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『FINAL FANTASY VII REMAKE』レビュー:リメイクというよりも、生まれ変わった新生『FF7』

2020/04/13 21:00 投稿

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1-1-1024x576.jpg日本のみならず、世界中のゲームファンが注目していた『FINAL FANTASY VII REMAKE(以下、FF7リメイク)』。その内容は、「リメイク」というより、新生『FF7』と呼ぶにふさわしいものだった。 2-2-1024x576.jpg

当時のゲーム業界の変化・進化を象徴するタイトル『FINAL FANTASY VII』

『FF7リメイク』は文字通り『FINAL FANTASY VII(以下FF7)』をリメイクした作品。リメイク元となる『FF7』は、『FF』シリーズの中でトップレベルの人気を誇っている。筆者も『FF7』発売当時のことが忘れられない。『FF7』という作品は、ゲームの内容が面白いのはもちろんだが、それ以上に発売当時のゲームを巡る社会事情が非常にインパクト大! だったのだ。

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(iOS版『FF7』より)

『FF7』の対応ハードは『初代プレイステーション(以下プレステ1)』。それまで『ファミコン』『スーパーファミコン』といったハード向けに発売されてきた『ファイナルファンタジー』シリーズにとって、これは異例の出来事だった。また、『プレステ1』当時のゲームは、2D表現から3D表現への移行期にあった。『FF7』もまた、シリーズ初の3D表現作品。そして、スクウェア(当時、現在はスクウェア・エニックス)がゲームをコンビニで流通、発売する企業「デジキューブ」を立ち上げたことにより、『FF7』はシリーズ初となるコンビニで発売されるゲームソフトになった。つまり、当時のゲーム業界は、大きな変化の真っただ中。そんな中で発売された『FF7』は、ゲーム業界の変化と進化を代表するタイトルであったように思う。

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(iOS版『FF7』より)

新生『FF7』とこれまでの『FF』シリーズリメイク作との違い

シリーズを通してみると、リメイクされた『FF』シリーズは過去にも存在している。ニンテンドーDSでリメイクされた『ファイナルファンタジーIII』や『ファイナルファンタジーIV』がそれだ。これらの作品は、リメイク時にビジュアルが2D表現から3D表現へと変わったものの、基本的には原作に忠実な移植が行われていた。機能の改善は行うもののゲームシステムはぼぼそのまま引き継がれているし、ストーリーは若干のアレンジを含みながらも、原作通りだった。

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(iOS版『ファイナルファンタジーIII』より)

しかし、『FF7リメイク』はリメイクをするあたって大幅なアレンジ……もはやそれは新生『FF7』と言ってしまいたいレベルのアレンジが加えられている。ビジュアルはもちろんのこと、ゲームシステムにおいても、ストーリーにおいてもだ。

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圧倒的ビジュアルで描かれたクラウドはまるで自分の分身のよう

リメイクによる変化が最もよくわかるのはビジュアル面だろう。『FF7』のビジュアルは、戦闘、ムービー、マップで大きくクオリティが異なる。マップシーンではクオリティという前にキャラクターの頭身そのものが変化。デフォルメしたキャラクターを動かすという表現が採用されていた。もちろん、これは当時としては間違いなく最高クオリティでの描写であり、そこに違和感を感じたユーザーはそう多くなかったはず。

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(iOS版『FF7』より)

しかし『FF7リメイク』では、シーンによってキャラクターの頭身が異なるということがない。あらゆるシーンがリアル頭身のキャラクターに合わせて設計されており、さらにその作り込みが深い! 筆者が本作をプレイしてクラウドを動かせるようになったとき、まるでミッドガルに自分自身が降臨したかのような感覚を覚えた。例えるなら、絵画でしか観たことのない観光名所へ初めて実際に訪れたような感覚とでも言えばよいのだろうか。「『FF7』のミッドガルって、『FF7リメイク』のミッドガルを元に描いたんですよ」……そう言われたとしても、頷いてしまうくらいビジュアルは説得力を持っている。

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『FF7』の良さを残しつつ現代向けにアレンジ! 仲間とともに戦うバトルシステム

『FF7リメイク』のゲームシステム面においての大きな変化は、なんといってもバトルだろう。バトルはコマンド選択式のアクティブタイムバトルから、アクション性の高いリアルタイムバトルとなった。□ボタンで通常攻撃。連打してもいいが、押しっぱなしでも連続攻撃ができる。×ボタンで回避、R1ボタンでガード。〇ボタンでコマンド系の行動が可能だ。

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この内容だけ見ると、『ファイナルファンタジーXV』のバトルに近いと思われるかもしれない。しかし、プレイ感は随分と違っている。本作において通常攻撃は威力がそれほど高くなく、メインというよりもATBゲージを貯めるための手段に近い。メインはむしろ、コマンド系の行動で、プレイ感はアクションゲームよりRPGに近い。このアレンジは、コマンド選択式のゲームだった『FF7』を現代にリメイクする上で、絶妙なバランスだと感じた。

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また、プレイヤーが操作担当するキャラクターはもちろん主人公のクラウドがベースだが、戦闘中任意に切り替えることもできる。ただ、切り替えずともパーティーのメンバー全員分のコマンド入力が可能だ。このため、戦闘中はパーティーのメンバーを意識的に連携させられて、仲間全員で戦っているという感覚がしっかり存在していることにより、またまた素晴らしいアレンジだと感じることができた。

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仲間と戦っている感覚という意味では、戦闘中、キャラクター同士の掛け合いが発生するのもイイ。筆者のお気に入りは、クラウドとバレットの掛け合い。後述するが、この凸凹感はバディものの刑事映画を観ているようで思わず引き込まれた。

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なお、バトルがリアルタイムバトルになったことで、エンカウントも廃止されている。『FF7リメイク』はマップ移動中、敵とエンカウントするとバトルシーンに切り替わる形ではなく、アクションゲームのようにマップ内の部屋に対して敵が配置された形式でシームレスに展開していくため、臨場感が非常に高い。

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自分を探すストーリーから、自分の居場所を見出すストーリーへ

『FF7リメイク』はストーリー面も、『FF7』の該当箇所から変化を遂げている。そもそも本作は公式に発表されている通り「分作」で、『FF7』のすべてのストーリーが収録されているわけではなく、ミッドガル脱出までの部分収録されている。これは4枚あった『FF7』のディスクのうち、1枚目に当たるので、ストーリー的な変化は必然といえるだろう。

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ところで、一般的なストーリー論として、「悪人がただ悪事を働いて、それを主人公が倒した」という出来事を描くだけでは、とてもストーリーと呼ぶことはできない。ストーリーというのは、精神的な変化が必要になる。たとえば、昔ばなしの『桃太郎』は鬼を倒す前と倒した後とで、桃太郎に精神的な変化が生じていないので、このストーリー論にはあてまらない。

もし『桃太郎』をストーリー論にあてはめて完成させるのなら、偏りはあるが、たとえばこんな構成だとどうだろう。桃から生まれたという出自に加えて、圧倒的な力を持つ桃太郎は、「自分は人間ではないのでは?」と思い悩む。鬼ヶ島へ向かった桃太郎は、自分の力は神に通ずる力(神通力)であることを知る。奇しくもそれは、鬼達の持つパワーと同じ性質のものだった。そして自分は人間ではないと確信した桃太郎だったが、重要なのは「どのように生まれたか?」という出自の問題ではなく、「どう生きたか?」という生き方の問題だと気づく。

「慈しみを持って生きることこそ、人間の生き方」だと確信し、精神的成長を遂げた桃太郎は、力におごることなく、仲間の動物たちとのチームワークも駆使して鬼を見事打ち破った……。ベタではあるが、こうした精神的な成長が描かれることで、ストーリーは完成していく。ここで書いた『桃太郎』の場合、「自分の出生ゆえに自信を持てない人間が、自分の生き方を見つけていく」という成長ストーリーだ。

話を戻す。それでは、『FF7』とはどのようなストーリーだったか。それはクラウドが失った自分(記憶以外にも)を取り戻していく過程をたどっていく自分探しの物語だ。

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つまり、ソルジャーや魔晄といったSFファンタジー要素、さらには「死んだはずのセフィロスが何故蘇ったのか?」というサスペンス要素によってデコレートされてはいるが、『FF7』の根本のストーリーはとても普遍的。だからこそ人に感動を与えるのだ。ただし、感動できるのは、『FF7』を最後まで描くからであって、ミッドガル脱出部分まででは自分探しのストーリーが完結しない。確かに、ミッドガル脱出前には、神羅ビルでのルーファウスとのバトルがあり、「作中の出来事」としては盛り上がる。しかし、クラウドに精神的な変化が生じないので、ストーリー的にはまったく満足できないまま終わるだろう。『FF7リメイク』が分作になると聞いた時、筆者が真っ先に思ってしまったのは「一体この問題をどう解決するんだ……!?」ということだった。

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ちなみに筆者がこの原稿を書いているのは、『FF7リメイク』のプレイ時間9時間強、CHAPTER 8までプレイしたところまで。ただ、この段階でも、『FF7リメイク』がストーリー上の問題をしっかり解決しているということは分かる。本作は、ミッドガルでのストーリーを、主人公・クラウドが居場所を見出していく流れに再編成することで解決させている。アバランチからの依頼を「仕事」とドライに割り切って、人間関係を構築しようとしないクラウド。しかし、仕事を繰り返すことで、アバランチやスラムの人達との信頼関係が築かれていく。

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たとえば、CHAPTER 3 では、スラムでクエストをこなすというイベントがある。もちろんストーリー進行のためにすべてのクエストをこなす必要はなく、オープンワールドゲーム的なイベントだ。ただ、ここできちんとクエストをこなしていくと、スラムに住む人の反応が変化していく。流れ者だったクラウドが、スラムで自分の居場所を作っていく様子が丁寧に描写されているのは、純粋に心がホッコリする。クラウドがかすかに笑顔を見せるシーンや、ウェッジへの気遣いを見せるシーンもイイ。先述したように凸凹した掛け合いをしていたクラウドとバレットが、徐々に噛み合っていく様子もグッと来る。バディものの見せ方としてはベタなものだが……、いや、ベタだからこそ、グッと来るのだ!

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なお、シナリオにアレンジは施されているが、壱番魔晄炉の破壊、八番街でのエアリスとの出会い、伍番魔晄炉からの墜落……といった大筋の流れは『FF7』ともちろん同じ。エピソードや演出が追加されることで、ストーリーに別の視点が加えられた仕上がりになっている。つまり、ストーリー面でも『FF7リメイク』は新生『FF7』なのだ。だからこそ、『FF7』をプレイした人でも、新鮮な気持ちでプレイできる。再プレイではなく、改めて『FF7リメイク』をプレイできるので、『FF7リメイク』で初めて『FF7』の世界に触れるという人でもきっと満足できる内容と言えそうだ。

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続編に期待大! いつ遊べるかだけが不安……

ここまでに書いた通り、『FF7リメイク』は非常にハイクオリティかつ、過去に『FF7』をプレイした経験のあるユーザー、新規ユーザーのどちらも楽しめる内容に仕上がっており、ただのリメイク作ではなく新生『FF7』だと言いたくなる素晴らしい出来だ。しかし気になる点がないわけではない。言及しなければならないのはボリューム面だ。先に触れた通り、ミッドガル脱出までだと、『FF7』ディスク4枚の内、1枚目。つまり全体の約1/4程度の分量となる。本作はそのストーリーにアレンジを加えることで、ミッドガル編をゲーム1作分のストーリーとして成り立たせている。そのため『FF7』のミッドガル編に比べると、ボリュームは大幅にアップした。それでも、『FF7』全体のストーリーを知っているからこそ、続きができないことに物足りなさを感じてしまうユーザーもいるのではないかと思った。

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重箱の隅をつつくようなことを言ってしまったのは続編のリリースを待望しているからこそ。早く続きをプレイしたい! 本作『FF7リメイク』のクオリティからすると、続編も相当期待できそうだ。ただ「いつ」遊べるのか!? 当然ながら、年内とか来年ということはないだろう。それなら最初から分作になどしなかったハズ。となると、3~4年後くらいだろうか。さらに、全部で何部作になるのだろう? 『FF7』がディスク4枚だったので、『FF7リメイク』も4部作になるのだろうか。年末には『プレイステーション5』が出ると言われている。『プレイステーション4』だけで全部プレイできるのだろうか……。できれば、なるべく短期間の内に、『プレイステーション4』内でちゃんと完結させて欲しい。本作のクオリティが高く、おもしろい作品だからこそ、切にそう願っている。

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FINAL FANTASY VII REMAKE – スクウェア・エニックス:
https://www.jp.square-enix.com/ffvii_remake/ [リンク]

文/田中一広

(執筆者: ガジェット通信ゲーム班)

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