて。『ドラゴンクエストX』(以下、ドラクエ10)立ち上げのタイミングで4人目のメンバーとして入っているので、本当はそれを作っている筈なんですが『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』(以下、バトルロード)のゲームデザインとディレクションをやることになって、それらをかけもちでやりながら、気が付いたらここにいた感じですね。

FF14を引き継いだ時は、あんまりスタッフも僕を知らなかったんですよ。で、例えば吉田明彦とか、『タクティクスオウガ』から『ファイナルファンタジータクティクス』を経て『ファイナルファンタジーXII』をやっている皆川(裕史)とか、あの辺とは仲が良かったんですけど、いわゆる旧スクウェア側の開発スタッフは僕を殆ど知らない人ばかりだったんで。きっとみんな「俺達の上に立つんだったら、どれほどの……」というものもあるだろうと思ってましたね。

FF14のスタッフに最初に挨拶をした時「ついて来るか来ないかは、僕の仕事を見てから決めてくれて良いよ」という話からスタートしました。でもグラフィックスに関してもデザイナーに知識で負けたくないというのがポリシーだし、プログラムのアルゴリズムに関しても元々コードを書いていた人間なので、何から何まで僕はちゃんと知ってるし、ある意味スタッフをチカラでねじ伏せるのも必要かなと。結局それから今まで、ずっとこの一人でプロデューサー兼ディレクター体制ですね。

■「あの人は全部答えてくれる」という信頼

ひろゆき:上の人は何で吉田さんを選んだんですかね?

吉田:さあ、なんでしょうね。僕はあんまり言葉を隠さないので「そりゃないんじゃないの?」というのをうちの和田にも言っちゃう人間なんですが……。ただ、バトルロードやドラクエ10を含めて、実績自体は出してきてはいるので……。うーん、なんだろう。でも実は正社員になったのも4年か5年前なんですよ。

ひろゆき:そんなもんなんですか。

吉田:僕(正社員化を)断っていたんで。そっちの方が昇給率が良かったから(笑)やればやっただけ、というのが契約の良いところなので。でも、全社案件もこなすようになってしまって、そうも言ってられなくて「いくらで正社員に採用してくれますか?」って。

ひろゆき:結構上からっすね。

吉田:額面ではなく自分の価値という考え方をしていて、これはスクエニに入る以前からです。自分の価値は2通りあって、ひとつはスタッフから見た自分の価値。僕は仕事はしゃかりきにするし、寝ないでもやるほうなので、ゲーム製作スタッフから見た自分の価値を計るものって、仕事をしたことのあるスタッフが「また一緒に仕事をやりたい」と言ってくれるかどうかだと思っているのです。じゃあ会社にとっての自分の価値って何?ってなると、突き詰めていったら、究極はお金なのかな、と。「いくらですかね?」っていう。高いか低いかではなく、「自分に対するこの金額の意図は何だろう」っていうのにこだわる方だったので。

ひろゆき:時給単価で言ったら安いですよね。

吉田:超安いですよ、全体掌握のために勤務時間ながいので(笑)例えば今日みたいなライブ(生放送)をやったときに、お客様からいただいた質問に対して「じゃあそれ開発に確認しておきますね」って答えでは「それって、いつ答えてくれるの?」ってなっちゃうじゃないですか。それより「あの人は全部答えてくれる」の方が信頼してもらえるのかなと。「ちゃんとこの人は隅から隅まで見て、判断して出す」ってところは、誰に対しても信頼に繋がるよな、と。

■好きな人に熱く語ってもらう

ひろゆき:今のゲーム開発って大規模開発化していて、昔は全部を知っている人がいましたけど、今は全部知らないのが当たり前じゃないですか。そこは抗わなくても普通じゃないですか。犠牲にしている部分が大きくないですか?


吉田:うーん。。。でも知らないよりは知っていた方がいいじゃないですか。負けず嫌いだからかもしれませんが、ゲーム開発のセクションが極端に細分化した時期があって、テクスチャ1枚も専門の職人が書いている時代もありました。それじゃ結局海外の"テクノロジーでカバーする文化"に勝てないよって時に、「こういうテクノロジーがあるんだから」とディレクターなりが話をしていかないと、価値観って変わっていかない。ずっとディレクターのテクノロジーが古いままで止まっていると「いいからテクスチャ描きなよ」みたいな話になっちゃって、そこらへんもあってですかねぇ。

ひろゆき:それだけ仕事やっていると他のゲームをやっている暇ないじゃないですか。ライバルが何をしているかとか。

吉田:寝ないでやっています。

ひろゆき:やべぇ参考にならねぇ(笑)

吉田:ただちょっとゲームに関してポイントがあって、例えばウチのスタッフの中でもゲームの得意分野ってあるんですよ。FPSが超大好きで、出たらとにかく全部のFPSをやる。グローバルスタンダードMMOが大好きで、メジャーなものしかやらないけど、やる時は徹底的にやる。で、話をして貰うんです。僕が興味はある、でも時間的にカバーできないってものは「死ぬほどプレイしてくれ、だって好きだったらやるよね。」と彼らにお願いします。で、何が良かったかをひらすら語ってもらうんですよ。そこから「こういう場合ってどうなの?」とか「ここってマズくない?」とかやりとりをしていると、だんだんプレイしている気になるんです。で、自分の知識にして次に生かす。好きな人に熱く語ってもらうのが何より1番ですね。自分がどうしてもやらなきゃならないものはやりますけれど、今年はそのパターンが凄い多かったですね、どうしても時間的に無理なので。

ひろゆき:周りにアホみたいにやる人がいるから情報が入るんですね。

吉田:今の日本のゲーム業界に足りなくなってきている気がしているんですが。人が増えたから薄まったのかもしれませんけれど、ゲーム好きが減ったなぁとは思います。「三度の飯よりゲームが好きで、ゲームしかしてこなかったから、ゲーム会社しか就職するところがなかったわー」みたいな人が減ったなと思っていて。ただ何人かはまだいるので、そういう連中とはつるむようにはしています。

ひろゆき:ソーシャルゲームはどうですか。世の中には、すげぇ払っている人っていて、そういった要素とかは取り入れないんですか?

吉田:あー、僕はソーシャルが全然駄目なんですよ。好き嫌いじゃなく、時間が無くてプレイができてないので、全然語れないんです。そこはもう理詰めでビジネスモデルだけ見ています。こういう課金導線があって、そのためにこういうシステムがあってっていう部分だけは勉強しました。社内にも好きな人はいますし。

ひろゆき:スクウェア・エニックスにも好きな人はいるんですか!?

吉田:いますいます。いくら払ってんだよ、しかも自社のゲームに!みたいな(笑)でもお金を払う心理をとつとつと語ってくれるんですよ。で、例えばインタビューで僕が聞かれると、さも自分が払っているかのようにとつとつと語る(笑)もちろん自分が何か連動しなきゃって時は(企画に)紐付けてみたり。(語られた理屈で)少なくとも1人は払う人がいるだろう、なぜならその理屈を語ってくれた1人はお金を払った訳だから。後はその「払った人」のマスがどれくらなのかっていうのは、そのゲームがどれくらいARPU(アープ:加入者一人あたりの月間売上高から転じて1人あたり月にいくら使うのか、を指す)が稼げているのかって情報は追っていけるので、そこから規模を見るとこの手のプレイヤーが何人いるから、こうすれば引っ張ってこれるな、と。逆にFF14みたいな、全ジャンルから見ればMMORPGという狭い輪の、その中にさらに専用ソーシャルゲームなんかを入れてしまうと、狭い輪の中で更に狭い輪になるので、外に輪を作った上で繋いだ方がいいよね、って話をしますね。ただ「じゃあどんなゲームにしますか?」と聞かれると、専門の人に「それは考えてよ」って感じですね。

ひろゆき:吉田さんはゲーム大好きって部分と、マーケティングとかビジネスモデルをどうするかって両方を突っ走っているじゃないですか。そこをちゃんと両立できる人って珍しいと思うんですけどね。

吉田:うーん…、そこは分からないですね。あまり比較しない方なので。でもやっぱりソーシャルだけで突っ走っている人に勝てるとは思っていないですし、ただ本質だけ教えてもらいたいって部分はあるので。そこから先は方針を決めてしまえば、作るプロはいるので「お願いします」でいいと思っています。

ひろゆき:知り合いにそういったプロが多いってことですか?

吉田:そうですね、気が付いたら仲良くさせてもらっていたり。社内にもスペシャリストはいるので、そこと話していったり。ただ、プレイしている人に聞く機会の方が圧倒的に多いですね。「ここにきっとゲーム仕様か課金導線か、トリックあるから掘ってきて」と話をします。でも僕も下積みが長くて、ゲーム業界に入る前におもちゃ屋でずっとゲームを売るバイトをしていたので「買ってくれるお客さんがどうやって財布を開くか?」とか「どんな人がこのゲームを買うのか?」とかは高校時代からあったので。わりと今でもそれを引きずっている気持ちは何となくありますね、バイトなのにゲームソフトの仕入れもやっていたので。

■高校時代からマーケティングに触れていた

多岐に渡る話題に答える吉田直樹氏

吉田:おもちゃの仕入れでスーパーファミコンの『真・女神転生』を60本入れて、3本しか売れなかったんですよ(注:当時のゲームはめちゃくちゃ売れたのです)。

ひろゆき:良いゲームなのに!

吉田:そうなんです、前に働いていたショップでは確実に売り切れていたレベルのゲームだったんです。高校を卒業して、専門学校に変わる際に、その前のショップに紹介されて次の店に行ったんです。で、新しい店でも前の店長のお墨付きがあって、次の店でもゲームの仕入れを任された時に、『真・女神転生』なら60本はいけるだろうと思ったら3本しか売れなくて……。つまりお店によって客層が違うってことを知らなかったんです。良いゲームだから、これくらい売れるだろうって感覚だったのが、次のお店は地下街にあってゲーム好きが買いに来るお店じゃなかったんですよ。「どこいっても売り切れで仕方ないから探し回ってたらあった」とか「たまたま通りかかった時に、子供の誕生日だから買わないと」みたいな人達が買いに来る店で。そりゃ売れないわっていう、そこを全然見て無くて。店長には本当に申し訳ないことしました。売れた3本のうち1本は吉田が買いました(苦笑)

ひろゆき:良いゲームだから売れるわけじゃない、と。

吉田:最初の店長に帳簿の見方から何から全部たたき込まれました。最初のショップは(チェーン店で)全店舗中売り上げナンバー1のショップで、その店長に小学生くらいの頃から可愛がってもらっていて、更にバイトにも誘われて。そこで「数字には読み方がある」っていうのをすっごい言われたことについては今でも感謝しています。

ひろゆき:ゲーマーって良いゲームを作れば売れるって信仰がありますが、映画とかってどんな良い映画でも広告宣伝費にお金をかけるじゃないですか。吉田さんから見たら「そんだけ広告にかける予算があったら開発にかけたらいいじゃん」ってなりません?

吉田:それこそランキングを見て、自分でも遊んで「こんなに良いのに売れないなあ」ってのは数多くあったんです。で、解いていくと発売自体を知られていないとか、そもそも触る機会が無かったとか、もう次々とゲームが出て、今だとソーシャルゲームもあって、いくらでも手を出すものがあるので。気付かせることにお金をかけない限り、どれだけものを作っても売れないというのは10年前くらいから感覚としてありますね。もちろん「中身が面白いのは当たり前じゃないと競争には勝てない」っていうのは大前提だとは思います。

ひろゆき:スクエニには(その感覚は)あるんですか?今年の『ブレイブリーデフォルト』(以下、ブレイブリー)はトップ3に入る超良く出来ているソフトだったのに、周りにプレイをしている人が少なくて。

吉田:日本のゲームマーケットは、古くから最近まで問屋さんのイメージがまず全てなので。つまり受注が何本とれるかとか。問屋さんに近い小売店にいたから分かるんですが、各店長が入れた数字を集計してその分しかいれてくれない。昔は付き合い的なところもあったと思うんですけれど、今は生活に直結するレベルになっていて、しかも日本のゲームって、問屋さん側の買い取りなので、仕入れ側のリスクがとても高い。慎重にならざるを得ないのが実情です。結局プレイヤーに向けて宣伝をしても、発売期の勝負はそれより数か月前に決まっています。セルインとセルスルーの関係ですね。

例えばプレイブリーも増産のオファーって来て追加もどんどんしています。それでもユーザーさんが冷めるんですよ。つまり3週間、4週間経つと次の目新しいタイトルの宣伝が始まっていたり、華々しいタイトルが出ちゃっていたりする。もう昔みたいにゲームを我慢する必要が無いんです。そこがすっごく恐ろしいところで、どうしても受注を取りたいって話は出るし、取れたとしても売れるとは限らないし、そこのスパイラルは結構でかいですね。

ひろゆき:オンラインゲームってのはそこと全く関係なく、ユーザーが欲しければダウンロードして買うって繋がりがあるから、やりやすいんじゃないですか?

吉田:そうですね、あとはデジタルディストリビューション(デジタル配信)には無視できない状況ですね。ゲーム業界を支えてくれたのは問屋さんのチカラが本当に大きかった。それでも、デジタルディストリビューションを無視していては、生き残れないと思うんです。それこそデジタルディストリビューションだったら在庫になくてもすぐダウンロードして買えるじゃないですか。例えば『とびだせ!どうぶつの森』。先週(12月26日現在)までで実売が180万本くらいあった筈ですが、でもあれダウンロード版の数は入っていないんですよ。店頭だけで180万で、(ダウンロード版を含めると)1.5倍くらいなのかな?

もう(デジタルディストリビューションは)の拡大傾向は止まらないと思います。今回は、売り切れでパッケージ版を変えなかった人が、コンビニのダウンロード版を買っている比率は多分相当高いので、今後はゲーム流通に加えて、ダウンロード版も合わせて発売するしかないんだろうなって。今までなら、ソフトが発売日に手に入ってなければ、そこで伸びなくなる筈が、ダウンロード版があることで伸びる部分がある。お客さんに向かってPRもしっかりあった上で、ダウンロード版で売り伸ばすっていうのが、徐々に比率を上げながら、続いていくんだろうと思っています。これまでのセールス本数や3DSの本数とかを比べても(どうぶつの森は)明らかに売れているんですよ。適正数値化して出荷して、ダウンロード版も作っておいたら(パッケージ版が)売り切れで、そっちに火が付いちゃったってところもある気がしますね。

ひろゆき:それぐらい強いタイトルが出せれば業界地図が変わるかも?

吉田:そうですね、そうありたいのですが、先週のランキングをみたらHDゲームがトップ30に『真・北斗無双』『Call of Duty:Black Ops 2』『竜が如く5』『みんなのGOLF6』の4本しかなくて、他は全部『ニンテンドー3DS』(以下、3DS)か『プレイステーション・ポータブル』。そのうち任天堂タイトルが10本。今年のクリスマス、実は子供達が一番欲しかったのは3DSだったということですよね。まだ買い換えがそこまで進んでなくて、今年のクリスマスに親にねだりたかったのが3DSって見えますね。日本市場でHD機は本当にしんどい時期です。

ひろゆき:FF14の低スペックで動くっていうのは突き詰めると、いずれ携帯ゲーム機になるじゃないですか。そういうのは意識しているんですか?

吉田:うーん、とりあえず僕はシェアを広げたい一心で。でも、これだけ通信環境が発達している日本ですら、まだ地下鉄で携帯がつながらないところも沢山あるし。ソロプレイ(オフラインプレイ)だけなら問題ないですけれど、オンラインは回線切断の問題がありますし、日本だけのシェアで(モバイルへの)投資が見合うのかっていうあたりは、ここから先シビアに見ていかなければならないですね。それに(モバイル環境に合わせて)極限までデータを小さく落とすっていうのはあんまり考えていないです。それこそ携帯電話に関しては(FF14が)あれだけキャラクターの仕様が贅沢なので、おいそれとゲーム自体をモバイル化出来ないのです。ですので、自分のキャラクターデータだけをサーバーにアクセスしてサーバーから取ってきて、例えば自分のキャラのデコレーションだけできるとか、手に入れたことのない装備を着せ替えしてみて「将来こうなりてぇ!」っていう遊び方、風景写真と合わせてフォトカードが作れるとか、『新生エオルゼア』の窓の1個として使うのなら多分(可能性はあります)。今はまだ、ゲーム本編はノートPCの方でいいんじゃないかなと。もちろんスペックが追いついてきたらスライドしていくんでしょうけれど。

-過去・現在・そしてゲーム業界の未来にも振れつつ話は盛り上がっていく。後半は海外展開やFF14の今後などの話題も。後半も是非ご期待下さい。

吉田直樹氏×ひろゆき氏対談(後編)に関しては、こちらをご覧下さい。

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