東南アジアの観光地と問えば台湾やタイ、シンガポールや香港が定番と言える目的地だ。
多くの人が訪問すれば団体旅行での運賃単価が下がり、さらに行きやすくなることは資本主義の摂理と言えよう。
しかしLCC(ローコストキャリア)の登場からしばらくたち、どこへ行っても大した違いはない運賃になってきている。
そこで、ジェットスタージャパンとフィリピン政府の協力を得て、マニラとその周辺を回ってきたので、交通編・観光編・宿泊編とカテゴリー別にレポートする。
フィリピンはセブ島など著名な観光地はある。しかし、治安の不安や昔からのイメージが先行し、他の定番国と比較して日本人観光客が少ないのが現状だ。
そんなこともあって、あえてフィリピンに行き、観光ガイドブックに載っていないことも含めてレポートする。
本稿は主に交通機関に関する事項ついて記述することにする。
成田空港第3ターミナルはLCC専用のターミナルで、国内線・国際線という区分はしていない珍しいターミナルと言えよう。
リムジンバスで第3ターミナルに着くと、ターミナルから少し離れたバス停に着く。
ターミナル間のシャトルバスのみが、第3ターミナルの建物の目の前で乗降できる。
これは、ターミナルそのものが保安区域内にあるためで、一般車両はもちろん路線バスですら入ることができない。
したがって、鉄道やリムジンバスで到着しても第2ターミナルや第1ターミナルからシャトルバスに乗るというのが、一番楽な方法と言える。
いいように言えば無駄のない、悪く言うと倉庫のようなターミナルは、必要最低限の施設しかない。
チェックインを済ませたら、国際線の保安検査場に進めば、税関、出国審査とベルトコンベアーのように流れていく。
LCCは預託手荷物にすると別料金がかかる。ジェットスターの場合はハンドキャリー(機内持ち込み手荷物)ですら7キログラムの制限がある。
今回は報道関係者向けの渡航であったために、スタータープラス運賃が適用になっており、20キログラムまでの預託手荷物を預けることができた。
このへんのシビアさがLCCたるゆえんである。
記者はGK41便に搭乗した。
ほぼ満席のフライトだと聞いていたが、ジェットスターのマニラ便には他の国際線と若干違う趣がある。
それは、旅客の大半が日本人ではなくフィリピン人なので、日本での出入国審査もフィリピンでの出入国審査も、日本人が少ないためにほぼ並ばずに通過できるという初めての経験だった。
例えば成田の場合、日本の空港なので日本人が大半を占めるのが通常だ。日本人の出国なので外国人よりも幾分スムーズとはいえ、そもそも日本人の数が少ないのでレーンは閑散としている。
これはフィリピンでも同様だった。
第3ターミナルには小規模ではあるが、出国エリアではひと通りの免税店はある。ただし、飲食店は1か所しかない。
飲食店や自動販売機は免税の手続きを取っていないのか、きっちり消費税を払うことになる。
LCCは機内での飲み物は有料なので、出国前にコンビニで買っておこうとする人がいるが、残念ながら出国する前に飲み物は機内持ち込み手荷物に入れることはできない。したがって用意周到に買ってきたペットボトルや缶入りの飲料は保安検査場で飲み切るか、放棄するしかない。
どうしても欲しい場合は、出国エリア内の自販機で買うしかない。
この便はランプバスでの搭乗になるので、おりのような搭乗ゲートで旅券とボーディングパスの最終チェックを受けてから階段を下りることになる。
ランプバスに乗車しても搭乗機までは5分くらいはかかる。
エアバスA320-200型機はモノクラスで180席。
エコノミークラスとはいえ、革シートで質感は高い。
今回の搭乗運賃では1000円分の機内バウチャーが付いていた。機内販売品を1000円分買える金券のようなもので、CAが座席番号で管理しているので、紙のバウチャーが発券されるわけではない。
ただし、夜行便は売り切れが続出し、軽食をオーダーしようと思っていたのだが、すでに売り切れ。仕方がなく写真のような買い物になってしまった。
1000円を超えるものは現金を足せばよい。なお、成田から東京駅までのいわゆる1000円バスが900円で買えるので、現金でも買っておくとさらにお得であろう。
フィリピンのニノイ・アキノ国際空港には第1ターミナルに到着する。
日本との時差は1時間。
記者はLCCの利用はある程度の割り切りが必要ではないかと思っているが、意外と知られていないことも多く、誤解があるのも事実だろう。
そこで、今回移動をアテンドしてくれたジェットスターの高橋里予さんにLCCについて聞いてみた。
--そもそもLCCはなぜ運賃が安いのですか?
「まず、第一に余計なことにお金を掛けずに省力化し、お客様を目的地まで運ぶ運賃に徹底的に絞った結果です。例えば、今までのキャリアですと大きなお荷物を持ってお預けになるお客様もいれば、ビジネスでの移動や帰省のための移動で手荷物一つの身軽な方もいらっしゃいます。しかし、お荷物をお預かりするのもコストがかかります。ご自身で機内に持ち込まれてハットラックに収納される方とでは実はコストは違うのです。手荷物一つだけのお客様が、預託手荷物のあるお客様の分のコストまで負担しているというのは不合理だと考えたのです。お飲み物にしても、お休みになっていて不要な方もいらっしゃいますが、そのような方にも他のお客様のドリンク分まで負担をしていただいていたのです。コールセンターにも人件費がかかりますので、コールセンターを通して予約をする方と、インターネットで完結される方とでは当然かかるコストは違ってくるわけです。それらをすべてオプションにすることによってお客様を運ぶ運賃以外の必要なサービスは必要な負担を別途していただいて、公平な運賃制度を目指した結果だといえます」
「ただ、そうは言っても安全性を犠牲にしてまで省力化しているということではありません。機械化できることは積極的にいたしますが、安全性を保ちながらコストを抑えるために逆に最新型の機材で統一するという面があります。安いので機材が中古機材なのではないかと思われるかもしれませんが、まったく逆です。最新機材はそれだけ燃費も良くて長い目で見れば燃料費が安く済みます。それに操縦士の資格や整備士の資格は機材ごとに違いますので、統一すれば整備や運航マニュアルも操縦士の資格も1つで済むのでコストは抑えられますし、1機種しかないので間違いが少なく結果的に安全に寄与することになります」
--最新鋭機がコストを抑えるということですね。とことで座席が革シートでしたね?
「はい、座り心地や質感が高いということでサービス面に寄与するメリットもありますが、実は革シートの方が長持ちしますし清掃整備も楽なので、お客様にとっても私どもにとってもいいことしかないので、革シートを採用しています」
--運賃が日によって変動するので使いにくいという声もあるようですが?
「基本的な考え方は、180席の限られた座席を効率よく埋めなくてはなりませんので、需給バランスで決定しています。早く予約されれば、空席が多くある状態ですので供給の方が多く安く提供できますが、出発当日になりますと極端な話ですが最後の180席目を争うことになります。当然ですが需要の方が多いので運賃は高くなります。もしかしたらフルサービスキャリアの方が安くなっていることもありますが、そういう場合にはそちらを利用していただいた方がお客様にとってもいいのではないかと思います」
「それと、もう一つだけお伝えしたことがあります。チェックインの締め切り時刻は厳格に守ります。遅れると搭乗いただけません。これは、その便の遅れたお客様を待っていては、次の折返しの便が遅れ結果的にその日はずっと遅れ続けることになります。そうなりますとその便の180名のお客様ばかりかその次の便の180名の方にもご迷惑をおかけしますので、時間厳守でお願いします。またオーバーブッキングは基本的にお受けしていません。なぜかと言うと、予約と同時にお支払いが完了しているので極論ですがノーショウでも構わないのです」
これは、どういうことかというと通常、航空会社ではキャンセルを見込んで座席数以上の予約を受け、予定通りキャンセルが出てちょうど座席が埋まるようにコントロールしている。しかし、LCCでは予約すれば即支払いなので予約をしても空港に現れないノーショウ客がいて座席分の空気を運んだとしても損をしない。逆にコントロールに失敗し座席数以上の予約客が空港に現れた時には航空会社は座席を保証しなくてはならないので、そこで余分な人員とコストがかかってしまう。だから座席分しか予約を受け付けないということだ。これも過渡に座席コントロールをしなくてもいい分コストが削減できるのだろう。
--LCCの新しい使い方の提案があれば教えてください
「そうですね。目的地が決まっているのであれば、早めの予約。そうでなければ、旅行予定日いおいて安い路線を選んで目的地を選択していただくのがよろしいのではないでしょうか?また、例えば九州ですと出発日は福岡線が安くても、帰りが高いという場合もあり得ます。そういう時には別の都市からお帰りになることも検討されてみてはいかがでしょうか。福岡IN、大分OUTということも、LCCの運賃は片道、往復という考え方ではなく、あくまでも1区間という考え方ですのでそういうことも自在にしていただけます」
さて、フィリピン国内の交通について触れておこう。
公共交通機関は基本的にないと考えておいて差し支えない。
もちろん、従来からある国鉄や最近できたMRTやLRTなどの鉄道もあるが、現地の人もあまり使わないほど路線が整備されていない。
バスやジープニー、トライシクルもあるにはあるが、路線がわからないので旅行者には使いにくい。
そこで、基本的にはタクシー移動となるわけだが、こちらは気軽に使いまくっても運賃は非常に安いのでさほど気にしなくても大丈夫。
ただし、交通渋滞が激しいので移動時間には相当の余裕をもって挑めば問題はない。そもそも暑い国なのでフィリピン人はあまり歩かない。すぐにエアコンの効いたタクシーを使うお国柄なので、それほど安いというわけだ。
渋滞はその国をゆっくり見ることができる定期観光バスだと思って割り切って使うといいだろう。
観光地では、馬車もあるがあくまでもその辺を回るだけのものだと考えた方がよい。
空港から名の知れたホテルへは多数の送迎バスが走っているので、あらかじめ調べておくと便利だろう。
写真は記者が宿泊したベルモントホテルをはじめとするリゾートワールドという地域への送迎バス。
高架鉄道のLRTやMRTも走るが、観光客が行くようなところには走ってなく、空港や駅にも利便性がいいとは言えないので使う機会は少ないだろう。
やはりタクシーということになろうか。
さて、本稿は交通についての記事なので、いきなり帰国まで飛ぶが、ニノイ・アキノ国際空港第1ターミナルについて特異な点を書いておく。
ターミナルにははっきり言って何もない。
ターミナルに入るには航空券が必要なので持っていない見送り客はターミナルにすら入れない。LCC利用者はあらかじめ航空券の控えをプリントアウトしておく必要がある。
また、ターミナルに入る手荷物検査が一番厳しいという変わったシステムなので、ターミナルに入るのにまず行列を作る。
ここで、喫煙者には残念なお知らせ。航空会社ではライター1個まで持ち込み可能なのだが、なぜかターミナルに入る手荷物検査で全部取られてしまう。1個も持って入れないのだ。
そして、出国審査前の保安検査場はすでに厳しいチェックを受けていることもあって、比較的スムーズに通れる。
なお、信じられないことに、出国エリアには銀行はない。したがってフィリピンペソからの再両替はできない。売店や免税店で使い切るか、成田空港で悪いレートで交換するしかない。
また、ターミナル内には公共の喫煙所はない。しかし私設の喫煙所はある。
どういうことかというと、売店の奥に喫煙所があり、何かを買うと写真のように手にスタンプを押してくれる。これで喫煙所に入場可能となる仕組み。缶コーヒーでも何でもいいのだが、とにかく何かを買わないとダメ。
しかし、セキュリティーチェックでライターは全部取られているはずなので、私設喫煙所にはちゃんとチェーンで結ばれたライターがぶら下がっている。変な仕組みだ。
なお、日本のカフェでもらえるマッチはなぜかとがめられずカバンの中に入っていたので、これを持っていくといいかもしれない。
くれぐれも高級ライターやオイルライターは持って行かないように。
帰国便であるGK40便は深夜の空を成田に向かって飛んでいく。
なお、ジェットスターではマニラの手荷物検査が不安なのか、搭乗待合室でも人手による手荷物検査を行っているので早めにゲートに到着しておこう。
成田には定刻6時5分だったが、多少早くついてしまったのか、滑走路が開く午前6時まで千葉県上空を旋回した。
主翼から突き出ているのはシャークレットと称する「翼に付いた小さな翼」。
これで翼の先端で発生する渦を巻く空気の流れを低減させて抵抗を少なくし、結果的に燃費をよくする優れものだ。
■GK040APR10-112016
https://youtu.be/_d_AeeGvA00
定刻で成田空港に到着した。
この機材は引き続き国内線に使用されるとのこと。
この便の客室乗務員は3名。
機内サービスから物品販売、国際線なので免税品の販売までこなし、休む暇はなかったようだった。
その気になればちょっと国内旅行に行く感覚で、また高速バスに乗る感覚で海外旅行ができてしまう。
使い方は旅行者のアイデア次第といったところか。
また、フィリピンの交通も、割り切ってタクシーだけを使えばさほど面倒なことはなく、スマホの地図アプリを片手に右往左往してみるのもまた面白い旅の思い出となるだろう。
見忘れた場所があれば、運賃が安い時にまた行けばいい。
※写真はすべて記者撮影
取材協力 ジェットスタージャパン・フィリピン政府観光省
―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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