選挙は民意を反映するのか?~シンデレラガールボイス実装問題から考える~(いはらいふ)
はじめに
「シンデレラガールズ総選挙は声をつけるための選挙なのか?」2017年07月28日 『いはらいふ』
http://viola-voila.hatenablog.com/entry/2018/07/28/225000
以前の記事でシンデレラガールズ総選挙でアイドルに声をつける話をした。今回はそこからさらに踏み込みどのアイドルに声をつけるべきなのかを考えていく。
選挙で選ばれたアイドルが声をつけられるべきアイドルなのか?
さて、選挙上位になったアイドルは民主的に選ばれたアイドルなので声をつけられるべきだという考え方は果たして正しいのだろうか?
有志によるボイス総選挙もどきのような話もツイッター上で見かけるが、それらの投票で選ばれたアイドルが声をつけられることが果たして良いことなのかを考えてみる。
選挙の話としてオストロゴルスキーのパラドックスというものがある。
簡単な例を出して解説する。
二人の声待ちアイドルAとBがいて、100人のPたちがどちらかに投票しようと悩んでいる。悩む基準は「どっちのアイドルが好きか?」・「そのアイドルの登場コミュやイベントでボイス実装して欲しいものがあるか?」・「そのアイドルに声がつくことで活躍して欲しいユニットがあるか?」の3つの基準から考えるとする。
グループ1の20人は「どっちのアイドルが好きか?」・「そのアイドルの登場コミュやイベントでボイス実装して欲しいものがあるか?」という基準ではアイドルAを選び、「そのアイドルに声がつくことで活躍して欲しいユニットがあるか?」という基準ではアイドルBを選ぶ。この時2つの基準でアイドルAを選んでいるため投票先としてアイドルAを選ぶ。
同様にグループ2の20人は「どっちのアイドルが好きか?」・「そのアイドルに声がつくことで活躍して欲しいユニットがあるか?」という基準からアイドルAに、グループ3の20人は「そのアイドルの登場コミュやイベントでボイス実装して欲しいものがあるか?」・「そのアイドルに声がつくことで活躍して欲しいユニットがあるか?」という基準からアイドルAに投票する。
最後にグループ4の40人は全ての基準でアイドルBを選ぶ。
この時選挙結果はグループ1~3の60人がアイドルAに投票、グループ4の40人がアイドルBに投票するのでアイドルAが声をつける対象として選ばれる。
しかし、個別の基準に関して考えてみると「どっちのアイドルが好きか?」という観点ではグループ3、4の60人がアイドルBを選んでおり多数派はアイドルBである。
同様に「そのアイドルの登場コミュやイベントでボイス実装して欲しいものがあるか?」・「そのアイドルに声がつくことで活躍して欲しいユニットがあるか?」という観点でもグループ2、4またはグループ1、4の60人がアイドルBを選ぶため全ての基準においてアイドルBはアイドルAより声をつけるのに望ましいと考えられている。
このように様々な声をつける基準に関して個別に考えると多数派だが、選挙結果としては選ばれないようなアイドルが存在する可能性もある。
ここから言えることは選挙で選ばれたアイドルは声をつける基準を満たしたアイドルであると断定することはできないということである。
あとがき
今回は2択の単純多数決というシンプルな選挙での選挙結果が必ずしも民意を反映していないという状況が存在するということを示した。
ここから何が言いたいかというと「アンケートや選挙結果というものは民意を切り取ったものであり、多数決の結果が絶対ではない」ということである。
多数決は日常でもよく利用されるツールであり、多数決で決まったものが正しいという認識を持っている人も多いが、実際は多数決(特に単純多数決)は万能のツールではないということを頭の片隅に入れることは選挙を考える上で重要な考えである。
「多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)」2015年04月22日 『amazon.co.jp』
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参考文献
Rae, D,W. and Daudt, H.: 1976, ‘The Ostrogorski Paradox: A Peculiarity of Compound Majority Decision’, European Journal of Political Research 4, pp. 391–398.
執筆: この記事はいはらさんのブログ『いはらいふ』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2018年9月17日時点のものです。
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