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第88回アカデミー賞、最優秀作品賞の栄冠はどの作品に?

2016/01/31 13:30 投稿

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第88回アカデミー賞の最優秀作品賞レースは、おそらく2作間での受賞争いとなるだろう。2作のダークホースも見逃せない。

第88回アカデミー賞のノミネート一覧がついに発表された。最優秀作品賞部門は、常に、映画業界とメディアの両方からの注目すべき作品を代表する部門だ。アカデミー賞授賞式までまだ1か月近くあるが、2月28日(現地時間)に、どの作品がアカデミー賞作品賞を受賞するのか現実的に勝者を予想し、掘り下げて判断してみよう。

この話題は2016年1月19日の本紙ヴァラエティに最初に掲載されている。購読はこちら。

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は、当初、業界からあまり期待されていなかった。しかし、アメリカン・フィルム・インスティチュート(AFI)映画祭の公開より前に、米パラマウント・ピクチャーズは、10月の業界向け上映で同作を軌道に乗せた。同作は、脚本賞と編集賞、そして、最も受賞が期待される監督賞の部門でアカデミー賞選考委員たちに情熱的に好まれている。同作は、幅広い投票層に受け入れられるであろう優先投票システムで生き残ることができる映画でもある。考慮するに、同作は受賞のダークホースである。

『ブリッジ・オブ・スパイ』は、様々な賞レースで強者の風格を見せ、作品賞、美術賞、助演男優賞、脚本賞、録音賞、作曲賞にノミネートされている。しかし、複数の分野にまたがる人気はアカデミー賞レースの鍵であるにも関わらず、同作は、スティーヴン・スピルバーグの監督賞ノミネートを逃し、少しの弱さを見せた。

米フォックス・サーチライト・ピクチャーズは、『それでも夜は明ける』、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』と連続してアカデミー賞作品賞を受賞した。しかし今年、同社は、今シーズンにおける足場を見つけるのが遅かったかもしれない。『ブルックリン』は、移民体験の豊かな描写で支援者を増やしながら、1年前のサンダンス映画祭の公開から長々と最後まで生き残った。多くの票を獲得するのは間違いないが、終始変わらない控えめさによって多くの人々が興味を失ったままだ。

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、『レヴェナント:蘇えりし者』に続く2番手で、ノミネート合計が10部門となる。このような多数のノミネートを受け、作品賞受賞への先駆者的な作品でもある。しかしながら近年、多数のノミネートを受けた作品が受賞するかというと、そう決まったわけではなくいわゆる予測であることが証明された。ジョージ・ミラー監督がたくさんの熱狂的なファンを呼び集めた一方で、同作の魅力が大きな賞を手に入れるほど十分に幅広く広まるのは想像し難い。加えて、作品賞部門の偏見が潜在している。『ゼロ・グラビティ』がいい見本だ。

『オデッセイ』は、トロント映画祭で上映の後、もしかして受賞するかもしれない作品として賞レースに現れた。賞レースに参加するのに十分に面白い映画だ。しかし、多少の助けが必要な映画だろう。これまでも、可能性のある競争相手の多くが途中であきらめ、作品への多くの支援とともに、リドリー・スコット監督の映画を軌道に乗せてきた。『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のように、同作は、優先投票でうまく切り抜けることができる映画だろう。そうは言っても、スコット監督が監督賞部門のノミネートから外れたことは、今年度のノミネートで最大の難問の一つであり、もしかすると、そのせいで数人の投票者は真剣に投票しないかもしれない。

ゴールデン・グローブ賞の3部門を受賞し、驚異的な興行収入を上げている『レヴェナント:蘇えりし者』は、準備万端の状態で第2段階に入っている。合計で12部門という最多ノミネートを記録し、明らかに強力な走りを見せる準備を整えている。しかしながら、どの映画製作者も、2年連続して作品賞を受賞していない。アカデミー賞選考委員は本当にアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督を初の2年連続受賞の快挙とするのか、それとも、それが理由で別の映画に心移りをするだろうか?

『ルーム』にとって、シーズン最後の数週間は緊迫したように見え始めた。どの業界団体も、全米映画俳優組合(SAG)ほど同作を認知してはおらず、英国アカデミー賞(BAFTA)も同作には夢中にはならなかった。だが、アカデミー賞は夢中であり、同作のための場所を見つけた。作品賞のみならず監督賞だ。同作に対する情熱が強いという証拠だが、最終的に総意で受賞することができるだろうか?疑わしい。

最後に、『スポットライト 世紀のスクープ』は、多くの批評家アワードからは見放されたが、年が明けてからは好調だった。しかし、全米映画俳優組合(SAG)賞の受賞を逃したことで、状況はあやふやに見え始めた。同作は、英国アカデミー賞(BAFTA)の監督部門でトーマス・マッカーシー監督が物足りない結果に終わり、ゴールデン・グローブ賞でも受賞を逃した。全米監督協会(DGA)賞のノミネートは、同作へのただの活気づけであったが、今、マッカーシー監督は、アカデミー賞の監督賞にノミネートされ、多くの人が想定していなかった編集賞にもノミネートされた。同作は、たとえ勝ち目がないとしても、トップの座に上り詰める可能性を秘めている。

どの作品がアカデミー賞作品賞レースを制すのか?現時点では、『レヴェナント:蘇えりし者』と『スポットライト 世紀のスクープ』の2作品の争いのように感じる。『レヴェナント:蘇えりし者』は、明らかにゴールデン・グローブ賞受賞という後ろ盾があるが、『スポットライト 世紀のスクープ』は、その力を過小評価するべきではないことを私たちに思い起こさせ、賞レースに戻ってきた。

もし他の作品が、上記2作品の受賞を妨害する候補として潜んでいるならば、『マネー・ショート 華麗なる大逆転』だ。同作と、『スポットライト 世紀のスクープ』の両作品は、現実世界の出来事を詳細に述べ、その反響がまだ感じられる。賞レースの作品で、このような直接的な感覚を持つ作品はほとんどない。アダム・マッケイ監督(『マネー・ショート 華麗なる大逆転』)の不動産バブルコメディである同作は、衝撃的な経済危機の始まりを風刺と見せかけた驚くような物語、という形で現実世界を伝えている一方で、マッカーシー監督による謙虚なジャーナリズムドラマ『スポットライト 世紀のスクープ』は、蝕まれた業界に偉大なる大成功の一つを紹介することにより敬意を払っている。両作の根底にある意味合いは、組織化された権力を前にした教養のある民衆の重要性であり、少数独裁政治が注目されるであろう米大統領選挙の年に完全にふさわしい。

私たちは、『レヴェナント:蘇えりし者』で、レオナルド・ディカプリオがゴールデン・グローブ賞を世界中の先住民の人々へ献じていることや、ディカプリオの地球温暖化問題に対する考えがマスコミに美しく語られている、といった同作の宣伝キャンペーンにより、同作がさらに注目度を上げていることに気付いている。しかし記しているように、同作は、その他の部門を通じても確実に評価される大作であり、大いに価値がある。

『オデッセイ』は、事情通や同業者たちの間では高く評価されるであろう、ということも言っておかねばならない。しかし、スコット監督(『オデッセイ』)が監督賞ノミネートから脱落したことは良い前触れではない。同SF作は、賞関連において、4度のアカデミー賞ノミネートを果たし、受賞するのに機が熟したと言われるスコット監督に注目が集まっていた。公平のために言うと、進歩的なコミュニティの中での科学と問題解決の重要性について、同作は、自然でより哲学的な時代精神とつながりを持っている。

第88回アカデミー賞授賞式までの間には、多くの事が起こりうる。最終票の期限は、2月12日(現地時間)だ。物語は、どのように最終段階で変わっていくだろうか?

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