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保育所在所率と虐待相談率の相関(武蔵野大学,杏林大学兼任講師 舞田敏彦)

2016/04/19 16:30 投稿

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今回は舞田敏彦さんのブログ『データえっせい』からご寄稿いただきました。
※すべての画像が表示されない場合は、http://getnews.jp/archives/1447149をごらんください。
保育所在所率と虐待相談率の相関(武蔵野大学,杏林大学兼任講師 舞田敏彦)

2014年5月9日の『日経DUAL』に、県別の共働き世帯率と乳幼児の虐待相談率の相関を出した記事を寄稿しました。この手のデータが珍しいからか、読んでくださる方が多いと聞きます。

「共働き家庭ほど虐待は少ない 通説と逆の結果が出た」 2014年05月09日 『日経DUAL』
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=2612

結果は、有意なマイナスの相関。共働きが多い県ほど、虐待相談の件数が少ない。逆をいえば、母親が一人家に籠って育児をしている県ほどヤバい、ということです。これがなぜかについては、取り立てて書くまでもないでしょう。

この記事を読んだという方から、保育所に入れている乳幼児の率と虐待との相関が見たい、という要望がありました。なるほど、興味あるデータですよね。まだ作ってなかったので、これを機に作成してみました。

私は、以下の3つの数値を都道府県別に収集しました。*は出所です。政令指定都市の分は,当該市が立地する県の中に含めています。

 a 2014年10月時点の0~5歳人口 *総務省『人口推計年報』(2014年)
 b 2014年10月時点の認可保育所在所者数 *厚労省『社会福祉施設等調査』(2014年)
 c 2014年度間に児童相談所が対応した虐待相談件数(就学前の児童が被害者のもの) *厚労省同『福祉行政報告例』(2014年度)

この3つの数値を使うことで、各県の乳幼児の保育所在所率と虐待相談率(≒被害率)を出すことができます。後者はあくまで見立て値ですが。

下の表は、計算結果の一覧表です。算出された率の黄色マークは最高値、青色マークは最低値です。赤色は、上位5位の数値を指します。虐待相談率は、ベース1万人あたりの相談件数です。

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(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
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乳幼児の保育所在所率は、最低の埼玉が24.5%、最高の島根が61.9%、違うものですね。右側の虐待相談率に至っては、すさまじいまでの地域差があります。これは、各県の福祉行政方針の影響もあるでしょうが。

さて、この2つの指標はどういう相関関係にあるのか。横軸に保育所在所率、縦軸に虐待相談率をとった座標上に47都道府県を配置すると、下図のようになります。

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(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
http://px1img.getnews.jp/img/archives/2016/04/g03.jpg

バラけていますが,傾向は右下がりです。保育所に入れている乳幼児が多い県ほど,虐待相談が少ない。相関係数は-0.3427であり、5%水準で有意です。

左上の都市県と、右下の日本海沿岸県のコントラストが、何とも鮮やか。個人レベルで解釈するならば,幼子を保育所に預け、社会進出が叶っているママほど、育児ストレスに苛まれにくい、ということでしょうか。

ちなみに女性の「イライラ」の火柱は、キャリアの中断期に最も高くなっています。

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(画像が見られない方は下記URLからご覧ください)
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無精ですが、2014年4月11日に『日経DUAL』に書いた記事の文言を引用し、データの解釈に代えます。

「男女の役割差を国際比較 さすが北欧、キツイ日韓」 2014年4月11日 『日経DUAL』
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=2420

「そもそも人間は、一つではなく多様な顔(役割)を持ったほうがよいといいます。男性にしても、職業人のみならず、家庭人や地域人としての顔も持たねばなりません。それがないと、自らが手がける仕事に「社会性」が生まれません。顧客(多くは家庭人)の気持ちを汲み取ることができず、営利追求一辺倒に陥りやすくなるでしょう。女性の側も、家庭人という枠の中に自分を押し込めてばかりいると、よからぬことが起きる可能性が高くなります」。

以上です。

執筆: この記事は舞田敏彦さんのブログ『データえっせい』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2016年04月18日時点のものです。

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