今年の初めに死去した、歴史的ロックスターのデヴィッド・ボウイが、「お気に入りのアルバム 25選」の中の1作品として選んだ“伝説の音痴のオペラ歌手”フローレンス・フォスター・ジェンキンスが、今にわかに注目されています。
この選出は、2003年に米国の雑誌ヴァニティ・フェアに発表したもので、他には、ジャズピアニストのチャールズ・ミンガスや、グラミー賞現代音楽最優秀作品賞の受賞暦のある作曲家の作品などが選出。そうそうたる作品の中で異色を放っているフローレンス・フォスター・ジェンキンスとは一体どのよう人物で、なぜ今注目されているのでしょうか。
THE GLORY (????) OF THE HUMAN VOICE(邦題:人間の声の栄光????)フローレンス・フォスター・ジェンキンス
この「????」は文字化けじゃないんですよ。シャレてる!
フローレンス・フォスター・ジェンキンスは、誰が聞いても音痴なのに、誰からも愛されたという、まさに“耳”を疑うソプラノ歌手。最初はあっけにとられた人々も、いつの間にか自由でおおらかな歌声に魅入られてしまったそう。1944年に76歳でカーネギー・ホールの舞台に立ったのち、この世を去ってしまいます。
「自由でおおらかな歌声に魅入られた」のはデヴィッド・ボウイだけではなく、没後、彼女を題材にし、様々な作品が作られました。ブロードウェイでは彼女をモデルにした舞台が上映され、日本でも三田佳子さんが主演の舞台「スーベニア~騒音の歌姫~」が2/19~3/6の間、シアターコクーンにて上演となります。
また、彼女の歌声を偶然ラジオで聞き「完全に音を外して歌いオペラ歌手の普通じゃない歌声」に魅せられて製作した映画『偉大なるマルグリット』も2月27日から公開。
この作品を撮ったフランス人監督グザヴィエ・ジャノリは、「歌声がとても面白くて、まるで“別世界”から聞こえてくるようだった」「彼女は社交界の人々の前で歌っていましたが、誰も彼女に音痴を言い出せなかったのです。彼らは、偽善者か、お金目当てか、臆病ものだったのです。面白い話ですが、人間性の残酷な一面も表しています。それはまさに私が研究したいと思っていたものでした」と語っています。映画『偉大なるマルグリット』は、伝記映画ではなく架空の物語ではあるものの、彼女の強烈なキャラクターに依るものが大きいに違いありません。
他にも、主演メリル・ストリープ、共演ヒュー・グラントでハリウッドでも映画が製作されており(日本国内での上映時期は未定)、彼女を題材にした作品が続く。
なぜ、フローレンス・フォスター・ジェンキンスに惹かれるのか。前出のジャノリ監督が作り上げた“マルグリット”というキャラクターについて「マルグリットは情熱に従って生きていて、人生とは切り離せない喜びと苦しみを経験します。彼女の歌声は完全に音が外れていますが、激しい願望を表現しています。残念ながら、情熱が優れた才能に変わることはなく、人生ではその2つがほとんど関係ないと気がつくことがよくあります。厳しい現実、裏切りや失敗、社会の偽善や残酷さ、大きくなっていく自信喪失の気持ちといったものから、自分自身を遠ざけるためには、ユーモアが必要です。マルグリットの歌う姿は、自分は自分、人は人、という開放感のある叫びのようなものです」と語ります。
実際に発売されたレコードを動画サイトで聞くことが出来ます。「音痴のレコードをください」というと買うことが出来たという彼女の歌声を、是非一度聞いてみて、その魅力を数々の映画や舞台で再認識してみてはいかがでしょうか?
デビッド・ボウイ「お気に入りのアルバム 25選」
http://scallemang.ca/bowie25albums/?utm_content=bufferce5b2&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=bufferFlorence Foster Jenkins – Queen of the Night by Mozart.
https://www.youtube.com/watch?v=V6ubiUIxbWE「偉大なるマルグリット」公式サイト
http://www.grandemarguerite.com/
2月27日(土)シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国ロードショー
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