私事だが、最近筆者はロンドンより帰国した。ロンドンでは可能な限り旬の良いオモシロネタを嗅ぎまわりつつ、可能な限り迅速にガジェット通信に提供する事を旨としていたが、現地時間の2016年2月5日朝、荷造りをしているとんでもないニュースが飛び込んできた。
ロンドンのエクアドル大使館にウィキリークス創始者にて国際指名手配犯ジュリアン・アサンジ氏が姿を表すかもしれない、というニュースだった。
面白いネタは自分で見聞きする。これが信条の筆者は、午後6時のフライトに遅れてヒースローで途方に暮れる、などというリスクに杞憂を抱いている場合ではなかった。相手は現在のインターネットというサイバースペース空間において最も重要な人物の1人だ。すぐさま筆者はナイツブリッジ駅にあるロンドンで最も有名なデパート・ハロッズ、ではなくエクアドル大使館に急行した。
エクアドル大使館はハロッズの直ぐ側。週末なら買い物客でごった返すハロッズ前も、平日午前という事で閑散としていると思いきや……。
ハロッズを超えた先から何やらざわめき。付近には不審な黒塗りの車が……。
自宅からチューブで30分、地上に出るとそこで筆者を待ち構えていたのはハロッズに向かう大勢の観光客、ではなく大勢の報道関係の人々と野次馬、そして手にプラカードを持ったアサンジ氏の支持者と警察だった。テレビ中継車も5台以上駆けつけていた。
路上では生放送が進行中。いつジュリアン・アサンジ氏が現れてもおかしくないという状況だった。
報道の背後では警察が周囲に目を光らせていた。それでもメディア勢の前には影も陰りがち。
正直、意外なほど警察の数は少なかった。事が起こると何かとすぐ集まってくるロンドンの警察だが、この現場ではどちらかと言えば静観に徹している様子。
こちらの動画を見ていただければ、その様子がより伝わると思う。
報道とメディアと支持者でごった返すエクアドル大使館前。小雨が降っているにもかかわらず、皆がエクアドル大使館のバルコニーの一点を見つめていた。
そしてこちらが、アサンジ氏が姿を現すであろう大使館のバルコニー。
閉め切られたカーテンの向こう側に、アサンジ氏が待機しているのだろうか。
そのバルコニー付近には、数名(5、6人)の支持者が報道の自由及びアサンジ氏の自由を訴えていた。
それを取り囲むように、パッと見インディペンデント系かフリーと見られる記者がインタビューをしつつ動画を抑えるという事を行っている。ヨーロッパ系の人々が多かったが、フランス語ドイツ語そしてスウェーデン語と思しき言語もチラホラ聞こえる。EU圏での注目度の高さを伺わせる。
大使館脇には、ジュリアン・アサンジ氏の現状とそれを取り巻く警察の動きなどを解説したパネル、そしてアメリカ陸軍の内部情報をウィキリークスを通じ告発、そして収監されたチェルシー・マニング氏(現在は女性)の開放を訴えるパネルが設置してある。
待てど待てど・・・
各局が固唾を呑んで大使館バルコニーを見守る中、刻一刻と過ぎていく時間。
英BBCによると、国連作業部会の報告は2012年よりこのエクアドル大使館に滞在しているアサンジ氏を、スウェーデン・イギリス両政府による”恣意的”な”拘束”下にあると発表。両政府は氏に補償をし、自由にすべきとの判決を出した。しかし、英国政府は国連の判断には法的拘束力はなく、レポートによって変わる事は「何もない」、と述べている。
いずれにせよ、ウィキリークスを取り巻く環境に大きな変化がもたらされる事に違いはない。もしかしたら、アサンジ氏は更に重要な発表をするかも……と勝手に想像を巡らす。
しかし!!
筆者にはそれを待つだけの時間がもう残されていなかった。いかにもロンドンという風の寒空の下、1時間ほど待機した小雨の降るナイツブリッジから、筆者は泣く泣く日本に撤退せざるを得なかったのだ……。
以前取材したデビッド・ボウイの追悼集会よりもはるかに多くの報道関係者が来ており、多くの中継車・カメラクルー・中にはPC片手に1人で生放送をしている人もいた。それだけ国内外含めた、ウィキリークスへの関心の大きさを感じた。今後、一層ウィキリークスへの関心は高まるのかもしれない。
残念ながら筆者が去ったあと、アサンジ氏は大使館のバルコニーに姿を表し、国連の勧告に対する感想を語った。
こちらはロシア系メディアのRTによるアサンジ氏の実際の動画。
※参考にしたBBCの記事はこちら
Julian Assange decision by UN panel ridiculous, says Hammond
http://www.bbc.com/news/uk-35504237
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