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「ユーザーと一緒に作った総合制作物にしていきたい」 『東方ロストワード』山岸Pの思いと世界を見据えた展開とは

2020/09/03 12:30 投稿

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5-1024x485.jpg「東方Project」の“二次創作”ロールプレイングゲーム(RPG)の決定版として今春から配信されている『東方ロストワード』。これまで、「東方Project」を題材にしたゲームタイトルはいくつも発売されてきたが、“スマッシュヒット級”の作品は登場してこなかった。

ヒットの要因、そして「東方Project」のコンテンツとしての魅力とは何か。開発を担当した「NextNinja」代表の山岸聖幸さんに伺った。

――まず『東方ロストワード』はいまなぜ人気なのでしょうか。開発者側はどう分析されているのかをお聞かせください。

山岸:そもそも『東方ロストワード』は「東方Project」へのリスペクトから生まれた二次創作作品で、その「東方Project」自体がすごいコンテンツなんです。原作者のZUNさんが20年近く制作し続けている弾幕シューティングで、それをもとに日々新たな二次創作作品が生み出されています。関連するイラストはpixivに225万件もアップされていて、楽曲に至っては10万曲も作られており、小説やアニメも登場し、そこから派生していろいろなサークル活動が世界中で行われています。

しかし、スマートフォンでRPGになったものはなかった。僕たちNextNinjaはRPGを作る会社ですので、原作をリスペクトしたうえで、どういう二次創作のRPGを作れるかを考えて制作しはじめ、「弾幕RPG」というコンセプトで二次創作したのが『東方ロストワード』です。ですので、とにかく原作が素晴らしいということが挙げられると思います。

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――「原作へのリスペクト」と仰っていましたが、具体的にはどんなことを意識して制作されましたか?

山岸:ゲーム内容は弾幕シューティングという、敵機の攻撃してくる弾幕を避けていくというものですが、ターン制のRPGにするにあたりその弾幕を攻撃アクションに変えました。そこにさまざまなキャラクターの設定を盛り込んで「失われた言葉を探す」物語(=『東方ロストワード』)を二次創作したわけですが、一番大事にしたことが「原作へのリスペクト」です。具体的には、まず初動画面で「東方Project」が原作であるという表示を出しました。

ゲームがスタートするとプレイヤーは幻想郷に入っていきますが、幻想郷の中のキャラクターは女性がほとんどなので、『東方ロストワード』の主人公も女性でなければならないだろうと。ゲーム中の名前入力時には「主人公が女の子です」と明示しています。

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――まずは、原作に則ってキャラクター全員を女性にした。

山岸:はい。次に、BGMが流れる際にアレンジした音楽サークルさんの名前が画面左上に出るようにしました。一般的にRPGを作る場合、BGMも新規で制作するのですが、あえてそれをせずに、数多の音楽サークルさんに許諾をお願いしにいったんです。当初、候補曲数は1000曲くらいで、そこから50曲ぐらいまで絞り込みました。どうしても足りない曲、10曲くらいを音楽サークルさんたちにお願いして作っていただきました。

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――「東方Project」の音楽サークルで活動している人がゲーム音楽を担当しているんですね!

山岸:さらに、キャラクターそれぞれにボイスを付けました。原作にはもちろんボイスがないので、どんな声をしているかファンそれぞれがイメージを持っています。もしかしたらそのイメージを崩してしまう可能性もあるので、3種類のボイスを用意し、よりイメージに近いものをお客さんに選んでいただく形をとりました。

それでもイメージに合うものがない場合は「ボイスなし」を選択することもできます。ちなみに一般的なゲームでボイスを選ぶ際は「CV:○○」というふうに表示されたりしますが、『東方ロストワード』では表示していません。有名な声優さんを起用してそのお名前を押し出していくことで、ファンの方々に訴求したりするケースが多いですが、キャラクターが声優さんのイメージに引っ張られてしまう恐れがあるため、声だけで選んでもらえるよう敢えて声優名は伏せています。

そういった細やかな部分を含めて僕たちは「東方Project原作をRPGにするとしたらこうではないとダメなんじゃないか?」という視点を常に持ちながら制作してきました。

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――それだけ「東方Project」原作を大事にしている。つまりそれは、「東方Project」ファンを大切にしている、ということでしょうか?

山岸:『東方ロストワード』を遊んでくださっている方というのは、「東方Project」をもともと好きな方々が多い印象です。

『東方ロストワード』はストーリーが続いてキャラクターも提供されていくし、常にお話もキャラクターも更新されていく運用型のゲームになっています。そして「東方Project」が好きな人たち同士で学校やSNSや動画配信などを通じてコミュニケーションが生まれています。そういった利用者の方々にもっと楽しんでもらいたいと常に考えています。

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――ユーザーの声を参考にすることはあるのでしょうか?

山岸:要望というのはSNSなどを通じて毎日届きますし、なるべく全部目を通すようにしています。それを踏まえて、ゲームの進化はもちろん、ゲーム以外の広がりをもっと作っていきたいと思っています。

なかには、Twitterのダイレクトメッセージで『東方ロストワード』のどこがおもしろくて、将来性を感じているという気持ちを4000字くらいのボリュームでいただいたり、学生の方から採用応募が届いたりとお客さんの熱量が高くてとてもありがたいです。まだまだ至らない部分が多いと思っています。そういったみなさんの気持ちを取り入れてアップデートや改善をしていくうちに、プレイしてもらっているお客さんと一緒に作った総合制作物になれたらと思っています。

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――開発の際、新規ユーザーを意識した部分はありましたか?

山岸:ゲームに関しては、RPGとしてちゃんと楽しめる設計にしていますので、「東方Project」を知らない人がプレイしても、気軽に入っていける作りにしています。たとえば「キャラクターがかわいいなぁ」とか「キャラクターを集めよう」と思っていただけるよう意識しています。

加えて、『東方ロストワード』を通して「東方Project」を少しでも知ってもらうきっかけになるような要素を随所に入れ込んでいます。たとえば、いわゆる「絵札」と呼んでいるステータス、特性を付与するカードがあるのですが、“限界突破”すると解説が増えていきます。解説は4つまであって、読み進めていくと作中のセリフや設定がわかるようになるんです。そうすると今度はその内容をネットで検索して、さらに理解が深まっていく。

「東方Project」は先ほどもお話ししたように、インターネット上に二次創作作品などのコンテンツがたくさんあって、そこへたどり着く。そこにはより詳しい情報と山盛りのコンテンツに触れることができるのでどんどん「東方Project」に触れるようになっていく。

なので、『東方ロストワード』の中で「東方Project」は何かみたいな説明は必要なくて、ゲームをプレイしてもらうことで、入ってきた情報をもとに興味を持ってもらえると、ネット上でその答えにたどり着いて触れていき、知らないうちに「東方Project」に興味をもっていただける。僕たちは、ゲーム内で原作に少しでも興味を持ってもらえるような作りを目指しました。

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――総じて、「東方Project」をソーシャルゲームにした意義というのは何だとお考えでしょうか?

山岸:原作の「東方Project」はいろいろな二次創作作品の大元で、原作が作られ続けているから二次創作も広がり続けています。今や誰もがスマホを持っている時代で、もっとも多くの人が触れることができる手段となりうるということがスマホゲームにした一番の意義なんじゃないかなと思っています。

「東方Project」をもとに、展示会だったり、二次創作ができて、コミュニティが生まれ、音楽サークルさんも参加し、いろいろな広がりがあるなかで、一企業が運用型のゲームで、ストーリーとキャラクターを定期的に提供していくことができたらすごくおもしろいんじゃないかと考えました。

それを見て「東方Project」が好きな方々が、「このキャラクターがかわいかった」とか「このストーリーおもしろかったね」と話題になって、多くの人々に話してもらえるなら、とても嬉しいと感じたんです。

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――最後になりますが、今後考えている展開や、ファンの方へのメッセージなどありましたらお願いします!

山岸:僕たちは日本で作ったものを海外で展開するということをミッションにしている会社です。なので、現在『東方ロストワード』の海外版を準備しているんですが、世界中にいる「東方Project」ファンに向けて同時に発信することができたら、とてもおもしろいことになるんじゃないかと考えて制作に取り組んでいます。

僕たちはゲームを作るというより、「東方Project」という原作をお借りして、それをゲームという形で包んで、どうファンの皆さんに届けるかということを主体に考えています。『東方ロストワード』を日本の「東方Project」好き全員に届けたいし、世界中の「東方Project」好きにも届けたい。そして、何よりソーシャルゲームは手に取りやすいものなので、「東方Project」を知らない人が触れてみて好きになってくれたらとても嬉しいです。

――ありがとうございました!

東方LostWord公式サイト:
https://touhoulostword.com/[リンク]

取材・文/小山田滝音、編集/西本心

―― やわらかニュースサイト 『ガジェット通信(GetNews)』

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